マスカットシャンデリア

@kitanokaneuo

マスカットシャンデリア

「金魚さん、今度は凄い物、馬鹿売れの物作りましたよ」

とビニールハウスのおじさんが言ってきたので見に行きました。

「今度のは凄いですよ」とおじさんも自信満々です。

おじさんの家に行くとビニールハウスに案内されました。

カーテンを閉めて暗くすると、ビニールハウスがぼんやり明るいのです。

ハウス一杯にぶら下がっている葡萄が光っているのです。

「どうだ、光る葡萄。マスカットシャンデリアだよ」と言うのです。

「凄い、これは凄い。電気で光のですか」

「まさか、電気なんか使わないよ。水やるだけで、光るんだから」

「じゃ、山の中でも大丈夫なんだ。凄いね」

「これを植えておけば、山の中でも道に迷わないぞ」と言うのです。

「ちなみに色は」と聞いたのです。

「そうくると思って、色の品種改良もしたよ。赤いデラウエア、緑のマスカット、そして新たに作ったブルービートで光の三原色も改良済み」

「自然光での案内表示も可能なんだ」

「そうだよ、これ使えば道路標識も光るんだから、用途無限だよ」と自信満々です。

「これだと、何の問題も無いね」

「いや、実は悪い虫が付くのを止められなくて、これがちょっとね」

「害虫なんて、農薬で大丈夫でしょう」

「農薬では殺せないんだよ、この虫は。この虫をなんとかできないとすぐ食べられちゃって無くなっちゃうのだよ」と言うのです。

マスカットを食べる虫って何だろうと考えていると、オヤジさんの娘さんが入ってきました。

「あら、金魚のおじさんもいたの」と言って、光っていたマスカットを一房もぎ取りました。

「お父さんの作った物にしては、意外と美味しいの。金魚のおじさんも食べる」と言ってハウスから出て行ってしまいました。

「この虫には、農薬は使えないね」とおじさんに言うしかありません。

おじさんの葡萄は美味しいのです。

ちなみに、不味い葡萄の作り方は知らないそうです。

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