迷宮ダンジョン100階層のラスボスに転生したので、気ままにダンジョン支配することにした
葉气
第一章
第1話 異世界転生はダンジョンの中
目が覚めると、最初に目に入ってきたのはゴツゴツとした岩肌
洞窟……のような、けれどそう呼ぶにはあまりに広すぎる空間だ。
だんだんと意識が薄れていって、それから今に至る。これは夢の中なのか。
それに、目線が地面と近すぎるように感じるのは気のせいだろうか。
「…………キュゥッ。……!?」
下を向いて自分の体を確認しようとして思わず変な声が漏れた。
通り魔に刺されたはずの腹の傷が……じゃなくて、なんか肌黒いんですけど!?
腕も全身が黒い肌で覆われていて、それでいて手の指には長い爪がある。
というか、やっぱり小さい。地面との距離が30センチくらいしかないんですけど!?
「キュッ、キュゥゥ?…………!!?」
いや声も変!?
喋ろうとしても思い通りに言葉が口からでない。何を喋ろうとしてもふざけた声しか出てこない。
「キュッ……キュキュゥゥキュッ!!(やっぱり……どう考えても夢だな)」
短い手足に黒くゴツゴツした肌、顔を触れば形状が人間のそれではない。
トカゲ…………いや、ドラゴンみたいなものだろうか。ゲームばっかやっていたせいでそういった、ついにはそういった夢を見るようになったか……。
「──いいえ、これは夢ではありませんよ」
「キュッ!?」
突然目の前に現れたメイド姿の女性。すごい美人……じゃなくて、誰だこの女の人?
「キュキュッ…………キュキュッ!!!(これが夢じゃないわけないだろう!)」
「いいえ、正真正銘現実です。マスターはこことは異なる世界で死に、そして転生したのです」
「キュッ、キュッゥゥゥ!?!?!(なっ……なんだってぇぇ!?!?!)」
まるでゲームの世界そのものみたいじゃないか!
じゃあやっぱり、俺はあんな見ず知らずの通り魔に刺されて死んだのか……
たった33年の人生、自分でもなかなか良い流れでいたと思っているだけに、終わってしまったことに少し残念な気持ちだ。
んん………というか、この美人さん俺の言っていることが分かるのか!?
「キュッキュッ……キュゥ?(こんなんで通じてるのか?)」
「通じてますよ。今はまだ未成熟なため、人語を離すことは不可能なのです。それもじきに可能となるので、ご安心ください」
「キュゥ……(へえ……)」
なんだろう、この体はドラゴンの幼体とかそこらへんなのかな。
「キュゥゥゥ!!キュキュッキュゥ……キュゥ!(いやいや!そもそもこの美人メイドさんは誰なんだよ!)」
転生したら目の前に正体不明の美人メイドさんがいた。そんな題名が無きにしも非ず……
「美人だなんてまあ……マスターにそんなことを言ってもらえるなんて恐悦至極にございます」
「キュキュキューッ!!キュゥーキュッキュキュッ……キュゥゥ!(それだよそれ!こんな優しい美人メイドいるとかなんだよ!)」
「私はマスターのためにあります。どうか、このアリスをこれからよろしくお願いいたします」
とても上品な振る舞いできれいなお辞儀をして見せたその姿は、まさに十全十美たるものだ。
これほどメイド服が似合う姿はアニメでも漫画でも見たことがない。
「キュッ……キュゥゥキュキュウッ(は、葉月です。こちらこそよろしくお願いします)」
「ハヅキ様……とても響き心地の良いお名前です」
「キュゥーキュキュキュッ……キュキュッーキュッ(ああーその呼び方はやめてくれ。いっそマスターでいいから)」
「かしこまりました、マスター」
自分で発した声は自分の耳にも帰ってくる。
俺自身で出している声とはいえ、同じ音にしか聞こえない言葉で何度も喋っているとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。
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