第19話 Battlefield
『ついったずら(着きました)。』と権田が言うまでもなく、その現場は見るからに戦地だった。敵味方見分けのつかぬ業火や雷などを全身に纏った戦士たちが、放射状にビームを放って攻撃したり、エネルギーバリアを広げて攻撃を防御したりしていた。少しでも、飛び火でもしようものなら、瀕死になりそうな火力である。
とそこへ。『ごんしゃん(ごんださん)!くなんし(来てくれ)!くなんし(来てくれ)!』という者がやってきた。耳に入ってきたショタっぽい音声に反して、坊主頭の洋ナシ体形の中年が身体のサイズに合わないシャツを着て、腹をはみ出させている。見かけで決めては失礼ではあるが、とはいえ見るからに、知的に障害の所見のある人物だろう。目上の人物に対して、礼儀をわきまえない言動や、初めて来たばかりの物に会釈もしないあたりから、それが伺えた。
『おうな(はい)。わかりもす(わかっている)。待ちんさい(待ちなさい)。大和。』と権田は言い、マクラーレンセナのフロントバンパーにある荷物入れから医療キットを取り出し、大和という男を追いかけた。おそらく負傷者だろう。状況を察するに間違いはない。
宙を舞う激戦の炎による蜃気楼を潜り抜けて大和と権田の後に続くと、いきなり強烈な映像に見舞われた。全身が煤のように焼けただれ、瀕死になっている男がいた。常識的に見て、絶対に助からない容体だ。
『近づくんじゃなか(離れていなさい)。おいの仕事ばい(私のしごとです)。』と権田は言って、医療キットとみられる箱の中から風呂敷のようなものを出して、負傷者がすっぽり隠れるように掛けた。そして、権田がその風呂敷に手を掛けてマジナイをかける。
『あかもぶしけぼだいけもすけるほばすえおてかみもまえくいもばぜてえほずもかりもてねいくだみてもをくおてみもえつりてさがりてもうえゆいきもあし!』と言ったかと思うと、風呂敷が負傷者の腹から突風が出たように飛び上がり、権田のもとに落ちて来た。かと思うと、傷一つない男が目の前にいた。『あんがと(ありがとう)!ごんだっつあん(権田さん!)!』と言って彼はまた戦地にかけて行く。徳山には目もくれない。
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