第25話
『場所を聞け。』祥二がその辺に落ちてたプリントの裏に書いたので、勇太は急いで聞いた。
「リズ先生。それで、場所はどこ?」
「………ここ、ドコ? え、ドコなのよ。」
どうやら、日本語で正しく言えないようだ。貴奈に聞いているらしい。それで、面倒になったリズが貴奈に電話を替わった。
「……どうしよう。ここ、どこだろう。分かんない。」
「えぇ!? どうするんだよ!?」
祥二にしーっ、と注意されて勇太は慌てて声を小さくした。
「だって、グルグル連れ回されて、怖いから覚えてないよ……!車に無理矢理乗せられて、道路、よく覚えてないよ…!」
貴奈が半泣きで叫んだ。確かに恐怖でちびりそうなほど、怖いはずだ。勇太は見ていないが、貴奈はリズが銃を持っている所を見ているのだ。貴奈がそんなことで嘘をつくとは思えない。
「……確かにそうだよな。怖いよな。」
すると、祥二が紙に書いた。逆探知成功。祥二は自分の電話ですぐにリセット本部と連絡を取り、貴奈の居場所を探知してもらっていたのだ。
「分かった。とにかく、俺、行くよ。そこで待ってろ。」
「え、来るって、勇太、勇太が来るの?え?だめだよ、危ないよ……。」
「とにかく、待ってろって……!」
勇太が少し強い口調で言うと、ようやく貴奈は黙った。
「じゃあ、待ってろ。」
勇太は言って、電話を切った。
「あ! お前、何勝手に電話切ってんの。」
祥二に叱られて勇太はえっ、と彼を凝視した。
「まだ、だめだったんですか?」
祥二はため息をついた。
「相手を刺激しないようにしろって、言おうと思ったのに。しかも、お前、なんで行く気満々なの。お前が行ったって何ができる? 俺でさえも無駄かもって思うのに。」
「どういう意味ですか? ピストル持ってるからですか?」
「そうだ。それに、たった一人で本当に待ってると思うのか? まだ、向こうから聞き出す情報はあった。」
勇太はうつむいた。
「でも、俺、助けに行きたいんです。貴奈は三歳の頃からの幼馴染みです。兄弟みたいなヤツだから、泣いてるから助けに行きたいんです。」
「漫画みたいに、それではい、いいよ、って連れて行けると思うか。向こうは銃武装したような連中だ。向こうは法律を無視しても、処罰されないが、こっちは法律を無視できない。それだけ、奴らは権力を持ってる危険な連中だ。下手をしたら、お前、少年院に入れられるかもしれないぞ。」
「なんで!?」
「罪がなくてもでっちあげられる。それほどの権力を持ってる連中なんだ。」
にわかには信じられないが、祥二は真面目に怒っているようだった。目が据わっている。よほど危ない連中のようだ。
「……じゃ、警察に連絡するんですか?」
すると、祥二はため息をついた。
「それも、アウトだな。向こうは警察ともツーツーなんだよ。お偉いさんが関係しているからな。」
「はあ!? そんなのおかしい! ○○警察二十四時とかいう番組は一体、なんなんだよ!」
「それは、あくまで権力握ってない、真面目なお巡りさん達や刑事さん達の話。俺が言ってるのは、トップの方々の話。」
さらに勇太は食ってかかろうとしたが、祥二に宥められた。
「それに、警察に言うなと脅されるはずだ。実際に警察に緊急通報した時点で、向こうは把握する。その時点で、斉藤は危ない。」
信じられないが、そこまで浸透しているらしい。そこまでされたら、どうやって抵抗したらいいだろう。
「信じられようが信じられまいが、現実なんだよ。」
その時だった。また、勇太のスマホがなった。また、発信元は貴奈だ。
「……もしもし。」
「ああ、さっき、カッテに切ったでしょ。ダメじゃない。とにかく、ケイサツにツウホウするな。ユウタくんも来ないと、タカナを殺す。キル。ワカッタね。」
「……。」
リズは一方的に伝えると、電話を切った。
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