君と花束。

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

君と花束

 私は地元の花屋さんの店員。かれこれ高校生からお世話になったお店。高校卒業にすぐに働きたかった私は前から時々訪れていたこの店に働き口を探しに行った。花屋は家族で経営していてこじんまりとしていたが、通路以外には所狭しと花を魅せるように並べられていた。あとから教わったことだけど、並べ方は魅せる以外にも管理方法が違うからそれを込みで並べてたらしい。花屋で働いていて時が過ぎ、私も家族を持つようになった。一時期育休していたが、戻ったときは快く受け入れてくれた。

 最近、中学生くらいの女の子がこの店によく来てくれる。仏花だけを買わずにいろいろな花を買いに来て、笑顔で帰っていく。

 それだけ見ればかわいい女の子なのだが、一人に送るには多すぎるブーケなのが不思議だ。そう思ってふと、思い出したときに聞いてみると彼女と彼女の兄が花と花の匂いが好きでいつも買ってくれるのだという。しかも、花が枯れる前に手を付けて、ドライフラワーや香り袋を作っているのだという。

 話してるうちに彼女と彼女の兄が作ったものに興味が湧いたので今度持って来てもらうことにした。

 見せてもらったらこりゃぁ凄かった。ほんとに売り門と同じ出来栄えのものがあった。だからすっごい褒めた。兄ははにかんで妹は嬉しそうにしてた。

 私は良しと思い店長に相談した後、この店で売ってくれないかと頼んだ。するとどうだ。兄妹は目を輝かせて売ることの話し合いを始めた。

 なんとも嬉しいことさね。またいつか、私の娘も世話してほしいね。そう思いながら兄妹と賑やかに話をする。

 自らもあの頃のように目を輝かせているのに気づいて

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君と花束。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro

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