妖狐と少年
涼宮 真代
第1話 序章(すべてのはじまり)
町を一望できる展望台がある。
ここはある少年が好きだと言った場所。
そこに一人佇む女性の姿があった。遠くに祭り
〜 不思議な少年との出会い 〜
私はこの町の奥の森に住む妖狐、名は
だけど、この日だけは違ったという。
人の生活そのものに興味ははあったが特にお祭りというものに興味深かった。
遠くに祭り
「母様、ねぇ、かあ様ったら〜。」
すると少々呆れ顔で母様は
「はい、はい…なんですか?」
私はすかさず
「お祭り行きたい!」
「ダメです!」
即答だった…。
ダメだと言われるのはわかっていた。
以前に満月の夜に人里に降り危険な目にあっていたから。
満月の夜は月の光が私たちあやかし者の姿を映し出すと言われていた。
私にはその時のはっきりとした記憶はない。
ぼんやりと覚えている程度でした。
「どうしてもダメ?」
何度もお願いしてみました。
「あなたを二度と危険な目に合わせる訳にはいきません!
ましてや、一人でなんて…。
亡くなったあの人に申し訳が立ちません…。」
母様は悲しげな顔をした。
これは諦めるしかないと思ったその時…。
「一人じゃなければ良いにゃ?」
幼馴染の
胡桃は私と同じで好奇心旺盛でした。
「私たちが一緒にいくよ。」
警戒心が強い、こむぎも着いて来てくれるという。
「おまえたちが着いて行くと言うなら…仕方ないね…行っておいで…。」
渋々承諾してくれた。
「ただし、決して人間に迷惑をかけてはイケませんよ?それと…。」
「はーい!」
3人は話し半ばで行ってしまった。
「あ!ちょっとお待ち…まったく大丈夫かねぇ…。」
「大丈夫だろ?」
母様の親友の小雪さんが言った。
胡桃たちの母親で夜白の父が亡くなってからずっと母様を支えている。
「あの子たちはああ見えてしっかりしてるから信用してやりなよ…。」
「そうね…。」
母様の心配をよそに神社へと森の中を駆けていった。
すると木々の隙間から町の灯りが見えてきた…。
森のを抜けるとそこは別世界のようだった。
いくつもの提灯、屋台の灯りが辺りを照らし沢山の人を明るく照らしていた。
お祭りというものは皆を楽しませる。
私もその中の一人だった。
「凄いね!これがお祭りって言うものなんだね!」
ふと気づくと夜白は二人と
「あれ?胡桃ちゃん?こむぎちゃん…どこ?」
気配を探るも人が多く見つけられなかった。
今日は新月…。
新月の夜は私たちの妖力も抑えられるようです。
はずだった…。
「もぉ~みんなどこに行ったの〜!!」
「あれ?キミどうしたの?もしかして迷子?」
突然声をかけられた。
振り向くと一人の少年が笑顔で立っていた。
(私の事が見えるの?)
心の純粋な子供には見えたりすることもあるという…。
それに今の夜白は
少年の存在は嬉しかった。
「迷子じゃないもん…!」
夜白は少し照れた様に言った。
「そっか、ごめんごめんボクは
不思議な
「
「
夜白という名は亡き父が「暗い夜を白く照らす月灯りの様に」と付けてくれた名だと母様から聞いていた。
「ありがとう。」
しばらくの間、私は
「
思わず聞いてしまった。
「どうして?キミからは怖さなんか感じないよ。」
そう言うと
妖狐の私を怖がるどころか普通の女の子の様に接してくれる。
人間は悪い人ばかりじゃないと思わせてくれる。
「あ〜夜白ちゃんここにいたにゃ!」
胡桃、こむぎが戻ってきた。
たくさんの食べ物を抱えて…。
「もぉ~ここにいたにゃじゃないよ!どこに行ってたの!」
胡桃たちが戻ったのを見届けた颯太は「お友達が来たようだねボクは行くね。」
「え!?」
振り向くと
「誰といたにゃ?」
「え?だれって…。」
何故か顔を赤らめてしまった。
「夜白ちゃん照れてる。」「照れてるにゃ〜!」
囃し立てる二人に恥ずかしくなり…。
「知らない!帰るよ!」
足早にその場をあとにした。
人の優しさに初めて触れた夜白は颯太の事が気になり始めていた。
その頃妖狐の里では…。
母様が私たちを心配してオロオロしていたという。
母様は父様が居なくなってから里を統めるリーダーだった。
「ただいま。」
私が帰ると母様は駆け寄り抱きしめてくれた。
とても温かかった。
「楽しかったかい?」
「うん!とっても楽しかったよ。」
「そうかい良かったね。」
母様には
怒られるよりも心配させたくなかったからかも知れません。
翌日もまた翌日も私はこっそりと颯太さんに会いに行っていた。
その事に気がついていたのは胡桃とその姉のつむぎだった。つむぎは他の二人と違った冷たい雰囲気をしていた。
ある日、また颯太さんに会いに行こうとしたとき胡桃が現われた。
「夜白ちゃんどこにいくにゃ?」
「え?ど、どこにもいかないよ?」
「颯太さんに会いにいくにゃね?」
「……。」
「夜白ちゃん落ち着いて聞くにゃよ?あの人は人間じゃないにゃ。」
「え?」
何を言っているのか理解できなかった。
「颯太さんは人間だよ?」
「夜白ちゃん何でわからないにゃ…匂いが違うにゃ…。」
私は胡桃の静止を振り切って颯太さんのところに向かっていた。
そんなはずは無い颯太さんは人のはずだ…。
いつもの様に神社を境内に行くと颯太さんは居た。「颯太さん」と声をかけようとしたが見知らぬ巫女がいました。二人は何やら話していた。
私は隠れ二人の話に耳を傾けました。
「颯太さん、残された時間はもうありませんよ?」
「わかっていますよ…でもボクはまだ見つけてないんだ。」
探しものをしてる?
