デルフィ

朝。


それは1日の始まりであり、同時に終わりでもある。



そんな微妙に意味のわからないことを考えながら私は目を覚ました。


目を覚ますとすでに外は明るく、開け放たれた窓からは涼しい風が流れ、時折強くなる風にカーテンがなびいている。


まだ少し眠気の残る目を開け、体を起こすとそこには2人のメイドがいた。


たしか名前はキャロンとエドゥアルトであったか。



「よくお眠りになられたようで。ご主人様、お目覚めのばかりのところ大変恐縮にございますが、本日は忙しい1日となっておりますので早急にお着替えなさいませ。お着替えはこちらにあります。」



ベッドのすぐそばに立つキャロンから声がかけられた。


そのそばではエドゥアルト、ことエディが片膝をつけ、衣類を手にしている。



なんとメルヘンな光景だろうか。



日本にいる間には決して体験することのなかった光景が、私の眼前にはさも当たり前であるかのように繰り広げられていた。


それも無理もないだろう。なぜなら私、ーアルヴェーヌ・フォン・デルフィヌスはこのナターラアングレー大陸最大の王国にて王族の次に強大な権力を有している公爵家、アルヴェーヌの謂わば公爵令嬢であるのだ。


ゆえに私の扱いはこの家の中でも特に扱いが丁寧な存在である。それは同時に将来力あるものとして強く育って欲しいという期待が込められて存在だとも言えるだろうが。



ともかく私は前世でややあって転生し授かった新たな人生を謳歌すると決めたのだ。


この光景は今は非日常であろうとも何慣れてゆかねば公爵令嬢の座は務まらないであろう。



「おはよう、キャロン。ありがとう、今着替えるわ。」



私はそう一言答え、2人に少しの間でておくように伝えた。



私の目の前にあるのは一着のドレス。そのドレスはいわゆるプリンセスラインと呼ばれる形状のもので、


全体的に存在感とやや大人びたデザインが施されている。


ウエストラインからふんわり広がるビッグスカートは、プリンセスのイメージそのものであり、シルクでできた純白の生地がプリンッセスらしさを引き立てている。


さらに腰より上を見ていくと首の方はホルダーネックが用いられた構造となっており首の後ろには大きなリボンが結ばれているのだが、そこの生地には鮮やかなコバルトブルーが用いられており個性的な可愛らしさを持ち合わせながら、なおかつ大人びた雰囲気も併せ持つ美しいドレスとなっている。



この作者自身、幼い頃にはプリンセスのドレスを着たことがあるのだが、(実の姉の手によりまして。まぁとてもいい思い出です)その時のものは安物であり、どうにも素肌にはメッシュ素材が痛かった思い出があるのだが、このドレスはそんな悩みを簡単に消し去った。


とにかく肌触りが良く先ほどまで日の光に照らされていたおかげであるのかほんのり温かいそれは心地よい春の朝、目ざめたばかりの際に我々を再び眠りにつかせんとするオフトゥンのようであり、ほんの少しデルフィはまた眠りにつきかけたのだが、これから起こるであろうたくさんの未知の体験に対するワクワクが目を覚まさせた。



今日はどんなことがまっているのだろうか?



そう考えながらドレスにそでを通し、着替えを終えるとキャロンは軽いメイクを私に施し始めた。


その間彼女はこれからの予定について簡単な説明をしてくれたのだが、まとめると、


まず着替えを終えてすぐに部屋を出て、この家の者たちが集まる食堂に行き朝食を済ませる。


その後、国王の下に謁見に行き、軽く話をした後で国王の付き人もしている司祭の下で魔力測定を行い、その後服を着替えて簡単な体力測定、適した武器が何かを確認するためのテストを行い、昼食を取った後に最後にまた服を着替えてユニークスキルを一つ授かり、自宅に戻って夕食まで自由時間とするのだとか。



