第41話 マリアーヌVSオルト 狂信者


「そこに居るのは聖女マリアーヌ様ではないですか?」


「あら、貴方はどなたかしら? 面識が……えっ!?」


おかしい……目がおかしくなったのかしら。


そうでなければ幻想でも見ているの……


目の前に居るのは『銀嶺の勇者 セレスタン様』にしか見えませんわ。


「僕の顔がどうかしたのかい?」


「え~とですね、私、もしかして死んじゃったのですか?」


こんな田舎街の真ん中で、伝説の勇者が居る訳はないわ。


しかも、数百年前の勇者で、歴代の勇者の中でも尤も美しいと言われた方。


流れるように風になびくシルバーブロンドが綺麗です。


「おかしな事いいますね! マリアーヌ様……死んでなど居ませんよ? どうかされたのですか?」


私、疲労からおかしくなったのかしら……


居るはずの無いセレスタン様が話しかけてくるなんて……


あり得ないわ。


ああっ、なんて神々しいのかしら、この方に比べたらライトなんて勇者に見えないわ。


勇者の中の勇者……そう呼ばれていたのだから当たり前だわ。


気のせいか、後ろに綺麗なバラやユリの花が見えてきます。


「ですが、セレスタン様がこの世に居る訳ありません……」


「あっ、僕のこの容姿のことかい? 僕はセレスタンの子孫なんだ。確かにご先祖様によく似ていると言われているけどね? 僕の名前はルディ、冒険者をしているんだ」


そういう事なのね。


でも、ルディなんて……


「クスッ、でもルディなんてご両親はロマンチストなのですね」


「はははっ、そうですね! 流石にご先祖様のセレスタンの名はつけるのに躊躇ったみたいで、物語からつけたようです」


「それでルディ、私になんのようなの? 声を掛けてきたからには何かようがあるのよね?」


「憧れのマリアンヌ様が目の前に居れば声位掛けますよ? それになんだか困ってそうでしたので……その言ってはなんですか随分窶れているようだったので……」


「そうね……確かに困っているし、窶れてもいるわね……」


「お困りなら、お話位聞きますよ」


「そうね、話しを聞いて……」



『惑わされてはいけません、マリアンヌ』


この声は、女神様。


女神様からの啓示の声が頭の中に降りてきた。


『その者は人間ではありません! 魔族です! 勇者パーティをバラバラにする為に送り込まれた存在です』


『ですが……あの容姿は伝説の』


『それも只の作り物です。 真の姿は別にあります。貴方なら真の姿を見極める事が出来る筈です……正体を暴き……どうやら時間が来たようです……頼みましたよ……マリアンヌ』


そういう事ね……薄汚い魔族が考えそうな事ですわね。


よりにもよって、私の理想の殿方に化けるなんて。


この聖女マリアンヌが討伐して差し上げますわ。


「そうね、話を聞いてくれるかしら? 場所を移しませんか?」


「そうですね」


私を騙した事後悔して死ぬといいわ。


◆◆◆


マリアンヌに連れられて街からでて草原にきた。


聖女だから手古摺るかと思ったけど、案外チョロいな。


堕天使とはいえ元は天使。


魂魄は『聖』だから当然かもしれないけど……


「良くも騙しましたわね! よりによって私の憧れの殿方、セレスタン様に化けるなんて! 絶対に許せませんわ!」


「あっ?!」


まずい、バレている。


「醜い魔族の癖に、私の純情を弄ぶなんて……殺して差し上げます!」


困った……


小娘1人殺すのは簡単だけど、殺したらアリア様に怒られそうだし……それ以上にエルダお婆さんが怖い。


どうにかしないと……


「待って……」


「待ちませんわ、何時までその姿で居るつもりですの! 良いですわ! 私が元の醜い姿に戻して差し上げます! 聖なる光よ……かの者を真実の姿に戻したまえ! トゥルース!」


まずい……女神が手を貸したのか。


人間の魔法如きでとけないメタモルフォーゼが解けていく。


「こうなっては仕方が無い! 聖女マリアーヌ、お前の……どうした? おい!」


「……」


此奴、なんで固まっているんだ。


「……天使様……」


え~と、なに?


目が狂人みたいで怖いんだけど?


