俺と歌唱機械
猫面
トラウマ
初めて其奴の声を聞いた時、何かの恐怖を覚えた。
無機質な生気のない機械音声。歌詞は辛うじて人の言葉に聞こえた。
人の声から感情を濾過したような、幼い少女の声。
歌う旋律は明るいのに、この声のせいで怖く感じた。
俺が見たのは、人の形をした機械。
青緑色のツインテール、緑色の目。黒いノースリーブのワンピースとミニスカート。
表情は笑顔なのに、声は無表情。
「〜〜、〜〜〜〜!〜〜〜〜〜。」
何か、何か喋っている。旋律を一ミリのズレもなく、正確な音程で歌っている。
歌詞が聞こえない。ただなにか子音が聞こえているだけ。
「これは、なんていう名前、なの?」
近くにいる友人に聞く。はやくこの機械音声の正体を知らなければ。
「これはね、」
初音ミクって言うんだよ。
その日から俺は初音ミクを拒絶した。
声を聴くと、目眩がする。
一部の人はそれを信じないだろう。初音ミクは究極の機械音声であり、尚且つ見た目も魅力的。
そんな機械を拒絶する俺の方がおかしいかもしれない。
だが、俺は本当に初音ミクに恐怖心を抱いている。
でも抗う許可も与えられず、その日はやってきた。
青い空、広がる遊園地のような街。カラフルで、風がない。電子音と軽やかなBGMが流れる。
だが、前を見た瞬間、俺は血の気が引いた。
「ワ たシHATUネMIクハjiメma site。」
目の前に居るものから、俺は全力で逃げ出したい気持ちになった。
怖い。足が竦む。脳が揺らぎ、視界が狭くなる。
「ネぇ、kiミノ ナマ エハnaニ?」
足が地面に縫い付けられたように動かない。心臓が早鐘を打つ。
「た、たすけて…!!」
やっとのことで絞り出した声は掠れていた。
こちらに近づいてくる。緑色の瞳がこちらを見つめる。唇が動いた瞬間、俺は気絶した。
「ワタシキミノなMaエGAshiりたい。トモダチニnaリtai。」
「いや、だ…!」
俺と歌唱機械 猫面 @VI_nekomen
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