5月31日 シナモンコーヒー
夕方、エマは魔女認定試験に向けての薬草学の勉強を終え、台所にいき温かいカフェオレを作った。エマは苦いものが苦手で、ミルク量を多めにカフェオレを作っている。
エマはカフェオレを自室に持っていき、今日の日記を書き始めようとしたが、まだ片付けられていない勉強机の上の薬草学の教材である香辛料のシナモンが目についた。
シナモンは樹皮をスティク状にしたもので、薪の束のように紐で何本か結んである。結んであるシナモンのうち一本を引っこ抜き、くるくると鉛筆のように回しながら、友人から聞いた話を思い出していた。
―そう言えば、コーヒーにシナモンを入れるとダイエットや美容ににいいって雪子が言っていたな。教材だけど、別にいいよね。一本だけ試してみよう。―
エマは出来立ての温かいカフェオレに、手に持っているシナモンスティックを入れ、ゆっくりと回した。ほのかに香るまろやかなコーヒーの香りの中に、少しづつシナモンの香りが香り始める。
カフェオレの色が少し濃くなった後、シナモンスティックを取り外し、飲んでみた。香りが良いだけでなく、カフェオレの良さとシナモンの良さが喧嘩せず共存している。冷えた体がだんだんと温かくなっていく。
シナモンの香りが自室を満たした後、元町の文房具店で購入した陳腐な赤い万年筆で、銀の装飾がされた青いハードカバーのノートに日記を書き始めた。
5月31日 金曜日 曇り
今日は、中央図書館に本を返した後、自宅で魔女認定試験の魔法法学と薬草学の勉強をした。昨日よりは集中して勉強できたと思う。早く見習い魔女という肩書を捨てなければ、イギリスやイタリアにいる親戚や友人に会いづらい。3浪はキツイ。
明日も今日みたいに頑張り
日記の途中で睡魔に襲われたエマは、そのままシナモンの香りに包まれながら、書き途中のまだインクが乾いていないノートに顔を伏せ、寝てしまった。
エマが夕食前に文字がついた頬を家族に笑われたのは、言うまでもない展開である。
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