第5話 内緒の約束とご褒美を貰う

 エドに続きステフ、カルビンにロッテ、アニーとみんなが揃う。


 大きく開けた口が、ムニャムニャと閉じると、目も閉じて眠ってるアピールをする。(いやいや、流石に無理があるだろう。話すにもタイミングとか、準備とかあるでしょ!何も考えてない程、残念な頭なのか?残念、残念って何時も馬鹿にしてっ!いやいや、別に残念だけではないぞ。小さいとか、あっ、胸ではないよ。ウキ〜!失礼な奴ばっかりね。サル?さる。猿か、人間を止めたか。もう、うるさーい。)


「アンジェ、そろそろ起きないか?振りはしなくても、アニーが伝えに来てるのだからな。」お父様の声に、観念するしか無かった。


 アンジェは、「お父様、お母様、ご機嫌よう。カルビン、ロッテ、アニーもミリーも今日はありがとう。」


 エドは、「先ず知らせて置く事がある。」周りを見て「アンジェについてだが、見た目の容姿、性格や表面的な事以外は口外禁止とする。昨日からの件で、アンジェの調子に乗ることや、残念な所は変わらない物の、知識や剣の才は全くの別物だ。」(ありゃ、俺に才は無いよ。何いってんのだエドは、頭が目が壊れとる。節穴か、節穴だな。とエドの目は節穴に決めた。)


 ステフもカルビンも同意するように頷くとアニーが、「何故、隠す必要があるのでしょうか?アンジェ様の評判も上がるのでは無いでしょうか?」ロッテもミリーもアニーと同じ様に思ったのか、視線をエドに向ける。


「誰に向けた評判なのか。誰が、好意を興味を持つのか。領民だけなら、何も問題はないが。隣国のチェンダール帝国に接し、また王国のバズール公爵とも接している。帝国はまだしも、国王派の我らと隣接する領が公爵とその派閥なのだから、デビュタントも終えてない5歳のアンジェを矢面に立たせるわけにはいかんのだ。」

 次にアンジェが「お父様、バズール公爵とは、中が悪いの?同じ王国なのに。」と尋ねた。


『ハァッ』と溜め息をつくと、エドから「アンジェにも教えてなかったが、カルロス王のご子息であるプランタ王子殿下が次期国王になるはずだか、バズール公爵は、隙あらば王位を簒奪する野心家だ。なので、公爵派が隣接するウィルビス侯爵のハイド伯爵領の1つリヒタル領は決して安全な地とは言えない所だ。」(なるほどなぁ、帝国は元より王国も公爵派で一枚岩ではないと!しかも、お隣さんだ。アンジェが余りチヤホヤされたら、狙われる可能性が出てくるかも知れない。自業自得ってやつだな。始末におれん、強く生きろよ!)「分かりましたわ。お父様、でしたら、悪い方の評判が広まった方が良いのではないかしら?」

「バカ者がぁ!現状で、この地の後を継ぐ子女として民に不安を与えて何になる!」おぉ、エドの大激怒だ。「アンジェが、普通の女の子じゃないと分かったから、対策を話しているのに、もっと周りの者の事を考えなさい。」少し落ち着いたエドが嗜めるたしなめる

(俺は、頭に花でも咲いてるのか?馬鹿なのアホなの愚か者なのか?どれも、意味が変わらないじゃ無いのよ!)赤面して俯いたままアンジェは、どうやら、俺の言葉にお怒りらしい。


 ステフが、「アンジェ、貴方が可愛らしくて、お転婆で隣のベルナン子爵は私達の情報を集め機会を伺っているでしょう。良い機会ですから、アニーとミリーから学べる物は教わりなさいな。足り無い所は、エドと私わたくし、カルビンで、補います。後、剣術に置いてはマクミランに見てもらいましょう。貴方なら、護身で役に立つでしょうから。」「そうだな。アンジェ、皆もそれで良いな。」エドの言葉で、収まると「わかっわ。」「かしこまりました。」と揃って返事をする。

