ともしび。

御願崎冷夏

第1話  ともしび。



わたしはあんまり

ことばをもってない


みんなみたいに

たくさんもってない


ほんのいくつかしか

さいふにはいっていない


わたしのことばは

ときどきさいふをとびだして


じぶんかってに

あちこちをたびしたり


いろんなひとに

いたずらをしたり


ねこといっしょに

ちょうちょをおいかけたり


きまますぎるので

さいふはすぐにからっぽになる



むいちもんで

からっぽになったわたしは

なぜかじぶんをすがすがしくおもう


もうこのまましんでしまうのが

いさぎよいともおもう


けれどやっぱりさみしくなって

ひざをかかえてないてしまう


いつまでもないて

めがはれあがって

しんでしまえなくておなかもすいてきて


そんなとき

むいちもんのわたしをみて

だれかがことばをそっと

わたしのさいふにいれた


みおぼえがありすぎて

すっかりわすれていたことば


しろいごはんみたいに

あたたかくひかることば


わたしをみちびいて

わたしをいかすことば


おかえりなさいという

ともしび



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ともしび。 御願崎冷夏 @uganzaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