第14話 面接ひじひじ
就職活動時の面接。
何社か受けたんですけど、その中の1社のお話です。
んー……まあ結構練習してたんですけどね。当たり障りのない感じのヤツ。
「自己紹介をしてください」……とか
「志望動機は何ですか?」 ……とか
「学生時代に頑張ったことは何ですか?」 ……とか
「長所と短所を教えてください」……だとか。
皆さんも経験あると思いますけど、そんなもんでしょ? 普通。
序盤はね、私もそんな感じで質問されてたんですけど。
面接官の方が意地悪だったんでしょうか……それとも遊び心が止まんない方? とにかく……
「特技……っていうか……『必殺技』ってありますか?」
って聞かれたんですよ。
は? ってなるじゃないですか。
特技って……そのまま言われてたら
「書道やってたんで字が上手いです!」みたいな。
「弓道やってたんで……その眉間撃ち抜きましょうか!」的なね。
無難な回答出来たんですけどね。
『必殺技』と言うとるわけですよ。このオッサンは!
「お?」ってなりますよね。「試す気かオレを?」って……まあ、なったんですよ。私はね。
コレは普通じゃいかんな、と。この面接官の度肝抜いたるわ、と。
そこで私ね、言うてやったんですよ
「ヒジ鳴らせます」ってね。
「ヒジ……ですか?」
「ヒジです。まあ、普通は指とか首とか……あの辺りは皆さん鳴らせるでしょう? 私ね。ヒジ鳴らせるんですよ」
「なるほど……ちょっとやってみてもらっても?」
もちろん。と頷くとヒジを曲げてグググッと力を込めながら徐々に伸ばしていく。
ペキ
「ぎゃああああああああああああああああ!」
これね。音の大きさの割にはけっこうヒジ痛くて……ちょっと叫んじゃうんですよ。
「ど、どうです? 聞こえましたか?」
「い、いや……聞こえなかったな。それより……凄い叫んでたけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です! まだまだイケます! もう1回いきましょうか!?」
「う、うん」
「いきます……」グググ……
ペキ
「ンゴあがあああああああ!! うぐ……あ……ど、どうです?」
「ふふふ……ごめん。やっぱ聞こえないや」
「じゃ、じゃあちょっと前……いいですか。ヒジに耳近づけて下さい!」
「ああ……うん。じゃあちょっと……」
「あ。皆さん。どうぞ! 耳近づけて下さい!」
質問してきた人以外の人も椅子から立ち上がり私のヒジに耳を近づける。
「いきます……」グググ……
ペキン
「んぎゃああああああああああああああ!!」
「聞こえた! 聞こえた、聞こえた!」
「ふ……ふふふ……音けっこう小さいんだね」
「あっはははは!ペキンっていったね」
今度は聞こえたらしく、面接官達が感想を口にする。その表情からは笑みがこぼれ、私は手応えを感じた。
「よーし! じゃあ今度は両ヒジいきますよー!」
「いや。もういいよ。ご苦労さま」
結局落ちた。
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