転生したけどバカだった~バカだったので世界最強の力を持て余す~

隼ファルコン

序章 存在意義

第1話 前世の君

 晴天せいてんの空。よどみなき綺麗な空気。日差ひざしがい降りるそんな世界。空気ははだすような冷たさ。そして、かすかだが空から白い結晶が姿を見せる。そう、季節は冬だ。 


「早く準備しなさい!!もうすぐ始まっちゃいますよ!!!」


 自分の部屋で寝ていたというのに、そういって俺をかすのは母だった。焦っているようだが、”予定”の時間まではまだ余裕がある。


「…わかったぁぁ。今行くから!!」


 母が頑固がんこなことを、理解わかっている。諦めておれは、少し急ぎ目で準備を始めた。


 俺の名前は「高木豪散たかきごうち現役げんえきバリバリの中学3年生だった。身長は175cmと今の年齢にしては高いと思う。

 見た目は…まぁ少しガタイがいいってことと、サラリーマンみたいな頭以外普通だ。そして中学3年生。季節は冬。

 ということは…そう、高校受験が始まってしまう。


 俺は自分で自覚している。自分がどうしようもないほど馬鹿ばかなことを。だから母さんに高校受験はいいからといったんだけど。


『もう!!そんなんじゃ立派な社会人大人にはなれませんよ!!』とかたくなに反対》されてしまい、高校受験を受けることになってしまった。

 まぁお金をはらって受験を受けるわけだし、可能かのうかぎり全力で受けると自分の中ではちかっている。


 名前を書くだけで合格だとか言われているレベルの学校だけどそれでも受かるか分からない

 そう不安にもなりつつ受験の準備を進めていく。


(とりあえずペンと消しゴムがあればいいでしょ)


 今、彼の受験の準備は終焉フィナーレを迎えた。わずか数分の出来事だった。


「母さん!!いってきまぁす!!」


「はい、いってらっしゃぁい!!」


 そう、母とのやり取りを終えると志望校まで足取りを進めていく。志望校が決まって事前に母から 『あんたはバカなんだから、何回もこの道通って覚えなさい!!』と何回も志望校までの道を覚えさせられたので何とか志望校までは行くことができた。


「ここが『狂田高校くるたこうこう』…」


 目前にあるその高校を見て高木は体がふるえた。確かに高校》に行く気はなかったが、それも高木たかきが"バカだから"というのが理由わけなのである。


 だがいざ高校を見据えてみると、高校で出来できた友達と楽しく過ごす姿を想像イメージした。存在しない記憶といえるほどに、事実ではないはずだが、それは高木たかきには深く根付ねづく。今までの中学校とは比べ物にならないほどの規模間きぼかん気圧けおされていたしていた。


 そんな渋々しぶしぶ受けるはずだった高校受験も、元より少し気合がいてきた。

           

「よし、行くか…」


 校舎内に入ってみるとそこには、今までの田舎中学母校とは比べ物にならないほどの人であふれていた。


 人相にんそうが悪そうなヤンキー。陰気いんきそうな眼鏡めがねをかけた人。明らかにレべチなギャル。人類じんるい本質ほんしつとは、このような多様性たようせいなのだろうとしみじみ思うね。モブから主人公の様な見た目をしている人物達に、高木たかきの心にはさらなる高揚感こうようかんが体中をける。


 高木たかきの試験会場は2-3の教室だった。高木たかきは自分がバカなことを理解している。当然だがこの場で迷うことを危惧きぐしている。胸の高鳴りをグッと抑え、足早で教室に向かっていく。


 高木たかきは走り続けた。軽快けいかい愉快ゆかいな足音をかなでながら。

 

「はぁ…はぁ…危なかった」


 何とか試験時間までに間に合った高木たかき。教室内で周りを見てみると、ほかの受験生はほとんどそろっていた。


 あれだけほかの人たちよりも早く向かっていたのに結果だけで見たら最後に到着。遅刻ギリギリという時間まで校舎内を彷徨さまよっていたのであった。


おそいですよ、受験番号00046番さん。早く席に着きなさい」


 しゃくさわる顔だねぇこの女。だがともかくしかられてしまった。まぁ仕方あるまい。実際のところ、試験開始まで残り1分といったところであろう。もう少し遅ければ問答無用もんどうむようの0点であった。だが今の高木は、そんな怒号どごうにもくっしないほどテンションが高まっている。既に解答用紙と問題用紙が用意されており、高木は席に着き試験の準備を始める。


(よぉぉぉし…気合い入れていきますかぁ…)


 首を捻り、ボキボキと音を鳴らす。指の関節を折ったりし、心と身体を引きめていく。そしてその時は来た。


「試験開始ぃぃぃ!!!」


 試験官の開始の合図により、さらに身を引き締めていく。


(とりあえずは…名前…と)


 まず名前を書き、解答を書き始めていく。すると突如ズキッッと頭がいたくなる。その異音いおんと同時に視界がゆがむ。


(これ…まっずいなぁ…痛すぎるんご)


 高木たかきは自前の病気のようなもので、情報を多量たりょう摂取せっしゅしすぎてしまうと頭痛や眩暈めまいなどが発症はっしょうする。だが今回は受験という人生を左右するイベント。なんとか耐えながら順調に書き進めていく高木たかきだったが、その身に異変が起きた。


(あ…れ…)


 つくえを支えに何とか態勢たいせい維持いじしていた高木たかきが、地面に倒れ込む。高木は意識を失った。

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