私はキャロンの話を聞き終え、手元にあったメモにその予定を書き込んだ後、ドアノブに手をかけた。


しかし、開けようとする直前にふとキャロンから呼び止められて、足を止めることになった。


「ご主人様。部屋を出る前に一つ忘れていたことがあります。これから向かうところはいくら行き慣れた王宮であるとはいえ、今回は半ば儀式的な意味も含まれています。この話は子の家のもの、並びに王宮内でも国王や王子といった、位の高い者だけが知っていることでありますが、どこでだれが話を漏らしているかもわかりません。そのためこちらの香水をかけさせていただきます。」



キャロンはそういうと懐から白くやや粘り気のある液体が入った怪しげな小瓶を取り出し、スプレーするための容器に移す前にあろうことか自身の口に含み、舌の上で転がした。


そうして15秒ほど下で転がしたのち、それを専用の容器に移した。



のだが、白くて粘り気のある液体を口から出す様子はなんだかとてもいけないものを見ている気分にも思えた。


あぁよくないよくない。すぐこんな考えに走っちゃうんだから。



そう考えているうちに香水はかけ終わり、部屋を出る準備もおわったのであった。



「さぁ、ご主人様。準備も整ったことですし、食堂に向かいましょう。」


「ご主人様は記憶を一部失ってしまわれているとのことですので僕が案内します。ご主人様、お手を。」



キャロンがそう声をかけると、先ほどまでひざまずいていたエデュアルトが手を差し伸べてエスコートしてくれた。



ガチャリ。


ギギギー。



そんな音を立てながら重たい扉を開けると、そこにはとてつもなく荘厳で豪華で繊細な空間が広がっていた。



ここは何だ?夢か?夢を見ているのか?否、現実である。


そんな自問自答を繰り広げるも、その豪華すぎる景色を目にした私は開いた口がふさがらなくなってしまった。


想像できるだろうか?VIPルームですか?と思うほどすさまじい部屋を出ると、そこには、え?ここベルサイユ宮殿ですか?って言いたくなるほどの、実にルネッサーンスな光景が広がっているのだ。


そんな光景、これが現実であると認識できたところで呑み込めるものではない。



私が衝撃を受けて固まっていると、そんな時間ありませんよとばかりに手を引かれ、仕方なく歩みを進めることになった。



そうこうしているうちに私たちは食堂の扉の前へ到着した。



「ああ、へー。オオキイデスネ」


もう決めたよ、私は今後突っ込みいれない。


疲れるし、てかこれがこの先自分の日常になるんですものね。



「では、扉を開けさせていただきます。」


数回ノックをしたのち、キャロンは重く大きな扉を開けた。



その扉の向こうに広がっていたのは案外とそこまで大きなものではなく、少し大きなテーブルに10人分ほどの椅子が並べられている空間であった。すでにそこには家族たちが座っており、どうやら私が来るのを楽しみにしていたようである。



「おお!デルフィよ、体調は大丈夫のようだな。」


「ええ、父上。昨夜は大変頭が混乱しておりましたが、十分に睡眠をとったおかげで体も休まりました。」


「安心したよ。デルフィ、僕は君のことが心配で心配で一晩たりとも安らかに眠ることができなかったんだ。おかげでほら、なぜか体が小さくなって年齢も小さくなって、幼少期の美少年に戻ってしまった。なんでだろうね?」



私は一間を開けてこう言った。


「なんでですかね、、、。」



いやなんでだよ!なんで体小さくなってんの?意味わからんよ!でもどうやら中身までは変わってないようなのがなおさら怖いわ!なに?ショタになりたかったの?



