第43話 だいたいノンフィクション

「ねえ。もし私が好きだって言ったら、どうする?」


「え?」


 え?


 真っ暗な公園。街灯を背に、彼女は突然そう尋ねてきた。彼の心臓は、不意打ちを食らったように跳ね上がっただろう。まさか、こんなところで、こんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。

 言葉が喉につっかえ、上手く出てこない。彼の動揺は、彼女にも伝わっているようだ。彼女は、少しだけ顔を赤らめながら、彼を見つめている。

 

 彼女は「ずっとね……好きだったんだ」と言った

 

 彼は「そうだったんだ……」と返すのが精一杯のようだ。





 そうっだったんか……


 あー……いや……高校生が……カップルで来たと思ったら……

 

 女の子が急に告白しよった……

 

 あのな。暗くて見えんかもしれんが……隣にオッサンナカナカカナがおるで?


 え? これなに? どうしよう…… 

 

 仕事帰りに催して公園のトイレに寄ったついでに、ちょっとタバコ……と思ったら……(禁煙区域と違います)

 

 高校生の男女の甘酸っぱいイベントが始まりよった。

 

 いや……確かに暗いけどさ……タバコの匂いとかさ……分かるでしょ? 人いるなーってくらい。

 

 あれなん? 恋は盲目だからなの? 暗くて見えんにしても、嗅覚までやられとんのか、お前ら。恋は五感全部殺すんか。おいコラ。

 

「ビックリした?」

 

「ビックリした……」

 

 ビックリした。さっきまでウ◯コしてたオッサンの隣で、そんなこと言うたら普通ビックリするやろ。

 これ、なんなん?

 このイベント終わるまで帰るなってことなん?

 お前らもう22時前やぞ! はよ帰れや!

 

「あのさ……返事……聞かせてくれる?」

 

 ウソやん……

 おい。やめとけや。お前らの青春の1ページにオッサン巻き込むなや。記念写真に知らんオッサンがちょっと写り込むってレベルとちゃうぞ。

 オッサンもう行くから! 行ってからやってくれや! 行ってからチュッチュせーや!

 いやー……もう……でも、もうあれかー……

 

 止まらんか!

 

 若さゆえにノンストップか!

 

 あ、じゃあもうアレやわ。オッサンもう

 

 ゴホンッ!

 

 ってするわ。ゴホンッってして

 

「あ。人いたんだ。ハッズ!」「ちょっと悪いことしちゃったねー」


 的な? 展開になるやろ。

 多分。

 知らんけど……

 じゃあ……いこうか……ゴh……


「ゴメン。オレ好きな人がいるんだ」


 ほ……


 ほげええええええええええええええええ!!


 はぁっ!? はぁあああ? フラれ……え? フラれた? フラれたの?

 ウソだろ……

 男にそんな権利があんのかよ!? ねえよ! ハゲ! どうせ未来ハゲるくせになにが「ごめん」だ。ぶっ殺すぞボケ!


「そっか……ご、ごめんね……私……帰る」


 ダッと彼女は背を向けて走り出した。彼は追うこともせず、ただ下を向いて俯いていた。


 いや。帰れ。

 お前も帰れ未来ハゲ。

 一丁前に黄昏れんな。黄昏れるくらいならフルな。追いかけろ! 追いかけて「やっぱ付き合うー♪」って底抜けに明るく答えろ。


 カンカンカンカンカンカン……


 近くの踏切の閉まる音がする。


 こ、これだ! この音に紛れてオレはこの場を去る!


 あばよ少年!


 ガタンガタン……


 カンカン……


 ま、まさかの1両編成。すぐに公園には静寂が訪れ。

 残されたのは少年の前に仁王立ちになったオレ。

 少年はコチラを見て


「え……あ……うわ〜……」


 と声をあげた。

 だが……違う……

 オレじゃない。オレの後ろを見ている。

 え? と思い振り返ると、そこには肩からかけたタオルを口に入れモムモムしているおじいさんがいた。


 なんで急に、そんな話になるの? と思うでしょ?

 でもしょうがないんですよ。居たんだから。


 おじいさんは口に入れたタオルをペッと吐き出すと。


「お前……セックスしたくないんか?」


 と言った。


 はぁ?


「お前ぇ! セックスしたくないんかぁあ!」


 ジイサンは叫んだ。急に現れたジイサンは大変ごもっともな主張を終えると再びタオルを口に含みモムモムし始めた。


 黙る3人。


 オレは少年にのみ会釈をして帰った。よく分からんし……

 まあ、気持ちは分かるけど…青春って、そういうもんじゃねえだろジイサン…


 あの後どうなったんだろう……

 

 っていう、内容の濃い11月14日でしたが、皆さんはいかがお過ごしでしたか?

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