第22話 エルフ国を救え2

アンジェから魔王国での話を聞いた王は、大急ぎで親書を書いている。

親書を書き終えた王から、親書を魔王国に届けてほしいと頼まれる。

もちろん親書を携えた王妃も同行する。


俺たちは、王妃とともにレッドの背に乗る。

皆で魔王国にとんぼ返りだ。

レッドに運んでもらっていると、エルフ国と魔王国は直ぐ近くにあるような気がしてくる。


魔王国に到着した俺たちは、魔王に正式な謁見を申し込む。

謁見の場でエルフ国の王妃は、魔王に食料のお礼を伝える。


エルフ国の王からの親書を渡すとともに、魔王国が人族に攻められることがあれば、エルフ国が命をかけて魔王軍と共闘することを、エルフ国王の代理として魔王国に対して約束する。


俺は謁見での作法など何も知らないので、横目でアンジェを見ながら同じ動きを真似る。

レッドは超越した存在なので、ゆったりと立ったままだ。


その後、フウタが魔王にエルフ国を助けてほしいと頼んだ話や、アンジェをフウタが助けた話などを、30分程話をする。それで謁見は終わりだ。


再びレッドの背に乗りエルフ城を目指す。


「レッド、何度も飛んで疲れただろう。本当にありがとう」

「魔力で飛んでいると説明しただろ。しかも私の魔力量は無限大、疲れなど無縁だ! その辺の鳥と一緒にしないでくれるか!」


「レッドドラゴン様! フウタ様! ゴザリア国でアンジェたちを助け、またエルフ国も救って頂きました!本当にありがとうございます。食料を魔王国に戻す件については、エルフ国が魔王国に必ず戻しますからご安心下さい」と、王妃が笑顔で感謝してくれる。


母親としては、娘が無事で生きていてくれたことが一番うれしいのだろう。


しかし、なぜ獣人国やエルフ国に、連合軍が攻め込む必要があるのだろう。

戦争がやりたいのなら人族同士でやっていろよ…… 

人族がますます嫌になってくる。


「アンジェの夫として、当然のことです」

「私はフウタの妻だし、面白いからやっているだけだ。王妃! 気にしないでいいぞ」


遠くにエルフ国が見えてくる。

今度はエルフの島の周りを大きく旋回してもらった。

敵軍の様子を知っておきたかったからだ。

特に港がどうなっているのかが重要だ。


城の中庭では、兵も民も全てのエルフが、手を振って歓声をあげている。

民の表情が明るくなったな。兵の目にも生気が戻ってきている。


「レッドドラゴン様! フウタ様! 王として、そして国民を代表してお礼を申し上げます! エルフ国を救っていただいてありがとうございました。そして娘もお救いいただきありがとうございました」


「アンジェの夫として当然の事をしただけです。エルフ国が連合軍に侵攻されるのを、黙って見過ごすことはできません!」


「フウタ様は人族なのに、人族を敵に回していいのですか?」


「俺は異世界から来ました。この世界に人族の知り合いは殆どいません。それに、この世界の人族の王はまともではありませんよ。人族ではありますが、エルフ国や獣人国、魔王国の味方をしたいと思っています」


「それは心強い。しかし食料は確保していただいたものの、大軍に包囲され我が軍が不利な状況であることは変わりません。ご助力を賜りますようにお願いいたします」


「俺はアンジェの夫であり、あなたの息子となりました。公な会見以外では、親子としての会話にしませんか。今後のことをいろいろお話したいです」


「そうだな。いずれにしても、これからもよろしく頼む」


「この苦しい形勢を逆転しましょう。その話を始めてもいいですか」

「そんなことが可能なのでしょうか!」


「さっそく明日の朝から反撃を開始しましょう。今晩は、将も兵も食料をしっかり食べて英気を養ってもらうのがいいでしょう。食べるなら新鮮な野菜もあった方が元気も出ると思います。ここに野菜も植えましょう。アンジェ、適当に頼む」


アンジェが種を蒔いてくれたので、マジックバックで水を掛けていく。

芽が出て枝が伸びて、野菜や果物がどんどん実っていく。

新鮮な野菜や果物がなかったみたいで、周りからさらに大きな歓声が上がる。


「この魔法の木から、美味しい野菜や果物が実ります。枝を傷めないで丁寧に収穫して下さい。収穫すれば、直ぐに次の野菜や果物が実ります」と、アンジェが皆に説明をしている。


俺たちは、王と王妃と共に宮殿内に移動する。

食料が補給されたためか、宮殿内の人たちの動きもキビキビしている。


俺たちは饗応の間で、王と一緒に夕食を食べている。

材料さえあれば宮廷の料理人の腕は一流だ。出される料理がすごく美味い。

ゼピュロス村の話をしながら楽しく過ごすことができた。


夕食を食べ終わった後、王にこれからの作戦を提案したいことを伝えた。

そのために、エルフ国の主だった人たちを集めてもらう。

もちろんレッドもアンジェやエメットのいつものメンバーは一緒だ。


「フウタ殿! 主だった者たちを集めた。提案したい作戦とは、どのようなものであろうか」


集められた将軍たち、外交や内政を担当する者、侍従長、騎士団長クラスが俺に注目する。

ドラゴンを妻にしているということで、全員が一目置いてくれているみたいだ。

俺に期待する視線が痛い。


「フウタと申します。俺は人族ですが、縁ありアンジェ王女の夫となりました。エルフ軍のために命を賭けて戦うことを神に誓います。まずは俺を信用していただきたい」


集まった将軍たちの顔を見る。疑っている者はいないようで安心した。


「提案したい作戦は簡単なものです。エルフ軍が有利、連合軍が不利という、現状と正反対な状況を作り出しましょう」


「そのために連合軍の船と食料を焼き払います。食料がなくなり、食料の補給が絶たれれば、敵兵の多さが仇となるはずです」


「その状況を作り、エルフ軍はひたすら守りきればいいのです。ただし守るのはずっとではありません。食料がなくなった当初こそ、連合軍の攻撃は激しくなりますが、わずか数日の辛抱だと思います。そのうち、飢えた連合軍が降伏してくるはずです」


「先程、上空から城外の様子を偵察しました。連合軍は食料を港の近くに山積みにしています。大軍であるが故の油断ですね。大油断です! 彼らが致命的なミスを犯したことを思い知らせてやりましょう」


昨日まで食糧不足で、エルフ軍の敗北を覚悟していた将軍たちの顔に生気と闘志が戻ってくる。


「エルフ軍の中で船の操作ができる兵士あるいは民間人はどれだけいますか?」

「エルフ国は島国だ、1000人はいると思う」と1人の将軍が答えてくれた。


「食料を積んだ船も、軍船も奪ってしまいましょう。鹵獲対象船舶は、港と沖に停泊する船の全てです。奪えない船は燃やしましょう。これが作戦の大筋です。頭に入れておいて下さい」

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