第5話 なにげに討伐者
慌ててゴーレムに乗り込むと袋をひっくり返して、中に入れてあった魔石を無造作にバラバラと床に落とす。
「どうすれば良い?」
『そのままで良いわ、取り込めるから』
「オーケー、じゃあ俺はパイロホーク!」
そう叫ぶと、ゴーレムの右手に片手用の斧が現れる。
『もう行けるわよ、蹂躙して』
「おう!まかせろ!ここからはずっと俺のターンだ!」
この世界で山賊は魔石がないモンスター扱いだ、ましてや国で兵士やってた俺としてはむしろモンスターより殺すのに躊躇しない。
生身の人間がゴーレムに勝てる訳もなく、阿鼻叫喚が…聞こえないな。
「なぁ、コレって外部の音って聞こえる機能無いのか?」
『…失念してたわ』
「ん?」
『ついてないの』
「え?」
『忘れたの!だいたいあなたがねぇ、色々こだわってアレもコレも言うから、基本的な機能忘れちゃったんでしょう』
「あ!そこで俺のせいはズルくないか?」
『う、うん』
「ごめんなさいは?」
『ごめんなんさい』
こんな会話をしながらでも、確実に相手を殲滅している。
すっかり外は血の海だ。
逃げようとする奴にはヨーヨーを喰らわせる。
なんか命乞いしてる様な気もするが音が聞こえないからなぁ。
あ、そうだ。
「これって外の相手にこっちの声を聞かせることは出来るのか?」
相手の声が聞こえなくても降伏勧告出来るなら、そろそろ何人か生かしておきたいしな。
『声出せるけど、フモってしか言わないわよ』
「え…?」
『あなたが、これは譲れないって、全てに声はフモにならなければいけないって泣きながらお願いするから、普通の拡声器付ける方がずっと簡単なのに、わざわざ全ての言葉をフモに変換する機能つけたわよ、おかげで無駄にエネルギーかかってるわ』
やべぇ、俺って酒飲むとき記憶無くすまで飲むからなぁ。
ものすごい数のやらかしをしてる予感がしてきた。
「…」
『ごめんなさいは?』
「ごめんなさい、普通の拡声器に変えてください」
『良いけど、今は無理よ』
まぁそうだよな、上手いこと手加減攻撃して無力化しよう。
…
…
…
うん、手加減失敗した。
「うーん、どこに何があるか聞く人居なくなっちゃったな」
『奥に1人いるみたいよ、多分人質とかじゃない?』
「とりあえず降りるかぁ」
うわぁ、ゴーレムから出たら血の匂いすごいな。
返り血もヤバいな。
「この汚れどうする?」
『異空庫に格納する時にゴーレムと装備品のみってしてあるから、汚れは全部取れるわよ』
「お!便利!」
とりあえず、1人だけ残ってるらしい生きてる人間に会いに行く事にする。
人質だったら助けて報酬狙い、山賊だったら情報収集、軽くそんな感じで移動したんだけど…。
「獣人だね」
『そうね』
檻の様なものに閉じ込められていた。
「確か、獣人って差別されてたよね」
『そうね』
衰弱してる様で、俺たちが側にいてもほとんど反応しない。
「報酬とか貰えないよね」
『そうね』
えっと、コレはなんの動物?
んーあー、コアラ?
「なんとかならない?」
『無理ね残念だけど』
この世界では、獣人は差別されている。
そうじゃない国もあるらしいが、それは極めて少数派だ。
この獣人もおそらく奴隷として売り飛ばす為に何処からか連れてきたんだろう。
問題は引き取り先がないって事だ。
元の場所に戻すにしても、どこかは分からない。
元々奴隷だったなら、確実に前の持ち主は山賊に殺されてる。
無難なのは次の街で衛兵に預けるかなぁ。
それでお金がもらえる訳じゃないけど…。
見捨てるわけにもいかないしなぁ。
マリーと相談してもそれくらいしか思いつかなかった。
アジトを物色してポーションが見つかったから、獣人に飲ませて、日持ちのしない物を選んで食べさせる。
俺も日持ちのしない物を食えるだけ食って、日持ちのするものを持てるだけ持って行くことにした。
幸い魔石を結構貯め込んでいたので、エネルギーの補充をする。
現金化出来そうなものも結構あるが嵩張る。
俺のアイテムボックスは既にいっぱいだし、ゴーレムの異空庫も自身と装備品のみしか入らない。
しょうがないから、出来るだけ目立たない所に1箇所にまとめて、後で取りに来れる様にここをマーキングしておく。
「エネルギータンクはどのくらい補充できたんだ?」
『3割って所ね、移動するだけなら問題無いわ』
「戦闘は?」
『ヨーヨーがエネルギー効率良いから、基本それ以外使わない様にして』
「あの子はどうする?」
『操縦席に少し余裕あるから、そこに乗せるしかないわね』
「おい、お前名前はなんていうんだ?」
獣人の子供に向かって話しかける。
「…」
「…俺の言葉は分かるか?」
コクンと頷く。
「名前無いのか?」
コクンと頷く。
コアラってなんて鳴くんだろうな?
分からん、羊っぽい気もするから、メェーにするか?
名前なんだからメイか。
あ、昔飼ってた猫もメイだな。
ま、いいや。
「とりあえず、お前の事メイって呼ぶから、メイって言われたら自分の事だと思ってくれ」
コクンと頷く。
「おし!これ乗って移動するぞ」
そう言ってゴーレムを呼び出す。
驚いたらしく、硬直して動かなくなったから、しょうがないから担いで中に入った。
見た目に比べてやたら重い、獣人ってみんなこうなのかな?
食料も魔石も補充出来たし、小銭も確保出来た。
さっさと迷宮都市行って、自分たちの生活基盤つくらねぇとな。
【後書き】
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