清楚で可憐と有名な『白氷の剣姫』だけど、弟子入り志願してきた女の子が可愛すぎてえっちなことがしたい
笹塔五郎
第1話 本当は可愛い女の子とイチャイチャえっちしたいのに
少女――レリーシャ・アルバンスは貴族でありながら、冒険者としても活動している。
その剣の腕前は本物で、『白氷の剣姫』と呼ばれ、冒険者の最高位である『Sランク』にも最年少で昇格した。
人柄もよく、誰にでも優しいと評判で――清楚で可憐と言えば彼女のことを指す、とは多くの者が口にする。
今日もまた――依頼をこなして冒険者ギルドの受付へとやってきた彼女は、多くの者達から注目されていた。
「相変わらず可愛いし、お美しい」
「いつも言ってるな、声かけてみろよ」
「バカ言うな。あの人はSランクだぞ? あのレベルの強さを持っている人間は大抵、性格とか人格がどこかおかしい連中が揃ってるってのに、例外っているもんなんだな」
「まあ、確かにな。ギルドもレリーシャ様には頼っているみたいだし」
まさに彼らの話している通りで――Sランクともなると、その強さと引き換えにどこか、性格的におかしい人間が集まってしまう、と言われている。
実際、レリーシャは相当にまともな部類なのだろう。
冒険者を管理している冒険者ギルドも、レリーシャには特に期待し、頼っているのが分かる。
難しい依頼の多くは、レリーシャを頼るくらいなのだから。
ひらひらと、レリーシャの話をしていた者達に手を振ると、気恥ずかしそうな様子が見て取れた。
「今回の依頼も無事達成ということで、お疲れ様でした! また、ギルドからも協力のご依頼を差し上げるかとは思いますが……」
「ええ、大丈夫よ。いつでも頼ってね」
「! はいっ、レリーシャ様には本当に助けられています……!」
ギルドの受付嬢も深々と頭を下げる。
今後の仕事の話を少しした後に、レリーシャはギルドを後にした。
町中でも、レリーシャはすれ違う者達が振り返る。
美しい銀色の髪に、同じ色の瞳――動きやすい軽装を選んで身に着けている彼女だが、その色合いもまた銀色に寄っていて、まさに彼女のイメージにピッタリだ。
清楚で可憐、そして圧倒的な強さを持つ――まさに、彼女は完璧と言えるだろう。
「……」
レリーシャは、人気のない路地裏へと入っていく。
そこでようやく、大きく溜め息を吐くと、
「……はあ、私のイメージが良くなりすぎじゃない……? 本当は可愛い女の子とイチャイチャえっちしたいのに……」
――そんな本音を漏らした。
「おかしいよね? 自由に生きられる仕事が冒険者のはずなのに、どうして私は可愛い女の子とイチャイチャしてえっちなことができないの……? ――なんて、私に今のイメージを崩す勇気がないからだけど……」
レリーシャは自嘲気味に笑った。
――そう、これが彼女の本質である。
レリーシャは元々、貴族の暮らしには窮屈さを感じていた。
剣の才能があったのは事実であり、彼女は家を飛び出して冒険者になる道を選んだ。
結果として――それは成功だったと言えるだろう。
だが、彼女は成功しすぎてしまったのだ。
初めの頃は、いい感じに冒険者で稼いだら、可愛い女の子を誘ってえっちなことをする、明らかに煩悩の塊のようなことを考えていた。
――ただ、悪い噂が広まるのはいいことではない。
レリーシャは貴族であるし、下手な話が広まると、無理やり実家に戻されることだってあり得る。
だから、品行方正に生きていく――その上である程度、有名になったところで、やりたいことをやる。
それが、レリーシャの望みだったはずなのに。
清楚で可憐な『白氷の剣姫』は、他のSランクの冒険者とは違い人格も性格も完璧――などという、あまりに高潔な評価を得て有名になりすぎてしまったのだ。
今更、レリーシャが実は可愛い女の子が大好きで、イチャイチャにえっちなことがしたいなどと、口が裂けても言える状況ではない。
「う、うぅ……本当は可愛い女の子とイチャイチャしたい……さっきの受付嬢の子も可愛かったし、私が声を掛ければワンチャンあるはずなのに……」
あまりに俗世に寄った性格をしている――逆に親近感を得る人間もいるかもしれないが、そのギャップはきっと、ある意味で多くの混乱を招くことだろう。
レリーシャはこんな性格をしているが、自身の築き上げてきたものが大事であることもまた、理解できてしまっている。
およそ、他のSランクの冒険者と同じように、自由にできたら――なんて考えるが、それはできない小心者でもあった。
世の中には可愛い女の子とえっちなことができる娼館があるというのに、当然――レリーシャはそれを利用することもできない。
「……はあ、今日は帰ってさっさと寝よう」
物凄く気だるそうな表情をしながら、レリーシャは帰路に着く。
――いっそ、早くにお金をいっぱい稼いで、遠くに旅に出て可愛い女の子を好き放題できる生活入り浸りたいという、そんな欲望に塗れの想いを抱えながら、振り返ると、
「……!?」
そこには一人の少女がいた。
あまりに油断していたために、ここまで近づかれていることに気付かなかったのだ。
――否、彼女に敵意や殺意がないからこそ、逆にレリーシャでも気付けなかったと言えるだろう。
だが、それ以上に衝撃だったのは――目の前の少女が、あまりに好みだったのだ。
肩にかかるくらいの黒髪に、赤色の瞳。
そして、褐色の肌――ここの辺りでは珍しいだろう。
顔立ちはまだ幼く、彼女はレリーシャよりも身長が低い――が、可愛らしい彼女の姿に、ただ驚きに目を見開いた。
「レリーシャ・アルバンス様、ですよね?」
「ひぇ――ええ、その通りよ。私に何か用かしら?」
一瞬、素が出てしまったが、立て直すスピードもSランクのレリーシャは何とか平静を装った。
めちゃくちゃ好みの可愛い美少女を前にしても、こうしていつも通りの営業スマイルを繰り出せるのがレリーシャだ。
「……その、いきなりこんなこと、言うのは失礼なのかもしれませんが」
少女は視線を泳がせてから、やがて意を決して言い放つ。
「ボクのことを、弟子にしてくださいませんか……!?」
「……っ」
――めちゃくちゃ好みの上にボクっ娘。
さらなる衝撃がレリーシャを襲ったのだった。
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