第13話 構わず大乱闘
巣の中をどんどん進んで行くが、全然他の冒険者に会わない。
「誰にも会わないけど、こういうものなのか?」
「そうですね、普通は巣の中に入らないですから」
「え?だって、22から25階まではアリの巣なんだろ?」
「えっと、別のルートがあって、そこからだとモンスターに遭遇しないで26階まで行るんです。
こっちのアリの巣ルートは、下にさがって行くとちょうど25階分で行き止まりになって、そこに女王アリ居る感じです。
みんなここ無視して26階行くんでアリ素材って高額なんですよね」
「なるほどねぇ」
話しながら遭遇するアリを瞬殺して歩く。
まったく緊張感もなく歩いていると、突然後ろからボコッという音が聞こえる。
「え?えええ!え!えーーーー!」
『ポアン、えだけじゃ、何言いたいか…意外に分かるわね』
「腰が、抜けて、助け…て…」
通路の横が急に空いてそこから4匹の兵隊アリがこちらに向かって来た。
俺は即座に反応してヨーヨー行きと戻しで、手前の2匹の首を切り落とす。
そのまま体当たりする勢いで相手に飛び込みながら1匹の胴体に斧を叩きつける。
その勢いを殺さないようにコントロールして最後の1匹の顔面を斧で引っ叩いて潰す。
メイがそそくさとアリの死骸を袋に詰め込んでいる。
「ショウ…さん…今までありがとう…ガクッ」
『ポアン、遊んでないで無傷なんだから移動するわよ』
「腰抜けてあるけないんですよ!
本当に死を覚悟したんですから!」
『壁から出てくるのは、さすがに察知するの無理よ。
壁がダンジョン素材のせいか索敵かけても反応しないのよね』
「うーん、ここからゴーレム出すのも早すぎるしなぁ、あれ出してる時って魔石や素材回収できないしなぁ…うん?」
なんか足元をチョンてされた。
「メイどうした?」
メイが身振り手振りで訴えかけてくる。
「えーっと、もしかしてメイがゴーレムの外で回収するって事か?」
満面の笑みでコクコクコクと頷いた。
「えー大丈夫かなぁ」
『私が常時看視するから、危なそうになったら、あなたが頑張って守って』
「俺が守れる範囲にいろよ」
メイがコクコク頷く。
「よし!来い!ゴーレーーーーム」
『そろそろ、それ飽きないの?』
「飽きない!」
『そう、ならしょうがないけど…』
俺たちが操縦席に乗り込む間に、メイがゴーレムの肩口まで登ってしっかりとゴーレムに抱きつく。
「よし!行くぞ!」
メイが思ってたより身体能力高かった。
接敵すると、タタタとゴーレムから降りてスタンバイし、倒すとサササとアリを回収、たまに魔石を取り出して腰のホースに放り込む。
見た目がコアラなのに、動きも俊敏だ。
そういえば、本物のコアラも日頃はエネルギーを節約してるだけで本気になったら早いし俊敏だって聞いた事あったな。
メイは見た目はコアラだけど、葉っぱじゃなくて普通に肉とか食うもんな。
「あの、デカいのが女王か?」
ゴーレムのおかげで最下層まですぐ着いた。
「そうですね、戦闘力ないですけど攻撃すると巣の中のアリが一斉に襲って来ます」
「なるほど」
俺は頷くとズカズカと女王アリに近づいていく。
当然、近衛アリが襲って来るが迎撃する。
「もしかして女王アリ攻撃します?」
「え?その為にここまで来たんだろ?」
「ん?あれ?そうでしたっけ?」
そんな疑問をポアンがしているうちに、俺は女王アリの頭を叩き割った。
ー30分後ー
「どんだけいるんだよ!」
延々とアリ共が襲ってくる。
マジックバックはとっくに満杯になり、メイも操縦席に戻って来ている。
「だってダンジョン3階層分ですよ、そりゃとんでもない数いますよ」
「石は満ちているか?」
『は?』
「石は満ちているかと聞いている!」
『えーっと、エネルギーって意味ならメイのおかげで充分あるわ』
「これより、最高ガン発射準備を行う!」
『いちいち宣言しないで良いから早く撃って、あ、メイは回収しに行かなくて良いわよ、魔石だけならホースで回収出来るから』
「マリー…様式美って大事なんだぞ」
『知らないわよ、それよりまだ出力調整出来ないままだから出来るだけ引きつけて撃ってね』
「俺、ロマン成分足りなくて死ぬかもしれない」
『ロマン足りなくて死んだ人なんていないから、早く撃って!』
「分かったよう、薙ぎ払え!」
「目がぁ!目がぁ!」
『ちょっとポアン何してるの!』
興味津々で最高ガンの発射をモニターで見ていたら、想像より激しく光ったせいで目がシバシバしたらしい。
「ふう、全滅出来たようだな」
『エネルギーは空っぽよ、魔石回収頑張って』
そうか、ダンジョンだから急がないと吸収されてしまうのか。
余韻に浸る暇ないなぁ。
【後書き】
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