異世界で産廃技術である魔術を活用する方法~僕の人生だけでも、僕が主人公で居られるように~
木原 無二
第1話
「...と、いうわけじゃ...そなたらには魔王を討伐してもらいたい!」
玉座に座っている王様の言葉に、みんな様々な反応をしていた。
現状に泣く者、現実に笑う者。
顔をニヤケル者、顔を呆ける者。
様々な顔がそこにはいた。
時はさかのぼること、10分程前。
いつも通り、ヤンキーにいちごミルクを渡していた僕こと、無常仮寝は教室でまばゆい光とともに意識を失い、気が付けば甲冑を着た騎士たちに包囲されていた。
なにいってんのかわからない?僕も同意見だ。
別にこれはネット民によるお人形ごっこや痛い中二病の類でもない。僕の身に起きている現実だ。
「騎士アレンよ。此の者達を任せる。あとは彼に聞くといい。」
そう王様が言うと、紫の甲冑を着た老人が案内を始めた。
この移動中に頭の中を整理するとしよう。
まず、今の段階で分かっている情報として、
・自分たちは異世界に勇者として拉致られた。
・勇者は3つ特別なスキルを持っている。
・勇者の体には魔族という存在そのものに特攻概念がある。
・元の世界に帰るには、魔王を殺さなければならない。
...テンプレ過ぎて言葉も出ない...が、まぁいい。
(異世界ってことは魔法や魔術があるって事だろ...?それって最高じゃん!)
異世界に拉致られたことは少し不満がないと言えば、嘘になる。だが、ヤンキーにパシリにされて異能の類が全くない、退屈で窮屈な世界を抜け出せるチャンスだと思えば不思議と前向きになっていく。
他の、周りで泣いていたり、ぼーっと現実を受け入れられていないクラスメイトたちに比べたらマシなほうではないだろうか?
自分が歩いた場所を、無意識に脳内マッピングしながら進んでいくと、そこは召喚された部屋とは真反対の方向に位置する部屋につれていかれた。
「ついたぞ。今から、スキルの鑑定と魔力測定を行う。まずはスキルからだ。さあ、誰かあの神官の前に行くのだ。」
ああ、定番中の定番。
ぶっちゃけ、これに関しては期待するしかない。
(せめて一個でも有能なスキルがあればいいなぁ..)
そう思いながら、クラスの委員長である池谷 輝。通称、イケテル委員長が前にのりだす。(本人はこのあだ名にめちゃくちゃ満足しているらしい。)
「では、俺から行かして貰うことにしようかな?」
その姿に、皆少しだけ安堵した顔になっていく。
やはり、いつも通りのクラスの雰囲気が少しだけ戻った事に、ちょっぴり安心感が芽生えたんだろう。
イケテルが神官の前に立つと神官が宣誓するように叫ぶ。
「この者の可能性を今、人神の前に表せ!『鑑定』!」
すると、興奮した様子で話し始めた。
「ゆ、勇者様の持っているスキルは『聖剣所持者』と、『限界突破』。そして、『剣聖』でございます...!!!!」
神官はもちろんのこと、アレンとその部下であろう騎士たちはもちろんのこと、そこにいたメイドまでもが拍手喝采の嵐だった。
そんな中、自分はただ考え事をしていた。
(魔力ってなんなんだろう...?やっぱりエーテルとかダークマターが関連していたりとか...?いや、一旦科学的な考え方はやめたほうがいいのかもしれない。別の観点から見るのも頭の中に入れとかないと...)
イケテルは生徒たちのほうに向かって、ニコっと歯を見せながら笑いかけた。
それに反応する女子生徒と担任の先生とメイドさん達。
そしてそれに嫉妬するヤンキーや男子生徒たち。
ただ、一人だけを除いて。
「...君は落ち着いているようだね?無常君?」
「............ん?なんか呼んだ?」
空間の空気がすこしだけ下がった...いや、あまり居心地の悪い生ぬるい風が部屋に充満したような気がする。
イケテルは少し不快感を表していた。
そして、女子はもちろんのこと、男子たちでさえも。
無常仮寝には欠落しているものがある。
本人には自覚は少ししかないが、それが原因で不良たちにパシられたり、先生に一歩引かれたり。それはもう様々な反応として映し出されていた。
現に今、池谷は少しの不満を無常に対して感じていた。
自分が、他の人を唸らせる力持っているのに無反応だった事に対して。
「?そこの少年、無常っといったかね?次は君が出てみたらどうかね?」
アレンには何のことかさっぱりわからないが、仕事はさっさと終わらせるのが彼の性分。そして、それが彼が編み出した出世への近道である。
「はい、わかりました。」
無常は神官の前までクラスメイト達を一切気にせずに歩いていく。
「お願いします。」
「はい、それではやらさせていただきます。」
神官高らかに声をあげる。
「この者の可能性を今、人神の前に表せ!『鑑定』!」
その瞬間、脳内に情報が流れ込む。
『無常仮寝
人族
スキル
『解析』『反転』『影の宝庫』』
「こ、これはこれは...『解析』はそこまでですが、『反転』と『影の宝庫』は当たりのスキルです!!!魔力量もそこそこあるようですし、立派な剣士になれるかと...」
そこそこの拍手が起きた。対照的にクラスメイト達は面白くないものを見るような感じだったが、アレン達には嬉しいことだろう。
(やった!とりあえず魔力が沢山あって!これで魔法や魔術を.........ちょっと待て?)
「あの、今なんて言いましたか?」
神官に向かって再度質問をする。
「ん?頭の中にスキルが載っているはずです。それを見てください。」
「あ、いやーそれじゃなくて。さっき立派な剣士になれるとかって...」
その言葉にアレンはしっかりと返答した。
「ああ。魔力を使うことで身体能力や剣を強化する事が出来る。そしてそれにスキルを組み合わせる事によって強くなっていくのだ。」
そうじゃない。
なぜだろう?いやな予感がする。
とりあえず、聞いてみることにしよう。
「あの~つかぬ事を聞くのですが...魔法や魔術とかってこの世界にありますか?」
「ああ、あるぞ?だが魔術の類は魔石で封じられるからそれほど学んでも意味がないぞ?現に、うちの国での魔術師と言えば司書ぐらいだからな...ああ、もちろん簡単な魔術なら火起こしの種火くらいなら誰でも起こせ...どうした?魔力が暴走していないか...?!」
【lwsgydくぃhふぃfh;q3hfほほおおおおおお!??!?!?!】
この瞬間、彼の脳内に溢れ出した様々な激情は体中を駆け巡った。
上げられてからどん底まで下げられたロマン。それは彼の魔力に多大なる影響を及ぼしていた。
「い、いかん!すぐに離れるんだ!そこのお前は司書たちと治癒師を呼んで...」
その日、一人の勇者による爆発は後世に語り継がれるようになる。
新たな御伽噺の逸話として。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます