RDW+RTA+ADV ~鈴木の大冒険(アドベンチャーゲーム)~

相生蒼尉

第1章

1 プロローグ 鳳凰暦2020年8月8日 土曜日 地獄ダンジョン12層ボス部屋扉前(1)

※前書き、失礼します。

 鈴木の大冒険はRDW+RTAの最終章となります。前作までお読みになっていない場合は内容が分からないのでご注意下さい。


 次の話から毎朝6時更新となります。


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 前作、前々作、前々々作は以下となります。


第1章及び第2章

『RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330655674198261


第3章

『RDW+RTA +SDTG(T―SIM) ~鈴木の育てゲー(育成シミュレーション)~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330658647006780


第4章

『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330658680113669



それでは本編をお楽しみください。


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1 プロローグ 鳳凰暦2020年8月8日 土曜日 地獄ダンジョン12層ボス部屋扉前(1)





 俺――築地益男は今、地獄ダンジョンの最深部である12層のボス部屋の前にいる。ここの扉の豪華さだけがこのダンジョンの雰囲気に合わないのは本当に不思議だ。


「アタック予定時刻まで、あと15分です。準備、確認を」

「装備チェック。水分補給も忘れるな。始まったら休めないぞ」


 今、ここには複数のクランの主要メンバーがそろっていた。ギルドからの精鋭もそこに加わっている。


 陵竜也の『竜の咆哮』をはじめとして、国内トップクラスのクランのうち、平坂を中心に活動しているところはほとんど集まっていると思う。


「……麗子。本当に2回目の方でいいのか?」

「陵……何度確認しても変更はないでしょう? もうブリーフィングも終わっているのだし」


 陵竜也が話しかけているのはギルド職員の宝蔵院麗子だ。


 こうして直接、目にするとよく分かるが、陵竜也は間違いなく宝蔵院に執着している。


 今も、宝蔵院のキャリーを自分のパーティーで引き受けたいから、宝蔵院に確認しているのだ。

 少なくとも俺が知ってるだけで7回は確認しているというのが……何というか、こいつ、本当にあの陵竜也か? 日本ランク1位の?


 ……地獄ダンジョンでのレアボスの出現という情報が流れて、その結果として地獄ダンのボス戦は原則として禁止となってしまった。

 もちろんダンジョンアタッカーは原則として自己責任なので、勝手に挑んで勝手に死ぬのは問題ないのだが。


 はっきりいって全部、鈴木のせいだな、これ。2個も属性魔石でボス魔石を持ってくるとか、どうなってやがる……。


 ギルドは陵竜也のクランである『竜の咆哮』へと調査依頼を出した。当然だが、指名依頼だ。地獄ダンのレアボスともなると、現状で確実性があるのはそこしかない。


 ただ、そのタイミングでクラン『竜の咆哮』は、陵たちのトップパーティーと、その補佐を務めるセカンドパーティーも平坂第1ダンジョン――通称の『黄泉の国』の方が知られている――へと間引き依頼で突入していた。


 サブクランマスターの下神納木鳴――実質的なクラン運営は下神納木がやってると言われている――は、調査依頼を引き受ける条件として、日程を遅らせることと複数クランによる合同アタックで行うことをギルドに提案した。


 ギルドはそれを了承して、その代わりギルド職員のボス戦キャリーをこの合同アタックに押し込んだ。それが今の状態になっている。


 ギルド側が選んだキャリー要員は宝蔵院麗子だった。


 宝蔵院の現在の年齢と、今後の活動期間を考慮した結果と言える。

 そもそも宝蔵院がDランクに到達済みで、地獄ダンジョンのボス戦によるボス魔石のみが必要だったことで今回は宝蔵院が選ばれた。

 ギルドとしては当然の人選だろう。


 一応、俺もキャリー候補だったらしいが……年齢的に3番目か、4番目くらいだったと聞いた。別にCランクになりたい訳じゃないから、どうでもいいんだが。


 ……たぶん、釘崎を通して鈴木に頼めば、すぐにCランクには手が届く。必要があるんなら、そうすればいいだけだ。


 ただし、俺も合同アタックメンバーには選ばれて、今も扱き使われている。俺もDランクなのだから、それも仕方がないのだろう。


「やっぱ、俺が2回目の方に……って、いてぇな! 何すんだ、北見ぃ!」


 宝蔵院にしつこく話しかけていた陵が張り倒された。陵の後頭部をバシンと叩いたのは陵のパーティーメンバーのひとり、北見愛良だった。


「サギ。うだうだ言ってないで、アンタはとっとと準備しなさいよ。心配しなくてもレイコはわたしが守るし、そもそもレイコに心配とかいらないでしょうに。信じてないワケ?」


「……私はそこまで鍛えている訳じゃないのだけれど。あまりダンジョンにも入らないのだし」

「槍を持ってるレイコは、わたしだって今でもあんまり相手にしたくないと思う存在だけど?」


 宝蔵院の高校時代のことはくわしく知ってる訳じゃないが、Aランクの北見にここまで言わせる力量だと考えるとかなり強いんだろう。

 ただ、宝蔵院の力量がどの程度なのかはともかく、高校時代に宝蔵院が陵と組んでいたという話はギルドでは有名だ。知らない者はいないくらいに。


 北見は陵のケツに蹴りを入れて追い払うと、宝蔵院の隣に並んだ。

 ダンジョンアタッカー募集のポスターにしたらいいんじゃないか、と思うような美女ふたり。絵になるのは間違いない。


「それにしても……まるで同窓会よね……」

「それは……確かに……」


 このふたりがそう思うのも仕方がない。合同アタックを推進した下神納木は、黄金世代と呼ばれる陵の世代をここに集めたからだ。


 陵竜也のクラン『竜の咆哮』は当然として、赤阪御剣と宮本虎次郎のクラン『刀魂』と、ギルド平坂支部の支部長である能美が結成して黄金世代の剛力三太が引き継いだクラン『力押し』がここにいる。


「まあ、地獄ダンのボス戦だと、こういう布陣はアリよね」

「援軍が少なくなるって話かしら?」


「今回、ボス戦は4回で、そのうち2回がウチ、あとは赤阪のとこと、剛力のとこが1回ずつでしょう? ギルドの協力もあるから、12層のオーガを蹴散らして、ボス戦はじっくりと戦えるわね」

「私、地獄ダンのボス戦は初めてなのだけれど……」


 地獄ダンのボス戦は、ボスの取り巻きのオーガが複数、出てくる。その数はそれまでの12層のオーガをどれだけ倒しているか、で変化するのだ。

 また、時間が経過すると取り巻きの援軍が出てくるのだが、これも12層のオーガをどれだけ倒しているかで数が変わる。


 今は、ほとんどのオーガを狩った状態で待機中になっている。

 地獄ダンのリポップタイムのギリギリまで待ってボス戦に挑み、取り巻きの数を少ない状態にする。

 その間にこっちはまた12層のオーガを狩り始めることで、援軍のオーガの数も少なくするという戦法だ。合同アタックの利点を活かす形だといえる。


 ……釘崎の話だと、鈴木はこれを3人でやってのけたってことになる。いや、釘崎はキャリー扱いだと考えるんなら、実質2人でやったのか。


 高校1年生だというのに、鈴木は本当にありえないな。いろいろと見たから、ありえないって思う話もそのまま信じるしかないんだが。


「レイコなら大丈夫だって。今日は槍なんだし」

「槍だと大丈夫なの……? アイラの言っていることがよく分からないのだけれど……?」


 ……これ以上は聞き耳を立てていても、大した情報は入らないか。それに恋バナでも始まったら居心地が悪いしな。





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