第29話 SIDE 神川 〜幼馴染として〜
隣の教室の扉が閉められる音が聞こえた。あの問題アリな一年との
話が終わった様子。すぐさま戻ってきた覇那ちゃんの顔は、真顔だった。
私だけが知っているこの顔。中学時代のある日を境に、『貴女は特別』と
素を
分からないが、私の肩に寄り添って小休憩している姿を見ると、決して
悪い意味では無いということは少なくとも認識できる。
「綾奈。今日は空いてる?」
耳元で
チラッと見てから答えようとする前に、また耳元がぞわっとする。
「今日は伊予とのデートの日では無いはずよ。それくらいは知ってる。
何?まだあの娘との関係、続ける気?私がいるのに。」
「違っ…。生徒会にいる以上、抜けられたら困るでしょ?私らも
覇那ちゃんに選ばれたからには、しっかりやり通したいから。」
この時は『覇那ちゃん』呼びも許してくれるし、聞き分けが良かったりする。
「ふうん。ビジネスライクの関係、なんて知ったらどうなるやら。」
「だから、私も付き合ってあげてんじゃん。こんなとこ、伊予には
とても見せられないからね?今日はちゃんと帰したから。」
「ええ、整頓されてる。あの娘、仕事はきっちりとやってくれるもの。
中身まではどうでもいいわ。まさか、幼馴染を取られるとは思わなかったけど。」
「あんな優秀なのいないからね!?連れてくるのもやっとだったし…。」
「ええ、ええ。分かってるわ。全部生徒会のためよ。我慢してる。
でももし、その関係が重いようなら、切り捨てるから。遠慮なく。」
桐生院覇那は、自身の障害になると思えば、迷わず犠牲にする。
その犠牲に、私が選ばれないことを今でも信じている。
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