第26話 熊たち3

 それから何日後かの午後。レッサーさんからジャイアントパンダ君と一緒に、この間のファミレスに呼び出された。

 

 なんの用だろう?

 レッサーさんは「じゃあシロクマのヤツちょっとシメとくから」と言われ解散になったのだが……

 レッサーさんがシロクマをどうこう出来るビジョンが浮かばない……

「やっぱ無理だわ。ゴメンね」とクリクリお目々で言われれば、こちらとしては「そうですよね」と笑って返せる。だって無理だもの。それより…


「ねえ。ジャイアントパンダ君」


「なに? ツキノワ君」


「レッサーさん……さ。本当にシロクマのとこ行ったのかな? ケガなんてしてないかな……」


「ないない。レッサーさんだぜ? ワシントン条約保護動物だぜ?」


 それはそうだ。

 でもそれを言ったらシロクマのヤツもワシントン条約保護動物だし……なんならジャイアントパンダ君。君もだよ。





 ────────




 ファミレスに入るとまず目に飛び込んで来たのはシロクマの巨体だった。思わぬ接敵に全身の毛が逆立つのが分かった。

 が……シロクマはコチラを見ようともしない。目線を下に落とし、しょぼくれている。地上最大の肉食獣。その圧倒的な巨体がいつもの半分以下に見えるほどだ。

 

「あ。こっちこっち」

 

 声をかけてきたのはレッサーさんだった。

 顔半分がテーブルに隠れてその前に置かれたパフェのせいで見えなかったがシロクマの横にちょこんと座っていた。

「どうも」と頭を下げ近づくと……ギョッとしてしまう。

 俯いていて気づかなかったがシロクマの口……左端が真っ赤に染まっていた。

 

 し……

 

 シメられたんだ……


 信じがたいことだが……シロクマはレッサーさんにシメられたのだ。恐らくは暴力を用いて……


「うん。まあ……座ってよ」


 レッサーさんに対面に座るように促され、ジャイアントパンダ君とおずおずと腰を掛ける。

 チラリとシロクマの方に視線を向けるが、こちらを見ようともしない。ただバツの悪そうな顔で俯いていた。

 気まずい……

 たしかにレッサーさんにシロクマの暴虐を止めるように頼んだのだが……

「痛めつけてくれ」

 と頼んだわけではない。いや……それはちょっと卑怯な物言いだろうか。オレ達はクマなのだ。暴力は暴力で止めるしかないことを知っていたはずなのだから。

向かい合い。黙りこくる4頭。沈黙を破ったのはレッサーさんだった。


「おい。シロクマ。ほら。なんか言う事あるだろ」









※レッサーパンダはイタチ科。クマじゃない

※ツキノワグマもワシントン条約保護対象動物です

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