帰り道と記憶

藤咲不可死

第1話 梅雨明け、ソーダ味

 たった2週間の梅雨だった。湿った黒いアスファルトの匂いが残り、太陽光が容赦なく照りつけた。数十センチ右隣を歩くお前。18時だというのにまだまだ明るい。


 コンビニでアイスを手に入れた。俺はガリガリ君ソーダ味。お前はクーリッシュのバニラ。


 しゃくり。音を立てて噛みついた。歯に響く冷たさは、食道を通って腹の中にストンと落ちる。


「ん〜〜まァ」


 ハモった。それだけでなんでだか面白くて、高らかに笑い合った。歩きながら食べると、少しずつ溶けてくるアイス。砂糖の甘く青い汁が手首を伝おうとする。受け止めるように舐めとると、氷の塊が棒から逃げ出しそうになった。慌てて片手で受け止めるが、俺は相当マヌケ面だったんだろう。1秒にも満たない間の後に大爆笑をされた。耳から首がブワリと熱くなる。梅雨明けのせいだ。


 この思い出は1年前。一足先に卒業したお前は今はいないから、俺は一人で帰ってる。俺も、同じ学校に進んだら、また一緒にアイスを食べ歩きしてくれる?


 なんて、女々しすぎるから言わないよ。今は傘の下で肩を濡らしても良いと思える相手を探すから。そしたら自慢しに行ってやろう。ビックリしたマヌケ面を拝んでやろう。その面を見て大爆笑をしてやる。

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