「え~となにかな? 私は……」


「天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様、天使様ぁぁぁーー」


いきなり抱きつかんばかりに詰め寄られた。


「そのお姿、天使様ですよね? なんでマリアーヌに理想の男性のお姿で現れたのですか? 教えて頂けますか?」


「その……お前を誘惑しようと……」


「まぁ、そうなんですの? それなら簡単ですわ」


いきなりマリアーヌは服をポイポイと脱ぎだした。


確かに、此処は街道から離れた草原だから人は滅多に来ないけど、外だよ……良いのかそれで……


その前に私は、天使というのは間違いじゃ無いけどさぁ……堕天使なんだけど?


とうとう、最後の一枚パンティにまで手をかけてあられの無い姿になっている。


「え~と……本当によいのか? 私は……」


「構いませんわ! マリアーヌの髪の毛の先からつま先まで全部、天使様の物ですわ……OKですわ! さぁ抱いて下さいまし~」


この目は……狂信者の目だ。


この目をした奴は、拷問しようが殺そうが喜んで迎え入れる。


女神なら兎も角……なんで私なわけ?


まぁ、良い。


完全に失敗したと思ったけど、これなら何とか任務は全うできそうだ。


「まぁ、マリアンヌがそれで良いなら問題は無いけど! まずは綺麗にしような……クリーン」


流石に幾らなんでもこの状態で抱きたくはない。


天使の姿なら問題ない。


人間が使えない、綺麗に体をする魔法『クリーン』を使った。


神と言う者は身だしなみに煩い。


だから、天使はこの魔法をよく使う。


汚らしかったマリアーヌが光に包まれ綺麗な姿になっていく。


「まぁ、やはり天使様って凄いですわね! 一瞬でこんな綺麗になるなんて……折角天使様のお相手をするのに、あの姿なのは恥ずかしかっのですが……これなら幾らでもお相手できますね」


なんだか別人のようだ。


まぁ、本当に都合が良い……


「それでマリアンヌはどっちの私に相手して貰いたい? さっきまでの男の姿が良いのか? それとも今の姿が良いのか? 今の姿の場合は、この状態で生やした状態になるんだけど?」


「天使様の姿も捨てがたいですか、 その、初めてなので男性の方が……嬉しいですわ」


「そう……それじゃメタモルフォーゼ! これで良いのか?」


私は銀嶺勇者の姿に変わった。


「はい……それじゃ……ご奉仕させて頂きます……天使様……あむっ」


此奴、こう言う経験は無い筈だよな?


それがいきなり口に含むか……


催淫剤も使ってないのに……


「マリアンヌ?!」


「天使様、任せて下さい……あむっ、私経験ないですが頑張りますから……」


その後、マリアンヌはさんざん『奉仕』という名のもとにありとあらゆる事をし、最後には私に自ら跨り、快楽を貪っていた。


これじゃ聖女じゃなく性女だな。


◆◆◆


良く、人が通らなかったな……


まぁ、見られて困ることは私には無いけど。


「ハァハァ、天使様……満足して頂けましたか?」


外だと言うのにそんな事を気にしないでマリアンヌは俺の横で今も裸で横たわっている。



「ああっ、それより……良かったの? 僕は確かに天使だったけど、今は堕天使だよ」


「ええっ、構いませんわ、天使様にはかわりませんから」


女神への信仰とか普通はあるだろ……


「本当に? 僕をとると言う事は魔王討伐を辞めて、聖なる武器を捨てると言う事なんだけど……本当に良いの?」


「はい、天使様が言うならその様にしますわ。 それさえ守れば……その天使様のご寵愛を生涯頂けるのですよね?」


「はははっ、まぁね。そうだ名前を名乗ってなかったね。僕の名前は『オルト』だ! 」


理由は解らないけど……まぁ良いや。


人間の寿命は短い。


聖女が堕落して仲間になるなら、数十年位まぁ良いか。


◆◆◆


うふふふ、たまりませんわ。


まさか、堕天したとはいえ天使様に愛されるなんて、もう最高ですわ。


『聖なるものは美しい』


聖女のジョブを授かったときから、私にはそう見えてきました。


銀嶺の勇者セレスタン様の姿も美しかったし、オルト様のお姿は凛々しいを超えています。


美しいお姉さまも銀嶺の勇者様の美しい殿方に愛されるなんて、本当にたまりませんわ。


これ程美しい存在が私を寵愛して下さるなら……女神も信仰も全部捨てて構いませんわ。


これからの、めくるめく日常こそが私の理想の世界なのですから。




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