無題

高校生

小学生時代の頃、好きだった人がいた。

最初は単純に「なんだこいつ」という感覚でそいつのことをそいつの前でいじっていた。そうしたらあいつも僕のことをいじってくる。

学校で毎日いじったりいじりあったりする関係が2年ぐらい続いた。

「今日は何でいじってやろう」

毎日朝起きる度にそんなことを思っていた。


僕は彼女のことを好きになっていた。どこからか分からない。気がついたら彼女のことばかり考えていた。


僕が中学校に上がった時に彼女の姿はどこにもなかった。引越しをしたらしい。後で彼女の友達に聞いたらそう言われた。

「俺にも言えよ」という感情が先に出た。その後に「告白出来なかったじゃないか」と感じて無性に自分に腹が立った。

彼女のことを思い出す度辛くなって、僕は彼女の事を忘れようとした。

中学校でまた好きな人を作ればいい。そうしたらきっと忘れる。そう思った。


一種の使命感から僕は好きな人を作った。そんな使命感から生まれる恋心なんて、ヤリたい以外の何物でもないのに。

そして中学校を卒業した後にその人と付き合えた。

その時は素直に嬉しかった。正直、彼女のことを忘れるほどには。

だけど僕がその子の事を大切にしていたかと言われたら、自信を持って「はい」と言える気がしない。

僕は多分、彼女のことを道具としか見ていなかった。

友達よりも自分の方が上にいるという優越感や自尊心を保つために付き合わせていた。

それに、彼女と何処に遊びにいっても昔のあいつの顔がチラついた。

「昔は好きだったなぁw」で済ませられるようなメンタルを僕は持ち合わせていなかった。

それは彼女も薄々気づいていたんだと思う。

数ヶ月したらすぐに振られた。

その時の僕は自分のこの気持ちをずっと無視していた。振られたのはきっと馬が合わなかっただけだろう、と。自分に非があることに気づいているのに、それを受け止めなかった。いや、受け止める勇気が無かった。


高校に入ってからはもう好きな人を作る気力さえ無かった。

可愛い人がいても、好きという感情にはならなくて、ただただヤリたいとしか思わなくなっていた。


性欲と好意は紙一重だと言う人も居るが、それは違うと最近気がついた。

結局の所、性欲だけで付き合ったらいつかボロが出る。

性欲と一緒に付いてくるのは好意ではなく、ただの承認欲求だ。

自分が満たされるだけで独りよがりな、虚空の愛しか生み出さない。

好意の先にあるものが、愛なんだと思う。


きっと僕はもう異性を本当の意味で好きになることは無いだろう。

人生でたった一人、僕が手放しに好きと言えるとしたら、それはきっとあいつだけだ。

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無題 高校生 @rio_retasu

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