第10話 アンジェ、街へ行く2
「今日こそ、朝だぁ〜。」
(毎日、朝は来る。
何よ、ノリが悪いわね!
毎日、日曜なら分かるが。
何それ?あぁ、そうね。記憶を読み取るアンジェが、でも毎日が休みなら、暇で暇で退屈じゃないの。
ま、真っ当なことを言ってる。雨だな、うんうん、雨だね。
もー、晴れてるじゃないのよ〜。)
『コンコン』アニーが、呼びに来た。
「アンジェ様、おはようございます。
お出かけには良い天気ですね。」と支度を整えると、食堂へ向かう。
ルンルンと前を歩くアンジェに、見た目はやはり、5歳なのだと、微笑むアニー。
しかし、その辺の兵士達より、強いなんて、バランスが悪過ぎて逆に怖いわ。
アンジェは、食堂へ入ると
「お母様、おはようございます。」
「アンジェも、おはよう。
昨日は良く眠れたかしら?」
「大丈夫よ。
今の私は、今日の為に生きている。なんてね。アハハハ」
やはり、いつものアンジェだった。
食堂には、お父様も来てきた。
「お父様、おはようございます。」
食事を済ませて、早速準備に向かうアンジェに、
「気をつけて行くのよ。」
とお母様から声をかけられたので、
「大丈夫よ、お母様。
アニーもいるから〜。」
と手を振って部屋へと戻る。
街行き用の服を着て、アニーと揃って、出発だぁ。
っと、子爵邸をでてから、川をトントントンと渡ると街外れである。
アンジェは、
「姉さん、早く〜。」
と呼びながら、商店や出店を見物していく。
「おじさん、小麦の価格が高くなってるわ?
どうしてなの、ほんの数日で3割増しって1キロ銅貨1枚と青銅貨8枚だったはずなのに?」
「お嬢ちゃんは、凄いな。
今年の収穫が例年より、少なくなるみたいでな。皆も、参ってんだよ。」
「おじさん、ありがとう。」
アンジェは、小さい頭の更に小さい中身で考える。
雨の量が足りなかったとか、おひさまが足りなかった?
(見てからじゃないとなんとも言えん!連れてけ。何か分かれば伝えるくらいはするから。)
「アンジェ、どうしたの?」
アニーが声をかけてきた。
丁度いい、
「畑に、連れて行って姉さん。」
「いきなりどうしたのですか?」アンジェは、
「今年の小麦の収穫が悪いって、おじさんが言っていたから、見に行こうと思ってね。」
アニーは、
「門の外に出るのですか?
それは、駄目です。」
「隠れてる護衛も連れていけば大丈夫じゃないかしら。」
アンジェとアニーの押し問答で時間だけが過ぎて行く。
結果、護衛の1人に戻ってお父様に判断を貰って来て決めることになった。
待ち合わせは、中央広場と伝えると、護衛は2人になった。
アンジェは、中央広場に着くと同じくらいの子供たちに声を掛ける。
「こんにちは、皆は何して遊んでるの?」
「誰だお前は、見ない奴だな。」
おぉ~、ボスなのか。
周りの子供たちも、ボスの後ろに下がる。
「私は、アンジェよ。
隣はアニー姉さんで、この街に住んでるけど、遠いからここまで来る事は余りできないの?」
「俺は、セトでこいつらは、この広場の周りに店を出してる所の子供の集まりだ。
昼は、余りやることがないから、皆で遊んでるんだ。」
およ、サイコロに線で四角を並べてる?横には丸い円と石ころだ。
(あ~、懐かしいな石蹴りやケンケンパッてやつだな。アンジェ知ってるか?
知らないわよ。って、ほほ~なるほど、こんな遊びがあったのね!)
