第37話 星の輝きよ

 「ご覧になりまして?改めてもう一年、つとめを果たしますわ。他の

候補者の方々も励んでおられましたので、今年はどうなるかと…。」

あのような話を聞いた後だ。嘘か真かあやふやな感じで真意は分からない。

「…本当に全て会長のお力の賜物たまものなんですか?」

それでも私は聞くしかなかった。例えはぐらかされるにしても。

 しかし、会長は私の目を平然と見据えてしっかりと答えた。

「あら。何処かでお伺いしましたの?私が買収をしているということを。」

悪びれる様子は全く無い。その行為が無法であることを知ってか知らずか。

「やっぱりそういう…!仮にも名家のあなたが、そんな汚い手を使って

良いとでも思ってるんですか!不正行為で票を得て満足ですか!?」

「汚い手、なるほど。ではこの汚い手を、今日こんにち存在している大企業や官僚の

方々が使っているとしても、貴女は同じ事が言えるのでしょうか?何度も

申しておりますが、私は桐生院家という大企業をいとなむ一族の息女。父からは、

買収や妨害工作が無くては、成立し得なかったプロジェクトは数々あると

聞き及んでおりますの。時間は有限。青春時代を謳歌おうかするならば、この

短い時間を有意義なものとするためにあらゆる手を使うのは、自然なこと

ではなくって?それに、ここで皆様も前もって体験しておけば、後々あるかも

しれない、または携わるかもしれないこの行いに対処出来るでしょう?」

 この人には、それが良いか悪いかなんて関係無い。ただ、その場面で

使える手かどうか。それだけなんだ。これが、今を照らす星の輝き。

人の目を焼こうが、絶えず在り続けて人を導く光。私にはその光が

ちょっとおぞましく見えた。丁度、西陽にしびは桐生院覇那の背を照らしている。

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