少女と狼(仮)
@mia1730
第1話 一人と一匹
深い深い森の中、大きく真っ白な狼が金色の瞳を光らせ暗い森を歩く
視界が悪い中、匂いを頼りに川辺へ向かう狼の先に、辺りを明るく照らす焚き火と、それを見つめる少女が映った。
『……ふん』
狼が鼻を鳴らすと、焚き火を見つめていた少女が振り返り、少女の金色の瞳と狼の金色の瞳が交差した。
「あっ、おかえり」
狼が3歩、少女に近寄ると咥えていた大きな兎を少女に放る。
「わっ…ととっ…もう、投げないでよぉ。危ないでしょ?」
不満げな少女をよそに、焚き火に歩み寄った狼は後ろ足で数度、焚き火に砂をかけると、火の勢いは弱まり明るく照らしていた周囲を幾分か暗がりが戻った。
焚き火の明かりだけしかなかった世界に、星空の優しい明かりが加わり、白い狼の毛並みも反射して輝いて見えた。
『…わふっ』
狼と同じような白銀の髪をした少女を見下ろし吠えると、前足を少女の頭に乗せた。
「わっぷ……ごめん。君みたいに友好的な子ばかりじゃないから気をつけないとだったね…」
まるで、自分の未来だと言わんばかりに放られ冷たくなっている兎を撫でる。
頭に乗せた前足を下ろし、少女の横を通り過ぎた狼は、少女から離れ森の側で休む様に伏せた。
「もうっ!ちゃんと捌くよ!」
腰から小さなナイフを引き抜いた少女は、平たい石の上に兎とナイフを置くと、神に祈るように両手を組んで祈りを捧げた。
「…いただきます…」
祈りを捧げた少女は一言呟くと、兎の解体へと取り掛かっていった。
最初の頃には、死骸を見ただけで泣いてた少女も、今では手早く解体を済ませていく。
『…わふっ』
そんな少女の背中を狼が鼻先を押し付けてきた。
「わっ、ま、待ってね。…っと、はい、君の好きな所とれた…よ?…っえ?」
少女が兎の心臓をとり、狼に差し出すために振り返ると、リンゴを咥えた狼が少女を見つめて座っていた。
「これ、赤の実…ふふっ、ありがと」
リンゴを受け取り代わりにと、兎の心臓を差し出すと、美味しそうに呑み込んで元の場所へと、また伏せに行った。
「そう言えば、君との出会いも、この赤の実だったね…」
ふと懐かしくなってリンゴを見つめる少女が呟くと、大切なものを思い出すようにリンゴを抱きしめて空を見上げた。
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