生意気で天才な後輩女子に毎日バカにされていたので、架空の彼女をでっちあげ自慢したら病んでいった。そんなある日、架空の彼女の設定そのままの美少女が現れて...。

田中又雄

第1話 生意気で天才な後輩女子:鷺ノ宮瀬奈

「シュート!」と、チームメイトが俺に叫ぶ。


 そして、汚い放物線を描く俺のシュート。


 中学3年の最後...俺のシュートはリングに掠ることもなく無事に終了した。


 その後に鳴ったブザーは人生で1番長く感じた。


 ◇2024年9月1日 AM5:00


 ジリリリリリリ!!


「...夢でくらい決めさせてくれよ」


 そんなことを愚痴りながらアラームを止めて、カーテンを開ける。

目を窄ませながら無理やり体に喝を入れる。


 そのまま、キッチンに向かうと自分と母親の分の弁当を作る。

料理を作り終えると軽くシャワーを浴びて、AM6:15に家を出る。


 俺の名前は鹿沢しかざわ 祐樹ゆうき。私立山の川高校の2年である。


 小学生の頃からバスケットをやっているが、実力は下の下いくら努力しても全くうまくはなることはなくどこに行っても補欠止まりだった。

けど、それでもバスケは好きだ。だから今でもこうして続けている。


 最近は居残り練習やってるとが現れるから、朝早くにきて練習することにしていた。


 チャリを爆走して、いつもより早く学校に到着する。

チャリを駐輪場に停めて、駆け足で第2体育館に向かう。


 先生から渡されているカギを使ってガラガラと重めの扉を開くと、気持ちの良い空気が全身を包む。


「よろしくお願いします!」と、誰もいない体育館に挨拶をして早速朝練を始める。


 今日はどうしようかな。

ドリブル練習して、後は3P...かな。

昨日、YouTubeで見たNBAの人のシュートフォームでも真似してみようかな?


 そうして、倉庫からバスケットボールを取り出していると、ガラガラと扉が開くとそこにはが立っていた。


「あっれぇ〜?誰かと思ったら鹿沢しかざわ先輩じゃないですかー!w最近居残り練してないと思ったら朝練してたんですかー?w」


 なんでこいつがいる...。


「なんで私がここにって顔してますねwいや、女バスもこれから朝練なんですよ。んで、私の友達がさっき第二体育館に小さい人が入って行ったっていうのを聞いて見にきたんですよーwやっぱ先輩だったんですねw」


「...」


 あいつ...とはこの鷺ノさぎのみや 瀬奈せなのことである。


 バスケをやっている人間なら、誰もが知っている有名な兄妹の...妹の方。


 中学時代には全国三連覇を果たし、U15の日本代表にも選ばれ世界的にもそこそこ名前を知られている天才少女。


 身長は男子の俺よりも少し高く、171cm。

1年の女子にしては大きい方かもだが、極端に背が高いわけではない。


 しかし、ドリブル、シュート、パス、広い視野とその全てが超一流でありながら、その上見た目も抜群に良く、更にコート上では常に無表情で冷酷無慈悲に相手を圧倒するそのプレースタイルも人気に拍車をかけていた。


 そんな超天才が今年の春にこの女子バスケの名門として知られる私立山の川高校に入学してきた。


 そして、今年行われたインターハイで無事優勝を果たし、1年ながら【ベストメンバー5】にも選出された、


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093078344337849


 ここまではwikiにでも載っている情報であろう。問題はここからである。


 彼女を無視してシュート練を始める。

確かこんなふうに打ってたよな。と、見様見真似でNBA選手の真似をしながらシュートを放つ。


「...っぷwwwあははははwwwなんすかwww今のwwwキモいwww」と、腹を抱えて爆笑している鷺ノ宮。


「...無視だ無視」と、それからも何本かシュートを打つが一本も入ることはなかった。


 すると、爆笑しながら俺の横に立ち、俺のボールを横取りすると何とも流麗で可憐な動きでシュートを放つ。


 すると、ボールは綺麗な放物線を描きながらリングに触れることもなく、ゴールに入り「ふぁさっ」という気持ちいい音を立てながら地面に落ちる。


「3Pってこうやって打つんですよ?」


「...知ってる」


「ぷふふww知ってるのとやれるのは別ですもんねwwほら、さっきの芋虫シュート見せてくださいよ!w先輩の〜ちょっとかっこいいとか見てみたい〜www」と、少し前の合コンのようなコールを始める。


 こいつ絶対いい死に方しない。てか、すんなや。


 そうして、一生懸命シュートを打つ俺を笑いながら「こうですってwなんでそんなぐにゃんってなるんですかwあと、いくら童貞とはいえ私がシュート打つたび、脇をガン見するのやめてくれます?wwさすがにキモすぎるんでw」


 その後もずっとバカにしながら俺の周りをうろちょろする生意気天才後輩少女。

すると、携帯を見て「あ、そろそろ朝練なんで行きますねw冬はレギュラーとれるといいですねw」と、笑いながら去っていく。


「...思ってもないくせに」


 この私立山の川高校は女バスは超強豪校だが、男バスは超弱小校だった。

しかし、そんな弱小校ですら俺は補欠だった。

3年生が卒業してもしかしたらなんて期待していたら、今年入ってきた1年生はうまい子が多く、今年もレギュラーは難しいだろうことはなんとなくわかっていた。


 思わず泣きそうになったので、バスケットボールを強く握りしめてそれを我慢する。


「父さん...俺頑張るから」

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