何を探してるんだろう。
「あなたの魂はもう…。」
ガザ…。
「……!!」
「誰です?出てきなさい。」
巫女さまがこちらを見た。
夜白は姿を見せた。
「あの…ごめんなさい。」
「今の話し聞いてたのですね…。」
「はい…。」
颯太が気まずそうな顔をしている。
夜白には聞かれたくなかった話しだったからです。
巫女は颯太に言いました。
「颯太さん?この子にはちゃんと話してあげたら?大切な人なんでしょ?」
颯太は少し顔を赤らめた。
「からかわないでください。」
夜白は颯太に何かを探しているのか尋ねました。
もしかしたらチカラになれるかも知れないと…。
颯太はしばらく黙っていたが夜白に打ち明けた。
「ボクは…もう死んでいるんだ…。」
「え?」
「でも確かめたい事があって神様に少し時間をもらったんだ。」
颯太の姿が見えるのは妖狐である夜白なら当たりまえの事でした。
胡桃の言っていた事は本当だったんだ…。
「幽霊だから私のことも見えていたんだね。」
「颯太さんは何を探しているの?」
「ボクはあの日キツネを助けられたのか助けられなかったのか知りたいだけなんだ。」
(キツネ…?)
颯太が言うあの日とは今から10年前に遡る。
いつもの様に帰宅して遊びに出かけた時におきた…。
車通りの多い道だったそこを通らないと公園には行けなかった。その日も車が多く途切れるのを待っていた。
そこに一匹の銀色の子狐が現われた。颯太と目があった「こっちに来るな!」そう思った時、子狐は道路に出てきた。たかがキツネだが大事な生命を放って置くことができなかった颯太は「危ない!」キツネを庇い《かば》撥ね《は》られてしまった。その事故で生命を落としていた。
夜白の涙が頬をつたった。
「夜白ちゃん大丈夫?」
颯太が優しく声を掛けた…。
「颯太さん、ごめんなさい…ごめんなさい!!」
そう言って夜白はその場から逃げだした。
まさか夜白ちゃんは…?
颯太には行き先は見当がついていた。
夜白はいた。
突然泣き崩れ謝る夜白に颯太は…。
ボクもこの場所が大好きだったんだ町を見てると悩んでることが
小さい事に気がついて頑張れた。
あのキツネはキミだったんだね
「うん、そのキツネは私だったの!ごめんなさい!」
それを聞いて颯太は優しく微笑んだ。
「そうだったんだ夜白ちゃんがボクが探していたキツネだったんだね。
良かった可愛い女の子になってたんだね。」
「ボクは助けられたんだね本当に良かった。」
「ごめんなさい颯太さん私はあなたを…!」
そう自分を責める夜白に颯太は…。
「違うよ。ボクはキミを助けられて満足してるんだよ?
そしてその子が目の前にいる。後悔はしてない寧ろ幸せだよ?」
「こんな事いま言うのは違うけど夜白ちゃんボクはキミが好きだよ
出会えて良かった。」
颯太さん…。
「私も颯太さんが好き!好きだから毎日会いに来てた。」
颯太はニッコリと笑うと辺りが白くなった。
「もう時間みたいだ…夜白ちゃん元気でね…約束するよ
生まれ変われたら必ずキミをみつけてみせる!」
「颯太さん行かないで!」
颯太は優しく微笑んで
消えた…。
夜白は泣き続けた。
そして時は流れていく…。
あれから50年後…。
夜白は今でも颯太を思っている。
颯太が最後に言った言葉「必ずキミを見つける!」
私もあなたを…。
あなたの居たこの町で待ってます。
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