第14話 男気バトル開始



「というわけで少し遅くなりましたが、シルバーくんも到着したということで《男気バトル》始めていきたいと思います!!」


"やっとか"

"早く戦えー"

"勝ち予想、ケンタ"

"ケンタ" 

"シルバー様"

"武器的にケンタ確定"

"いや、実力的にシルバーだって笑 この前の秦戦見てないやつばっかりなの?笑"

"ハンターといえば武器でしょ。武器と共鳴できないと勝てないんだし"

"共鳴?"

"共鳴知らないの草"

"共鳴:ハンターが武器に流れる氣を自身のものと統合し、武器本来の力を発揮すること。この際、武器と会話をしているというハンターもいる。これhunter.wikiそのまま引用してきた" 

"親切な人がいてよかったな,にわかども"


 相変わらずスゴいコメントの嵐,だけど今から戦うのでゆっくり見ている暇はない。


「じゃあシルバーくんから視聴者さんに一言っ!」


 ケンタがそう言うと、宙を舞っているAI撮影ドローンが同時にボクへ向く。

 どうしようかなぁ、こういう時って何を言えばいいんだろう。


「えっと、そうだなぁ……ボクは勝って玲奈とデートってやつをしてきます!!」


"ちょっ! おま……"

"ふざけんなよ、こっちはあえて黙ってやってたのに"

"あーあ、ここの視聴者ほとんど敵にまわしたな"

"シルバー負けろ" 

"ケンタに1票"


 あれ、コメントの量がさっきより大幅に増えている?

 どうやら視聴者さんは何故か怒っているみたいだ。

 それに遠くから観戦してくれている玲奈は手で顔を覆ってるし、さっき盛大な笑顔で見送ってくれた孝二さんも心なしか顔が引き攣っているように見える。

 目の前のケンタに至っては、笑いを堪えるのに必死なようだ。


「くくくっ、お前さ、ずっと思ってたけどバカなのか?」


「バカ? 何が?」


「ぷっ! いやなんでもねぇ。橘商店さん! 審判お願いしていいですか?」


 ケンタは遠くから見ている孝二さんに声をかけた。

 それに応えるように彼はこちらまで来て、


「よし、いいだろう。今からケンタVSリュウの模擬戦を開始する。もちろん相手を即死させるような行為は禁止。ある程度の怪我はこの訓練所担当のヒーラーがいるから問題ねぇ。あと分かってるだろうが、四肢の欠損なんてのは治せねぇからそこまで激しいことはするなよ?」


「橘商店さん、すみませんがそれと」


 孝二さんの司会にケンタは割って入り、


「男気バトルのルールですが、身体を強化するような技や魔法で直接攻撃するような手段も禁止です」


 追加のルールを説明する。


「あぁ分かった。リュウもいいか?」

 

 なるほど、今ボクが持っているこの武器で戦えということか。

 それと身体強化ってことはボクの竜細胞を使った技はどれもダメだね。

 ボクも大体のことは理解できたので首を縦に振って承知の旨を伝える。


「よし、じゃあお互い武器を構えろ! いざ尋常に……試合開始っ!」


 始まった途端、ケンタは大きく後ろに下がって距離をとる。

 そしてあのクロスボウを構えた。


「ははっ! すぐ決めてやるよ!」


 バスッ――


 銃と遜色のない強く鈍い破裂音。

 その音がボクの耳に届く頃には矢がボクを通過していた。

 間一髪当たらなかったけど、あれが当たったら怪我じゃ済まない気がする。


"クロスボウってあんな速度でるっけ"

"ケンタは風魔法使えるから矢に自分の魔法加えたんじゃない?"

"まぁ身体強化も魔法での直接攻撃もしてないもんなw"

"↑でもちょっとズルくね?笑"

"シルバー反応できてなかったぞ"

"やっぱケンタの勝ちじゃん"

"勝ち投票ケンタに変えよ"

"わいも"

"属性魔法ってハンターの中でも使えるの1割くらいでしょ?"

"ケンタ何気に有能ww" 

"シルバーって身体強化系っぽいよな" 

"ならここのルールじゃめっちゃ不利じゃん"


「おい、シルバーっ! 次は当てるぞ? 情けなく土下座でもするなら降参を認めてもいいけどな、ハハハッ!」


 ケンタはさも勝ち獲ったかのように高笑いをしている。


 降参なんてものはしないけど、まずはあの矢の速さに慣れないと勝ち目がないのは事実。

 だけど一回自分の目で見たんだ、あとはタイミングだけ。


 バスッ――


 次は少し余裕を持って避けることができた。

 今分かったけどこの矢は銃と一緒で速度は単一、軌道も直線的だ。

 

 バスッ――


 これも素早く避ける。


「ちっ! 避けるだけじゃ勝てねぇぞ?」


 次撃ってきたら試してみるか。


 バスッ――


 矢は今ボクの手に握られている。

 きっと『魂奪のガントレット』があるおかげ。

 ボクの手じゃ小さくて難しかったかもしれないし。

 

 よし、これでこの武器は守りにも使えることが分かったね。


「……は?」


 ケンタは口をポカンと開け、呆然としている。

 何をそんなに驚くことがあるのだろう?


 審判の孝二さん、少し離れたところで見守ってくれている玲奈も同様の表情。

 もしかして武器の使い方が違かったり?


"やっぱりシルバー規格外ww"

"いや、たまたまだろ"

"にしてもケンタの焦り方おもろ笑"

"すげー、俺なんて矢すら見えなかったぞ" 

"あの矢を手で掴むってお化けすぎて草"

"俺もハンターだけど、ガントレット使おうかな……"

"↑やめとけww 普通のハンターがしたら即死だww"

"やっぱりシルバーが勝つと思ったんだよ~"

"そうそう、俺はシルバーくんに1票入れてたし"

"掌返し民多くて草" 


「こ、これならっ!」


 バスッバスッバスッ――


 一本目、二本目の矢は右手、左手で掴んでみせた。

 さすがに三本目となると手も空いてないので、ガントレットの前腕装甲部分で弾く。

 そうか、この金属部分でも守れるんだね。


「く、くそぅ……」


 ケンタは体全身から力が抜け落ちてしまったかのように構えていたクロスボウをだらんと下ろした。


"まじか、あれマジで掴んでるわ"

"これでたまたまじゃないことが分かったな"

"秦に続いてケンタも倒されるか"

"なにもんだよシルバー"

"シルバー様かっけぇ"

"このままケンタを倒しちまえ"

"ケンタ側の視聴者が寝返ったww"


「次はボクの番だね!」


 武器を下ろしたということはそういうこと。

 ボクはそう判断し、両手に填めてある『魂奪のガントレット』を構えた。

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