「お父様、お母様、やっぱり私は外へ出てみたいの、街の様子も人も、もう抜け出す様な事はしないからお願い。アニーもミリーもいるし1人では行かないから、お願い。」


 今の、ただ小さい私を狙っても無駄だと思うし、これくらいなら大丈夫なんじゃ(俺は、今までの話を聞いてたのか?突っ込むが、ニヤニヤしたアンジェには届かない。ツルペタ残念アンジェは揺るがない。)


 お父様が、「分かりましたとは!何もわかってない、分かりました。と言う事か!」アンジェは、想定外の返事に驚く。(あれっ?おかしいわ。お前がな〜。言葉が間違っていたのかしら?そこじゃないぞ。選択しを間違ったんだわ。選択しは、無かったぞ。うっさいわね。横からいつもいつも、たまには、代案を出しなさいよ。ムッ、とした俺は少し変わるぞ!)


「お父様、お母様、聞いてください。容姿や性格など見かけ上の事であれば、問題ないとの事でしたが、成人まで3年ある私ならそこまでの価値はないでしょう。それに、ここで暮らす領民との交流は、悪い事ばかりでは無いはずです。箱入りで世間知らずでは、逆にどの様な令嬢なのか知られずに不安になるかと。派手な格好でなく、領民の中に打ち解けるようにしたいのです。わたくし達が守るべき民を知ることは、間違っていないと思っているのです。」(急に気分が悪くなる。)エドは、「まだ、知られてない今ならか。一考の余地は有りそうだ。」俺は、好機と「お父様が街へ出て直接、直訴する者がいましょうか?私なら、その代わりにもなれましょう。良い所も、悪い所も話しやすいと思いますが。戦いに行くわけではないのです。民の暮らしを見て、話して、子供たちと遊んで来るだけです。どうか、お願いします。」(あれっ、俺は一体なにを間違ったよ。子供っぽく、女の子っぽく話すのは難しくね。大体、お父様、お母様?いつの時代だよ!あ~、もう母上、父上だってもう使わないってのに、慣れない事はしないなかぎる。アンジェ、こーたーい。)


 エドは、「子供と遊ぶのはアンジェも子供だからか。」少し笑うと「ちょっと、話し方も変わったように思ったのだが?」ドキッとするアンジェは「気の所為では無いかしら。お父様のアンジェですわよ。ホホホホホ」笑い顔が少し引きつる。ステフが「エド、もうそれくらいで良いではありませんか。アンジェのやりたいことを叶えてあげましょう。」


「アンジェの考えは分かった。アニー、ミリーも付き合ってくれ。護衛を連れては、アンジェの意図が組まれないのであろう。離れて、配置するがよいな。」


「分かりました。」「かしこまりました。」

 ようやく、話が纏まった。


 俺は凄く疲れて、アンジェに心にダメージを受けたので呼ぶなよと言って意識の中に潜り眠りにつく。 


 そして、アンジェはアニーとミリーに街へ行くときの服の手配をお願いした。「出来るだけ、目立たないように、2人も同じ感じの服でお願いね。あぁ、楽しみだわ〜。」と思い耽った所で、「アンジェ様、今日はお疲れになった事でしょう。お風呂の準備が出来た様ですので、ゆっくり入られて下さい。」とバタバタと連れられ服のリボンを取るとパサッと床に落ちる。引っかかる所もないので、簡単だ。(いやいや、成長期であって、ずっとこのままじゃ無いはず。ちなみに、パンツもあるがパンタレットでは無く、キュロット見たいな、膝丈である。)おう、紐が引っ張るとストンと落ちるパンツ・・・まだ、引っかかるクビレもない。


 ともあれ、髪や体を洗われて湯に浸かって、疲れた筋肉も緩み顔もだらしなくなる。やっと、外に出られるのだアンジェにとってのご褒美だぁ。堂々と外に行ける大義名分がある。拳を握ると「これで、私を縛る枷は無くなった。アハハハ」と立ち上がるとふらつき眠りに付いたのだった。

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