第49話 キメラオーガ製造拠点を破壊せよ1
ゴザリア国がゼピュロス国になり、1年が経過する。
エルフ国も獣人国も復興の目処が立ってきている。
平和はいいな……
ゴザリア国もエルフ国、獣人国も、働き手の男性が大勢亡くなっている。
どの国も人手不足が深刻な悩みだ。
人手不足の解消のため、農業スキルで各国の畑の収穫高を上げてはいるが、やはり働き手が増えなければ上手くはいかない。
子供が生まれ、その子たちが大きく育つまで難しいだろう。
本当に、民あっての国なんだよ。
エメットが結婚することになる、相手は魔王国の王女ミシェルだ。
獣人国と魔王国との関係を深めるためでもあるのだが、神様からアンジェとエメットに、飛行スキルを授けてもらったことを魔王が知り、ミシェルがエメットと結婚すれば、ミシェルにも魔王神から何かもらえるのではないかと思ったようだ。
ミシェルは、かなり勝ち気な女性のようなので、エメットが尻に敷かれること間違いないだろう。
しかし、そんなことはどうでもいい。
とにかく平和が一番……このまま平和が続いてくれればいい……
ドワブ教が消滅し、ユニマ国やエーデリア国が、覇権主義を止めてくれればいいのだが!
まず無理だよね。
残念ながら……
ユニマ国とエーデリア国を見張らせているサイレント部隊から、とんでもない情報が入ってくる。
ユニマ国がドワブ教に敗北したというのだ。
王室や貴族たちが次々殺され、生き残りは奴隷にされているということだ。
原因はエーデリア国のようだ……
ユニマ国はゴザリア国に対して5万の兵で侵攻し、約3万の兵を失っている。
その情報を手に入れたエーデリア国は、これは侵攻の好機と判断し、ユニマ国との国境に大軍を進めたらしい。
国境に迫るエーデリア軍に対抗するために、ユニマ国は王城に2万の守備兵を残し、残りの兵を全て国境に向かわせたという。
まあ、そうなるよな……
その隙をついて……キメラオーガ2000体がユニマ国の王城を急襲したらしい。
主力戦力は国境に向かっており、残った守備兵2万では、王城が陥落してしまう。
エーデリア国も本当に余計なことをしてくれるものだ……
ドワブ教の大司教がユニマ国を支配することになるだろう。
邪教を崇拝する狂信者の国、ドワブ教国が誕生してしまう。
しかも大国だよ。
誰が悪いかといえば、もちろんエーデリア国だろ!
責任取ってドワブ教をなんとかしろよ!
ドワブ教国が誕生したことは、この世界にとってすごく良くない結果を生み出すだろう。
強国だったユニマ国を引き継ぐことで、ドワブ教がさらに強力になる。
潤沢な資金と人材を、惜しみなくキメラオーガ研究に投入できる。
国民の犠牲の上に、キメラオーガの量産がどんどん進んでしまうだろう。
このまま放置すれば、キメラオーガが何万体とかいう単位で製造されてしまう。
ひょっとしたら、キメラオーガとワイバーンのキメラなんかも登場するかもしれない。
そんなのが、数に任せて攻撃してきたら、ドラゴン族でも苦戦すると思う。
このままでは、世界の全てがドワブ教の国になってしまう!
狂信者のやつら、本当に迷惑だ。
どうしたらいい?
とにかく、これ以上キメラオーガを作り出せないようにしないとダメだ。
こんな無茶苦茶な研究をしている研究者と製造拠点をすべて壊してしまおう。
サイレント部隊から……さらに良くない情報が入ってくる……
エーデリア国が、ドワブ教のキメラオーガ軍と交戦中、相当苦戦しているようだ。
いったい何をやっているのだろうか。
ユニマ国がドワブ教に敗北したことを知っているはずなのに、そこから何も学んでないのかな。
ドワブ教に対する準備を何もしてなかったのだろうか?
呆れる……腹が立つ……迷惑な奴ら……
しかも、こともあろうかエルフ国に救援を求める使者を送ってきているそうだ。
獣人国やエルフ国にあんな酷いことをしておいて、どの口が救援を求められるのか?
何なのだ、馬鹿なのか……
現在エルフ国には、王が招集した獣人王や魔王、ゼピュロス国王、各国の将軍たち、レッドにアンジェ、エメット、アリスが集合している。
集まった王たちが怒り狂うかと思ったのだが意外と冷静だ。
エーデリア国がダメすぎ、呆れて怒る気も失せたというところだろう。
俺から話を切り出した。
「これまでの経緯を考えても、エーデリア国からの救援要請にまともに対応する必要はありません。エーデリア国など、この世界から無くなっても構いません。ただし、エーデリア国を助けるよりも優先することがあります」
「ドワブ教が放置できないほどの脅威になってきています。狂信者どもは大国であるユニマ国を手に入れました。国民を犠牲にし、潤沢な資金と人材を惜しみなく投下することで、キメラオーガを何万体も製造してしまう可能性があります」
「ひょっとしたら、キメラオーガとワイバーンのキメラの研究もするかもしれません。そうなればキメラオーガが空を飛ぶようになるかもしれません。さらに厄介な敵になってしまいます」
「もはや、狂信者どもはこの世界の脅威になってきています。このままでは、この世界全てがドワブ教という狂信者の国になってしまいます。とにかく、これ以上キメラオーガを作り出せないようにすることが最重要です」
突然、時間が止まった用に気がした。
「やっとドワブ教と戦う決意をしましたか?」
俺の頭の中に女神様の声がしてくる。
「女神様! 戦うも何も……キメラオーガを作り出している製造拠点の場所が分かりません」と頭の中で念じる。
「あなたに渡してある地図に、製造拠点の場所を記しておいたわよ! そこにはキメラがうようよいるわ! あなたに授けた剣聖スキルを、取り敢えず剣神スキルに格上げしておきましたからね」
「あなたに協力する人たちの魔法やスキルのパワーを、一時的に10倍にし、防御力も10倍にすることができる『強化スキル』もあなたに授けておきますね。足らなければ、あなたにスキルでも、パワーでも、ほしいものを何でも追加するわよ。邪神ドワブに負けないでね!」
「ちょっと待って下さい! 邪神とは神様たちが戦うのではなかったですか?」
「レッドとグレーがいるから大丈夫だと思うわよ。頑張ってね!」
女神様……いなくなったな。
というか、逃げたな……
無茶苦茶だ……
俺を邪神と戦わせる気なのか……神だぞ……勝てる訳ないでしょ!
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