青春三角雨模様 ～恋句二十景～

春、梅雨、そして夏……

桜雨（さくらあめ）初恋（はつこい）散（ち）らし頬（ほほ）つたう

　桜（はな）散（ち）るも残（のこ）り香（が）胸（むね）に残（のこ）し置（お）く

　春愁（はるうれ）うまなざし追（お）えばせなばかり

憧憬（あこがれ）も彼方（かなた）へ流（なが）す若葉雨（わかばあめ）

　梅雨寒（つゆざむ）も傘（かさ）は離（はな）れて帰（かえ）り道（みち）

走（はし）り出（だ）す想（おも）いは知（し）らず五月闇（さつきやみ）

傘（かさ）を閉（と）じ愛（め）でる紫陽花（あじさい）万華鏡（まんげきょう）

夏暁（なつあけ）の雨（あめ）厭（いと）わず駆（か）ける同級生（あなた）

心（こころ）揺（ゆ）れ風待月（かぜまちづき）のたそがれに

夏休（なつやす）み友（とも）の誘（さそ）いはお節介（せっかい）

　夏（なつ）の海（うみ）目（め）が眩（くら）むよな紺碧（こんぺき）で

にわか雨（あめ）取（と）り残（のこ）された荷物番（にもつばん）

　白（しろ）いシャツ渡（わた）し呟（つぶや）く「やまないな」

雨音（あまおと）が響（ひび）くパラソルふたりきり

　鳴神（なるかみ）に震（ふる）える君（きみ）に恋（こい）しとよ

寄（よ）せられて返（かえ）せず静寂（しじま）夏（なつ）の波（なみ）

夕凪（ゆうなぎ）にそぞろ恋草（こいぐさ）たよりなく

　徒恋（あだこい）の背（せ）を押（お）す祭囃子（まつりばやし）かな

　通（とお）り雨（あめ）差（さ）し出す傘（かさ）に重（かさ）なる手（て）

「そばにいて」絡（から）める指（ゆび）や秋（あき）近（ちか）し