第22話 海⑤
俺と水瀬さんが少し談笑をしているとみんなのいるところに着いた。
「やっと来た!俺腹減った」
「はいはい、今配るからちょっと待ってろ」
俺はシートの上に持ってきた品を置いていく。
すると水瀬さんが『ねぇねぇ玉』と少し弾んだような声が聞こえたが気にせず手を動かす。
「私ね江崎くんと友達になったよ」
「「え!?」」
急な水瀬さんのカミングアウトに黒髪ショートの女子だけではなく隣にいた男子と二人の驚く声が聞こえた。
さすがに俺も気になってそちらに目を向ける。
「しかもはなの言う通り良い人だし」
そういうとその二人はこちらをじーっとこちらを見る。
多分未だに俺が良い人だとは信じられないのだろう。
「ん?どったどった?」
すると修哉が不思議そうに三人のとこに向かった。
「あ、いや、その江崎くんが…」
男子が修哉に何か言っている。
そして聞き終わった修哉はほうほうと理解した様子になった。
「つまり智が本当はどんな人か分かんなくて困惑してると」
修哉は簡潔にまとめるように言うと、何やら考えだし答えが出たのか再び口を開く。
「よしなら俺が智の昔話をしてやろう。良いか智?」
「は?」
何を言い出すかと思えば俺の昔話を話そうとしている。
多分それで俺がどんなやつか教えようとしてるのだろう。
まぁ別に昔話と言ってもせいぜい一年とかそのぐらいだろうし断る理由もない。
「まぁ別に良いが」
「よし、本人の許可も得たし飯食いながらにするか」
そういって六人全員が向かい合うような形で食事と昔話が始まった。
―― ―― ――
「…んでそこで智がな警察に間違えられて」
「それは最悪だったね…」
「大変でしたね江崎さん…」
俺はみんなに顔を見られないように両手で隠す。
俺は修哉を舐めていた。
話し込んでからすでに二十分ほど、俺の予想ではこれの半分以下で終わるはずだった。
しかし修哉は俺のアルバムかのように次々にと俺の過去とたまに黒歴史を掘り出しては話す。
「んで次は何にしようかな…」
「まだあんの!?やめてお願い!」
そんな修哉の勢いが落ちず、まだ話そうとするので俺は必死に止めにかかる。
「えー、まだ中二とかの話だぜ?まだ少ないだろ」
「これ以上続けたら俺の心がへし折れるわ!」
「……仕方ねぇな」
修哉はまだ話し足りないようで少し不満げだが了承してくれた。
さすがにこれ以上やられたら俺が精神的に死ぬ。
「んで、ここまで話して分かった結論は?」
「「江崎くんは普通な男子高校生」」
「そゆこと」
でも結局はこうやって場を和ませられることが修哉のすごいとこで恐ろしいところだ。
「ごめんよ。江崎くんを勘違いしてた」
「いや謝んなくていいよ。でもちゃんと知ってもらえて良かったよ」
すると男子が俺の方を向いて謝ってきた。
でも俺的には別に謝ってもらうほどのことでもなく、逆に俺のことをちゃんと知ってもらえたことだけで俺は十分だった。
なので俺は男子の謝罪を軽く流す。
「いや謝んなくていいよ。でもちゃんと知ってもらえて良かったよ」
「良かったな智」
「あぁ」
「せっかく色々知ったんなら友達にでもなれば?」
しかしここで終わらないのが修哉。
おいおい、俺はもう友達が一人増えて、二人にちゃんと俺のことを知ってもらえただけで腹一杯なのにそんな都合よくいくわけないだろ。
「お、いいね」
「なろなろ」
いっちゃったよ。都合よくいったよ。
え、嘘だろ。ここでなんかカメラとか出るの?花守さんが『ドッキリ!!』とか書いてる看板持ったりするの?
俺は驚きのあまり周りを確認してしまう。
しかし、カメラや看板などはくるはずもなかった。
「え、本当にいいの?」
「うん。僕ももう少し江崎くんと仲良くなりたくなったし」
「私も右に同じく!」
聞き返してみたが返ってきたのは無理してな感じではなく、なんと逆にお誘いのような感じの言葉が返ってきた。
「あ、じゃ、よろしくお願いします」
友達になることは俺にとっては喜び以上のものであり、迷うことなくお願いする。
「こちらこそよろしく。…そういえば名前言ってなかったね。僕は
「私は
俺は新しく坂上さんと玉井さんと友達になった。
さっき水瀬さんと友達になったばかりなのにこんな短時間でさらに二人もできるって、……俺今日死ぬのかな…。
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