崔は現代ドラマを書きました!

崔 梨遙(再)

1話完結:2300字

 坂上翼は30歳、ベンチャー企業の課長だった。幅広い年齢層のスタッフを相手にしつつ、自分の仕事に専念していた。


 その頃、主婦パートの貴理子という39歳のスタッフがいた。翼が仕事を頼むと、嬉しそうに引き受けてくれる。そして、出来上がった書類を嬉しそうに渡してくれる。そして、翼が書類をチェックする間、チラチラと嬉しそうに翼の顔色を窺う。


 ああ、この女性は褒めてもらいたいんだ。ということはよくわかった。だから、翼は褒めてあげたかった。だが、貴理子に頼んだ仕事には必ずミスがあった。指摘しなければならない。ミスを指摘すると、凹んだ顔をする。仕方がないので、


「貴理子さんは真面目だから助かるよ」


などと褒め言葉はかけるように気を遣った。褒めると、笑顔になってくれる。年上だが、かわいらしい女性だなぁと翼は思った。実際、顔も美人ではないがかわいかった。歳よりは若く見える。そして、ボディーラインが魅力的だった。ウエストのくびれとバスト。バストは何カップあるのだろう? 勿論、そんなことを聞く機会は無かったけれど。



 翌年、31歳で翼は独立した。事務員が1人ほしかった。ちょうど、貴理子がクビになりそうだったので貴理子を誘ってみた。意外と簡単にOKしてくれた。


 貴理子には家庭があるので、9時から16時までの出勤時間だ。昼休みが1時間あるので実働は1日6時間。


「給料、幾らほしい? 正直に言ってみて」

「うーん、希望を言えば、月に16万です」

「じゃあ、月16万で頼むよ。儲かったときは賞与も出すから」


 職場は自宅兼オフィス。2LDK。2部屋のうち、1つは翼の寝室。1つは翼の私室。リビングとダイニングにデスクを並べて置いてパソコンとプリンタと電話。そして応接セット。


 朝は9時に貴理子に起こしてもらうようになった。最初は、甚兵衛を寝間着にしていた翼の朝立ちを見て“キャッ”と言っていたが、流石人妻、目は翼の股間をじっと見ていた。若い女の娘(こ)だったら、スグにセクハラだと言われそうだ。翼は、事務員が貴理子で良かったと思った。


 翼は営業で外回りをすることが多かったが、貴理子と一緒にいる時間が増えた。次第に貴理子に惹かれていく。気付いたら、翼は貴理子の膝枕で耳かきをしてもらえるようになった。上を見ると、貴理子の大きな胸。手を出したら掴めそうだ。掴んでいいのか? 掴んではいけないのか? 判断が難しかった。下手なことをして貴理子に嫌われるのは嫌だった。だが、貴理子に対する興味は増すばかり。



 或る日、翼は貴理子に封筒を渡した。中には、貴理子の夫の浮気の現場の証拠写真が何枚も入っていた。貴理子は最初、ショックで顔面蒼白になったが、その後は怒りで顔が赤くなった。


「どうする?」

「離婚したいです。許せません。でも、離婚したら生活が不安で……私、どうしたらいいのでしょう?」

「離婚する前にやるべきことがあるんじゃないの?」

「やるべきことって、なんですか?」

「浮気されたら、こっちも浮気してやらないとね」

「え!」


 翼は貴理子の唇を唇で塞いだ。貴理子の身体から力が抜けた。完全に身体を翼に委ねたようだ。翼はお姫様抱っこで貴理子を寝室に運んだ。


 それからは、翼は朝一番に貴理子を抱くようになった。翼は貴理子にはまった。想像以上のダイナマイトボディー。形の良いGカップ。“この身体を自分だけのものにしたい!”そう思うようになった。


 そこで、翼は貴理子に離婚するように指示した。


「でも、離婚した後の生活が不安で……」

「大丈夫、離婚したら、僕が貴理子を嫁にもらうから」


 貴理子は、その言葉を聞いて決心した。証拠写真を夫に突きつけて離婚を切り出したのだ。すると、意外にすんなり離婚は成立した。夫も、浮気相手と結婚したくなっていたらしい。円満離婚、期待以上の慰謝料をもらったらしい。しかし、親権はとれなかった。2人の息子とは、月に1回会えるだけになってしまった。


 規定期間が過ぎると、翼と貴理子はスグに籍を入れた。お互いバツ1同士、挙式や披露宴はしなかった。ただ、貴理子のウエディングドレス姿の写真を翼が欲しがったので、タキシードとウエディングドレスで写真だけ撮った。その写真は翼の宝物になった。


 結婚したのが、翼が32歳、貴理子が41歳の時だった。“1年間は2人の時間を楽しもう”ということで、休みの度に旅行に行くなど新婚生活を楽しんだ。そして、貴理子が43歳、翼が34歳の時に男の子を授かった。



 息子の大地が成人した。貴理子63歳、翼54歳だった。


「貴理子」

「なにかしら?」

「幸せかい?」

「幸せですよ」

「すまんな、貴理子が離婚するきっかけを作ったのは僕だ」

「そういえば、そうだったわね」

「貴理子を僕のものにしたかった」

「私は、いつになったら抱いてくれるのかなぁって、待ってたんですよ」

「そうなんだ」

「ええ、でなければ膝枕なんかしませんよ」

「じゃあ、僕達、元々相思相愛だったんだね」

「はい、だから、私達が結婚したのは偶然じゃないんですよ。必然なの」

「そうか、そう言ってもらえてホッとしたよ。旦那の浮気写真なんか渡して、家庭をめちゃくちゃにしたって恨まれてるかと思っていた」

「恨みませんよ。良かったです。旦那が引き取った息子達も社会人になって幸せな結婚が出来ましたし。それに……この歳になっても抱いてもらえるんですから」

「愛しいからね、抱きたくなるんだよ」

「いつまで抱いてくれるんですか?」

「勿論、死ぬまで」



 2人は長いキスをした。こういう幸せの形があってもいいのだろうか?







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崔は現代ドラマを書きました! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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