第39話 最近休業中だった理由です

 空間をつくったんですよ、このくらいの。

 アスファルトと頭の間にこう10センチくらいの。空手の試し割りにときどき使われるトリックといっしょですよ。石と下の鉄床との間を少しだけ空けとくんです――。

 そうして叩くと素人でも割れるんですわ。結局鉄で叩いてることになるわけですから。

 

 『刃牙』より

 

 河原にて。子供達にいい所見せようとして……

 

「お父さん。この石、素手で割れるんだぜぇ」

 

 と上記の刃牙の技思い出して、子供達の前で披露したんですよ。

 

「だりゃ!」バキャッ!

 

「凄い割れた!」キャッキャ

 

「ふふ。凄いだろう」

 

「もっかい! もう一回やって!」

 

「いいだろう。見てろよー……だりゃ!」バキャッ!

 

「凄い! 凄い! 石が真っ二つだ! 凄いや! お父さん! もう一回! もう一回!」

 

「はっはっは! いいだろう! いいだろう!」

 

 

「だりゃっ!」バキャッ!

 

 

「せいっ!」バキャッ!

 

 

「うりゃっ!」バキャッ!

 

 

「凄い! 凄い! 凄い! もう一回! もう一回!」

 

「いや……もういいんじゃないか?」ズキズキ……(くっ……手ぇ痛ぇ……)

 

「嫌だ嫌だ! 最後! 最後コレ!」

 

 そうして息子が出して来た石は「岩じゃん」ってくらいの石でした。

 

「岩じゃん」ズキズキ

 

「そう! 岩! 岩割って!」

 

「ええ……じゃ、じゃあこれマジで最後な」ズキズキ

 

「うん!」

 

「はあああああああ!だっしゃっ!」バッキャッ!

 

「凄い凄い凄い! 割れたよお父さん!」

 

「うん。そうだな割れたな。もういいいだろ。帰るぞ」ズキズキ

 

「うん!」

 

 子供達は大喜び。私達家族は帰宅の途についたのです。

 が……手が痛いんです。車中でハンドルを握ってる私の手が……火を浴びたかのように痛く熱かったのです。

 

「お父さん凄かったね! スーパーヒーローみたい!」

 

「ははは……そうだろ……お父さん空手やってたしな」ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ……(くぅ……痛い……痛いよ。手が……手がぁ……)


「お父さん! 次は鉄割ってよ!」


「鉄。鉄かぁ……まあ、また今度な」ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ……(うう……ダメだ……痛い……ねえよ。またなんてねえってんだよ!痛くてハンドル握ってられん……ぐぎぎ)



 帰宅



 風呂で……


(い、痛い……めっちゃ真っ赤になってる……)



 就寝……


(い、痛くて寝れん……熱い! 手が熱い! )



 職場で……


「あの……ナカナカさん。右手、倍くらいになってません?」


「……。」



 まあ、忙しいってのもあったんですが…


 手の骨にヒビいってた。

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