「ねえ、私もまぜてよ。」
後ろの女の子が、
「私はエル。一緒に良いよ。でも、お姉さんも入る?」
アニーは、
「勿論ですよ。
これでも、得意なのよ。」
と男の子と女の子で分かれて遊び始めた。
サラにリーズとも直ぐに仲良くなれた。男子は、カール、シン、ジルがセトを中心に遊んでいる。
アンジェは、初めての遊びに楽しそうにしている。
そこに、
「アニーちゃん、伝言だよ。」
と護衛が駆け寄って来る。
エルとセトが前に出ると、アニーは、
「あぁ、大丈夫よ皆。お父さんの仕事の人なの。」
アニーと護衛は、少し離れた場所で、
「それで、エドワード様は?」
「それが、近い内に、視察に出るので、日を改めるように仰ってました。
また、その時に同行するようにと。」
アニーは、
「分かったわ。
アンジェ様には、私から伝えておきます。ありがとう。」
護衛が、持ち場に戻ると、今度はアンジェ、と声を掛ける。
「どうしたの?姉さん。」と近づき、報告を聞くと
「分かったわ。見に行けるなら、今日は遊ぼう。」
(仕方ない。遊びまくって、帰るか。おこちゃまなアンジェの為に、付き合おうじゃぁないか!
その口を閉じることは出来ないのかしら?
一言多いって貴方もじゃないの!)
その後は、皆と楽しく遊び周り、以外にアニーが、子供のように、楽しんでくれていた。
日暮れが近づくと、セトが、
「みんな、そろそろ戻るぞ〜。」
と言うと
「じゃ、またね〜。」
「また、明日〜。」
とお店の方に帰って行く。
エルが、
「お姉ちゃん、アンジェちゃん、またね。」
アニーの顔が、緩んでいる?
「姉さん、何を喜んでるいるの?」『ハッ』と
「いえいえ、ちゃんで呼ばれた事が新鮮で。」
「うんうん。何だか分かるわ。
それに、可愛いは正義だね。」
「アンジェちゃんと、歳は変わらないじゃない。」
アニーは、悪戯っぽく微笑む。
「そうね、お姉ちゃんがあんなに、張り切って遊んでる所なんて見たことなかったわ。」
とアンジェも笑いながら、今日の事を話ながら帰る。
(しかし、アニーの新たな一面を見れて良かったな。子供は可愛かったなぁ〜、いつでも、変わらない事はあるんだな。アンジェ、頑張れよ!
何よ、分かってるわ。それより何よ、可愛いは正義なんて?
つい言ったけど、オッサンはこれだから。
俺達は、まだ若いぞ!
え〜最初の時代から1000年くらいは経ってるじゃないのよ。
おじいちゃんを通り越して、ミイラ?ゾンビなの?
失敬な!死んだ時は、若かったの。積み重なった年代で語るな!)
子爵邸に帰り着くと、カルビンが迎えてくれた。
「アンジェ様、おかえりなさいませ。旦那様が、お待ちです。」
おや?何やら嫌な予感がする。アンジェは、グルグル頭を抱えると視察か!
(いや、それしかないっしょ!)
『コンコン』中に入ると、
「旦那様、アンジェ様とアニー殿をお連れいたしました。」
「うむ。さて、アンジェ、アニーからの伝言は、何をするつもりだ。」
やっぱり、きた~。
「護衛に、伝えた通りですが?」「畑を見に行きたいと知らせを受けたが、理由を聞いている。」
そうか、理由まで言ってなかったや。
「お父様、今日の街はいつもと変わらなかったのですが、小麦や野菜の値段が上がっていたの。
たった数日です。ですから、直接見に行きたいとお願いしたのです。
お店のおじさんも、今年は収穫が減るって言ってたわ。」
「成程な、確かに例年に比べ不作と報告は受けている。
だが、アンジェが、見て何が出来るのか?
街の外は、魔物や獣が出ることもある危険な場所でもある。」
アンジェは、
「お父様、確かに見ても、何もわからないかも知れないわ。
でも、行かないと何も分からないままだわ。」
「エドワード様、アンジェ様には、何か考えがあって仰っておられると思うのです。」
アニーからの、援護射撃・・いやいや銃はないよ~、援護でエドも頷く。
「別に、反対している訳じゃない。視察に出ると言っていたはずだが?
ちゃんと、準備をしてから行くことが条件なのだよ。
護衛からも聞いているはずだが?」
あれ・れ・れ、呼ばれて反対される流れかと思っていたが
「お父様、ありがとうございます。アニーも、私の気持ちをくんでくれてありがとう。」
続けて、
「お父様、いつ行かれるのですか?
アニーとミリーも連れていけますか?」
「分かった、3日後に視察に出る。
皆も良い機会だ、兵を増員して準備をする。
アンジェたちも、服装は何時もの様に準備しておきなさい。」
アンジェは、飛び跳ねて喜びアニーの手を掴むと、笑顔で答えた。
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