ピンチ!

怠け蟻

暑い、臭い、下水トンネル

 やばい、死にたくなってきた…

 空気の通りはない。吐く息よりも吸う空気が熱い。ねばねばした空気がのどにこびりつく。兎にも角にも不快。救える点は生まれて初めての爆音の耳鳴りが子気味いいことと、さらさらの血が脈打つ左の腕が全然痛くないこと、ぐらいかな。5リットルぐらい汗をかいた気がする。体が軽いし、下水の方が圧倒的に臭いから、もはやかなり気分がいい。うん、気分がいいな。決められそうだ。


 心臓のリズムに合わせて足音が響いている。寝てたのか。寝る前と比べて重力が3倍になっているように感じる。瞼の重さは、いやこっちも3倍ぐらいか。足音の距離感が全くつかめない。畜生、耳鳴りなんか全然子気味よかねえよ。最低に不快だよ馬鹿野郎。心音しんおんはもういいから足音聞かせろよ。ああ、もう。

「」

「なんだよ。」

「」

「くっっっっっ。はあ、ったいたいたいたい! ってえなあ!」

「うるせえな。」

「は、はは。喋れんのかよおい。結構焦げてる系のイケメンだから日本語知らねーのかなーって、思ってたとこだったよ。」

「お前さ、何回死にてえんだ。」

「死にたかねーよばーかうぅっ。ごめ。でもどうせ殺すんなら土産話でも聞いてけよな。はあ、なんだっけ、多分お前の友達にな、リボルバー渡されてよ、多分相手ミスったんだよな。馬鹿だよなどうせ、ヤクザの下っ端やってる奴なんてうぁっっ、くはっ。んなあ悪いって。ンで田舎道でさ、なかなかダセえやつがベンツなんか乗ってっから面白くてさ、夜だったからタイヤぶち抜いてやろうと思って打ったんだよ。そしたら見事に外れるし、反動で親指は捻挫するし、ガチ目にイライラしてさ、もう打ちまくってたんよ。で、忘れてたけど乗ってたのはタクシーで、脅して運んでもらったけどな。でもやっぱまだイライラは収まんなくてさ、遥々割と都会まで来たってのにな、おめえらが目の前でいちゃラブしてんだよ。むかついたよ。」

「」

「男はかなりごつくて男前でさ、んなのに女は体は無茶苦茶いいのに顔はちょっとぶs


「」

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ピンチ! 怠け蟻 @tetsuie

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