第28話 魔族SIDE ある意味勇者だな。


俺はどうしてもエルダの事が気になった。


あの父があそこ迄敬意を払う存在……


俺はそんな存在を他には知らない。


まして、宿敵とも言える人物、剣鬼リヒトに魔界の名剣、魔界ソウルイーターを送れなど、考えられぬ。


だから、俺は父上にエルダについて聞いてみた。


「エルダさんについて知りたいだと!」


さん……だと!


これだけで敬意を払っている事が良く解る。


「はい! 父上……」


「お前とも面識はある筈だが、子供の時だから忘れてしまったのか? 」


「俺は会った事があったのか……」


「エルダさんは古代エルフでな、ああ見えて年齢は3千歳を超える。 我が父バルダ―すら、子供扱いしていたから相当前から魔王家とつき合いがあるというのが解っている。かくいう我もそれこそ子供の時に遊んで貰った事があるのだ」


「父上だけじゃなく、その祖父までも子供扱い……ですか?」


「うむ、魔族の歴史書にすら書かれている人物だ」


「ですが、ただ齢を喰っているだけの人物に魔王たる父上があそこ迄敬意を払う必要があるのですか?」


「エルダさんは強い……だが、それ以上に怖いのはその人脈だ」


「人脈?」


「魔族の長である我々魔王家……海においては海王家、そして精霊の王、他にも沢山の知り合いがいる」


「本当ですか……」


「嘘は言っていない。下手したら神とすら親交があるやも知れぬ。エルダさんとはそういう人物なのだよ」


永く生きていると言う事は様々な伝手があると言う事に繋がるのか。


「神ともですか……」


「それは解らぬ。だが、それ位の伝手があっても可笑しくない位の人脈を持っているのは事実だ。それに、我も子供の時からの知り合いだし、血が繋がらずとも、お婆ちゃんみたいな物だから、頼まれたら相当な事じゃない限り断れぬよ! お前は忘れているが、まだ子供だった頃、お前だってあやして貰った事があるのだ。だから『ダーちゃん』呼ばれていただろうが! 我もエルダさんにとって『ルーちゃん』だぞ……今となっては懐かしい話しだが、子供の頃オムツまで替えられた事がある相手だ。強くなど出れぬよ」


オムツ迄替えられた……魔王である父上が『頼まれ事を断れない』のはそういう事か?


魔王に頼みごとが出来る。


それだけで、凄い事だ。


それが海王や精霊の王にも出来るのであれば……


その人脈は力になる。


「凄い……」


「よいか? 我どころか、我が父バルダ―の頭をエルダさんが叩くだろう?」


「なんの冗談ですか?」


「いや、聞け! そうすると『エルダさん、やめてよーー痛いなぁ』で済ませてしまうんだぞっ! 引退して尚恐ろしい我が父がだぞ。 凄いと思わぬか……」


「へぇ~」


エルダさんの話しをする父上はいつもの恐さが無い。


まるで『家族』みたいだ。


「しかし、あのエルダさんが結婚か、しかも相手は勇者パーティのリヒトとはな……今度父と一緒に遊びに行ってみるか? 」


「冗談ですよね?」


俺の問いかけに笑っている父はいつもの威厳に満ちた恐ろしい魔王の姿ではなくただの親父に見えた。


しかし……3千歳とまだ10代の男が結婚したのか……


ある意味『リヒトって勇者』だな。





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