第40話 揺れる提灯が綺麗だった
雲ひとつない夜空に星がきらめていた。
今日は、近所の神社の夏まつりだった。
露店と花火大会目当てのお客さんで
いっぱいになっていた。
梨花は浴衣を着て、鳥居の前で朔斗を待っていた。
近所に住んでいるのに、現地集合と言われた。
何が起きるんだろうと前日から眠れなくて、
目の下にクマを作っていた。
手に持っていたのは和柄パッチワークの巾着袋だ。
浴衣は白に紫のアヤメの花が描かれている。
髪型は下にたらんとさがる可愛いかんざしを
つけていた。
後頭部をぽりぽりとかく。
最近はセミロングの髪を下ろす梨花は、
今日はうなじを綺麗に見せようと
お団子をつくってアップをしていた。
近くを通る同じくらいの学生にチラチラと
二度見されていた。
何で見られるんだろうとドキドキしていた。
朔斗は仕事で忙しい母の代わりに
祖母に頼んで甚平を着ようと慌てて
買い物に出かけた。
そのために現地集合にしていた。
ちょうど良いものが見つかり、急いで自宅に帰り、
着替えて、草履に履き直した。
梨花が待つ、神社の鳥居まで駆け出した。
途中、家の鍵とスマホを持ってくるのを忘れていたが約束の時間を守ることに必死だった。
財布だけは忘れず持っていた。
待ち合わせ場所になかなか来ないのを梨花はスマホで確認しようとすると、声をかけられた。
「栗原?
あれ、彼氏はどうしたん?」
クラスメイトの広大だった。家族と一緒に訪れていた。兄弟が多い広大は小さい弟たちの世話を
していた。
「広大くん。こんばんは。
小さい弟いたんだね。
可愛い。」
「ああ、小学生になりたてだけどな。
ほら、挨拶して。」
「こんばんは。龍之介です。
おねえちゃんだれ?」
「えっと、栗原梨花です。
かわいいね。挨拶上手。」
梨花は龍之介の頭をなでなでした。
遠くに進んでいる他の兄弟が手を振っている。
「あ、やばい。
あっちに母さんたちが。
ごめんな、そろそろ行かないと、
朔斗によろしくな。」
「あ、うん。わかった。」
梨花は手を振って別れた。
すると、後ろに気配を感じた。
ぬっと朔斗が後ろからあらわれた。
「なあ、なんで、小さい子の頭撫でるんだよ。」
「え、朔斗見てたの?
何で声かけないのよ。広大くんでしょ!」
「休みの日くらいあいつには会いたくないよ。
学校にいるみたいだろ。」
「いやいや、クラスメイトじゃない。
変な考え…。
甚平着たんだね。似合ってるじゃん。」
「え、いや。そのー、
梨花の方が可愛いし…。」
後頭部をぽりぽりと、かきながら
恥ずかしそうに褒めていた。
「ありがとう。
お世辞でも嬉しい。」
「お世辞じゃないって.」
「ほら、行こうよ。朔斗。」
「ばか!俺がリードするに決まってるだろ。」
朔斗は梨花の手を握って、神社の鳥居をくぐった。
たくさんの提灯が並べられた露店をひとつひとつ
丁寧にべったりと隣同士見て回った。
いろんなお店がたくさんあって、
どこで何しようか迷っていた。
今は手をぎゅうと握り返す朔斗の手の動きが
気になった。
心臓の音が早くなる。
いつも以上優しい朔斗にドキドキがとまらなかった。
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