「お姉ちゃん元気になってよかった。もう、これからは無理して体を壊す前にちゃんと話さなきゃダメなんだからね!もう、、ほんとに心配したんだから。」


「ご、ごめんよローズマリー。今度から気を付けるわね。」


(⌒∇⌒)(大好きなお姉ちゃんが死んでしまうなんてzっ絶対にありえない。でも心配だからこれからはできるだけそばにいてあげなくちゃだめね。)



なんだろう。この子からとんだもない闇を感じる。なんでかな。



「まあまあ、ともかく無事に元気になってよかったわ。あと少し目を覚ますのが遅ければ、命に危険があるだろうともお医者様が言っていてね。だからほんとに目を覚ましてくれたよかったわ。」



そう言葉を紡ぐのは母だ。



「私が意識を無くしている間に何が起きていたかはまた教えていただきたいですが、わたくしはこの家鵜を継ぐ可能性のある人間、このぐらいのことで命を落としてなるものですか。社交界一の淑女となるため、ただいまより精進再開といきますわ」


「えぇ、楽しみにしているわ。フフフ。



俺は目の前の人間を知っている。


母であるというのはもちろんのことだが、この体を男としてではなく女として育てようと考案した第一人者である。


ことの経緯を話すとかなり長くなるから、手短に説明するが、そもそもお嬢様としての生を歩むことになったのは一年前、現在の年が八歳であるから、七歳の時のことだ。


七歳といえば日本でいうところの小学一年か二年といったところだ。


つまりすでに物心がつき始めているころだ。


そんなある日、突如母の口から聞かされた話があった。


「デルフィ、これからあなたにはすごく苦しい人生を歩んでもらうことになるわ。理由はまだ言えないのだけれど、これからあなたはこの家を継ぎ、社交界にて誰よりも輝く淑女を目指すのよ。あなたを辛い結末に終わらせることなく生きてゆかせるためにはこれしかないの。」



そう告げた母の片目は赤黒くぼんやりと光り輝いていた。


今思うとあれは未来予知か何かの類だったのだろうと思う。


だがまあ、その目でどこまで見えていたのかはわからない。


どこまで詳しくな。



それからというものの俺の人生はつらく、苦しく、恥ずかしく、刺激的な毎日を送ることとなった。


初めに何かあった時に男とすぐにばれないようにという理由で体中あちこちに謎の封印をされたり、其れまで着ていた男物の服の一切を捨てられ、毎朝目が覚めてはすぐに、人より早く精通していた私の体の生理現象を抑えるためと、「バレないため、念のため、万が一の時に備えて」と言いながら素っ裸にされ朝立ちしたものを萎えさせるために母の手によって尻の穴をいじくられ搾り取られ、二、三度出して疲れた私のからだに女性ホルモンを打ち込み、胸を作っていった。


さらには普段からしゃべり方にも気を付けるようにと言われ、ふと男だったころの口調が出てしまったときには地下に連れられて何度も絶頂させられ、トラウマを植え付けられた。


それが家にいたときには地下で行われたが、ピクニックなどに行ったときは母とその母専属のメイドとともに席を外させられ、離れた森の中で見えないようにおろされた幕の裏で素っ裸にされ、つるされて


イカされたりおもらしをさせられたりと、さらにひどかったものだ。


そして夜には自分のためにつけられた二、三歳下の二人のメイドによってまたしてもしごかれ開発され、どこから話を聞きつけてやってきたのかこの国の王子の夜這いによって開発された穴で何度もイカされ、心は少しずつ壊れていった。


そんなある日、苦しい日々に嫌気がさした私は自室の隅にて首をつり、自殺をしようとした。


何せ、他でもない大好きな母親から毎朝、日中など問わず犯され、夜には年下のメイドたちや、自分より階級の高い王子によって繰り返し犯されたのだ。


こんな苦しさにどうして耐えられようか。



しかし自殺は未遂に終わり、こうして生きながらえているというのだ。


そんな少年の体に意識を移された私(17歳)は。



変態である。



少年の体にはきつかったことだろうが、私は正直言ってこの体の記憶を持っているだけであり、彼らとはほぼ全く面識がないのだ。


だから私は今こんなことを考えている。



「無双しよう」



と。幸いにもこの体は魔法や剣術との親和性が高く、基礎魔力も莫大だし、加護やパッシブスキルなど、多岐にわたるものがある。



だから少年の苦しみに耐えながらも全力で生きてやるのだ。



この後、私は家族と話を交えながら朝食を終え、出かける準備を済ませるために再び部屋に戻るのであった。




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