【短歌集】泥棒猫
元カノがカチ込んで来た 仲間連れ
身に覚えのない「この泥棒猫 」
この時点で“元”カノではなかったらしいです。これは何も知らない同じ課の方から後になって聞いた話でした。その年最後の議会が終わって次年度の準備が始まる頃。
彼女の奇行は結構有名で、キリギリスさんの彼女という情報とセットになっているくらいだったので私の耳にも入ってきたことがあります。
「あれキリギリスさんの彼女だよ」と誰かに囁かれたことがあったので「あー、このお方が」と印象には残っていました。すごく美人だったし。ただ表情や服装から漂う地雷臭が凄まじい。
用事があって来たのだという演出の為か小道具を用意してくれたみたいでクリップボードを抱えていました。総務課の執務室の前で席次表を指さしながら見ている元カノ。
議案書の一斉配布の時でもない限り彼女の部署との接点はほぼ無い。せいぜい公用車を貸して欲しいと言うならば電話で済む話。向こうから書類が運ばれてくるいう現象は起こり得ない。
そしてこのタイミング。
今朝キリギリスさんから「元カノにバレた」「そっちに行くと思うから対応を間違えないように」というような連絡が入り「うわあ、あたし関係ねえ~」と思ったばかり。守る云々は今回は言ってませんでした。それも不思議ですが、元カノにバレるってそこまで怯えることなのでしょうか。と思う反面、
お足元の悪く寒い中わざわざ別の庁舎から赴いてくださった模様。ヒール履いて。席次表を指さして。確かに怖いかもしれない。この人が同じ家の中にいたら怖い。
・・・あのクリップボードって小道具じゃなくて武器なのでは?
「・・・え、殴られる?」と思いました。
嫌だなあ、側面で叩かれたらタンコブできちゃう。とにかく
「うっかり殴り返さないようにしなくちゃ」とだけ咄嗟に自分に言い聞かせた。私は力が強いから。
執務室内にいた方たちは「あ、茅花刺される!」と思ったそうです。私が気付いていなかっただけでキリギリスさんの様子を周囲の方は察していたらしい。
「どうしました?」
「受け取りますか?」 と、
気付いたら彼女から私を遮るように間に立ちはだかってくれていたイケメン上司二人は何年経ってもリスペクトして止みません。というか本気で刺されると思われているではないか。
その隙間から私と目が合うとあからさまに彼女は顔を
元カノさんはその後お仲間を率いて何度かやって来ました。お連れの方に泥棒猫のご紹介をされる程度で、物理的に危害を受けるようなことは最後までありませんでした。なんか気になってふと顔を上げるとガン見されてたなんてことも何回かはありましたが。
キリギリスさんにおかれましては、マウント取りたくて自分から話しちゃったのか仄めかしたかったのかバレた詳細は不明ですが、「今は慎重に説明しなければならないから連絡は控える」というダイイングメッセージみたいなものを残して二週間くらい音信不通に。
余談ですが、上司が受け取ってくれたクリップボードには何も挟まれていませんでした。もうずっと昔に別の部署と統合されて名前を失っている課の所有物だったと判るテプラが貼ってありました。
「久しぶりに見たわー」とクリップボードで頭を叩かれたのは側面ではないのでセーフ。
ただしイケメン上司に限る。
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