NTRリアリティショー『現場は異常です』

神楽耶 夏輝

プロローグ

第1話 リナとの出会い

 僕がリナ(仮名)と出会ったのは、2年ぐらい前です。

 2022年5月頃。


 僕の本業は、美容業だったんですが、コロナの影響で経営していたサロンが立ち行かなくなり、実業家の父の後押しもあり、会社を立ち上げ、現在は福岡で婚活事業を生業としています。


 それが、僕の本業です。


 いつかは作家業を生業としたい、という夢を掲げて4年余り、ここカクヨムを拠店に活動しているワナビーです。


 ちょうど2年ほど前、執筆に行き詰った時期があり、ネタ探しで登録したツイッター(現X)で、リナと名乗る女性と知り合いました。

 最初は、匿名アカウント同士。

 ダイレクトメッセージのやり取りだったのですが。

 それが現在、とんでもない事になっているので、ここに記します。


 始まりは、【リナ】と名乗る女性からの、ダイレクトメッセージでした。


『神楽耶さま

 初めまして。リナと申します。

 NTRネタ募集というツイートを見かけてDMしました。

 突然のコンタクト、大変失礼致します。

 かなりリアルなネタをご提供できるかと思うのですが、いかがですか?(原文まま)』


 怪しいと思いますよね?

 はい。僕もかなり怪しいなと感じました。


 アイコンはデフォルトで飾り気のない物でした。

 かと言って、新しく作ったという事もなく2017年12月からツイッター利用を開始しているアカウントでした。


 プロフィールにアクセスすると、紹介文もツイートもなく、フォローはスタバが一つだけ。フォロワーはゼロ。

 交流さえしていない、いわゆる裏垢、またはロム垢かな、と言った印象でした。


 当時の僕は、現代ドラマ。主に恋愛小説を書いていたのですが、そんな物で本気で書籍化できると思っていたんですね。

 最新話のPVは0ではないにしろ、作家間交流をしなければ2桁超えない程度。

 人気ジャンルなんて書けないし。


 ちょうどその頃、一ジャンルとして確立されつつあったNTRネタは、喉から手が出るほど欲しかったんですね。

 自分の経験だけでは、とても描けるジャンルではないと思っていたので。

 二番煎じや、ありきたりな物は書きたくないという矜持もありましたし、テンプレ通りに書くなんて手法も、考えも持ち合わせていませんでした。


 とにかくリアルな経験談が欲しかった。


 暫く、そのリナ垢を観察しつつ、色々と考えあぐねた末——。

 多分1時間ぐらいは考えたと思います。

 返信しました。


『リナ様

 コンタクト嬉しいです。ありがとうございます。

 是非、よろしくお願いします』


 この時はもう、ワクワクですよ。

 どんなネタがやってくるんだろうって。


 けどですね。

 彼女からの返信は意外な物でした。


『一度、お会いしませんか?』


 え? これってもしかして、不倫しましょうとか、私を寝取って、とかそんな話? って、ちょっとドキドキしたんですけども。


 僕は一応、リアルとウェブはきっちり分けたい方なので、こういう形で会うのはちょっとイヤかな。

 しかも最愛の妻もいましたし。

 それに、住まいは東京でもなく、福岡なので。

 リナがどこ住みなのかはしりませんが、福岡の確率は限りなく低いわけですよ。


 正直、ちょっと厳しいなって思いました。


『申し訳ありません。直接お会いする事はできないのですが、チャットではダメでしょうか?』


 と返信しました。


 すると、こんな返信が届いたんです。


『申し遅れました。

 私は、フリーの探偵をやっておりまして浮気調査が専門です。

 詳しいお話はチャットではできません。

 お会いできないのでしたら、このお話はなかった事にさせて頂きたいと思います』


 この時の心境としては、据え膳喰いそびれた乞食ですよ。

 腹ペコな所にご馳走見せといて、それはないよーって思いました。


『探偵さんなんですね。興味深いですね。僕は福岡に住んでるのですが、もし会うとしたらどちらに出向きましょうか?』


 と、送ってみました。


『福岡でかまいません』


 これは福岡まで来る、という事なのか、それともリナは福岡住みなのか?

 この時はもう、怪しさより好奇心が勝ってましたね。


『今回なぜ僕にこのようなお話を下さったのでしょうか?』


『それもDMではお話できません』


 このようなやり取りが続いた後、リナから自撮りと思われる画像が送られて来ました。


『怪しまれていると思うので、顔写送っておきます。私の顔に見覚えありませんか?』


 一瞬、稲妻に打たれたかと思う程の衝撃が、脳天に走りましたね。


 過去に何かあった女?

 顔見知り?

 身バレした?

 リアルの僕を知っててDMして来たの?


 いろんなヤバい展開が脳内を駆け巡りました。


 けど、その時は、その写真だけでは全然わかりませんでした。


 リナという人物が一体何者なのか、なぜ僕にコンタクトを取ってきたのか?


 そんな好奇心も手伝い、結局僕は、リナと会う事を決断しました。


 お腹が空いていたんですね。

 創作的な意味で、ですよ!

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