第15話 ディメンションハット 後編

「はあ……極楽極楽……」



 ある日、居間に置かれた炬燵こたつに入りながら綱引きが気持ち良さそうな表情を浮かべていると、居間に入ってきた創り手は小さくため息をついた。



「……はあ、炬燵の中が落ち着くのはわかるけど、そのまま入り続けてると、いつかこたつむりになっちゃうわよ?」

「あー……それも良いですねぇ。このまま極楽気分でいられるなら、それも悪くないですからぁ……」

「まったく……いつもは色々なところに精力的に足を運ぶのに、炬燵に入った途端こうなるんだものね。まあ、今日はもうお店は閉めているから問題ないし、私も炬燵に入ってのんびりしようかしら」

「それが良いですよ、御師匠様。あ、テレビ点けますね」

「ええ、お願い」



 繋ぎ手は炬燵の天板の上に置かれているリモコンに手を伸ばすと、電源のボタンをゆっくり押した。そして、テレビの画面に一人の女性が映ると、その姿に繋ぎ手は驚いた様子を見せる。



「あ……このお姉さん、この前ディメンションハットを買ってくれた人だ」

「ああ、私が留守にしてた時に来たっていうマジシャンの人ね。どうやらこの人は、今では大人気のマジシャンになったみたいよ」

「そうみたいですね。あ、ディメンションハットもしっかり持ってくれてる。あの子から楽しい生活を送れているっていうメッセージは来てましたけど、大切にしてもらってるのをこうして自分の目で見られるとなんだか安心しますね」

「そうね」



 二人がテレビの映像に目を向ける中、真歩はディメンションハットを使ったマジックやカードを使ったマジックなどを次々に披露し、観客からの拍手喝采を気持ち良さそうに浴びていた。


 そして、マジックを披露し終わった後に司会の男性から様々な事を訊かれ、その中で繋ぎ手への感謝を述べると、それを聞いた繋ぎ手は少し照れ臭そうに笑みを溢した。



「えへへ……私はただあの子との橋渡しをしただけなのに……」

「それでもあの人にとっては最高の出会いだったし、今みたいに色々な人に自分のマジックを楽しんでもらえるようになったわけだから感謝もしたくなるわよね」

「そうですか……」

「それに、貴女はその能力でこれまでも色々な人の人生を変えてきた。もちろん、良い事ばかりじゃなかったけれど、あの人みたいに喜んでくれる人もいるわけだから、これからも頑張らないとね」

「ふふっ、そうですね」



 繋ぎ手が嬉しそうな笑みを浮かべながら答えた後、二人は道具や日々の生活の話をしながら穏やかな一時を過ごした。

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