第25話 屋上での話

日奈子『ごめん、今日は一華に説明するから一緒に帰れない』


陽太『わかった』


 俺はこの日、久しぶりに早く帰った。


 その日の夜、また、日奈子からメッセージが来た。


日奈子『明日、放課後。屋上に来て。話がある』


陽太『わかった』


 なんだろう。上水にバレたと言うことは陽キャグループにバレる可能性がある。となると、井川あたりが俺をシメに来る可能性もあるな。あるいは上水が今の状況に猛反対して日奈子との関係を終わらせようとしているのかもしれない。何にしろ、悪い予感しか無かった。


 そして翌日の放課後。俺は屋上に来ていた。30分ほど待っただろうか。ようやく日奈子が来た。


「遅かったな」


「う、うん。少し一華と由美とも話してて」


「そうか。で、話って何だ?」


「昨日さ、一華に全て話したんだ。由美と一緒に」


「そうか」


「で、怒られちゃって」


 やっぱりか。


「そうか。じゃあ、俺との関係はここまでって事だな。わかった――」


「ちょっと待って! 陽太、誤解してる」


「ん?」


「今の関係のままじゃダメって事はそうだけど。ここまでやっておいて、付き合ってないのはひどいって怒られたの」


「うーむ、そういうものなのか?」


「うん。だって一緒に帰って、デートして、腕組んで、頭もなでられて。それで付き合ってないって陽太がかわいそうだって言われて」


「俺は別にいいぞ。今の関係で」


「でも、やっぱり、このままじゃダメだって私も思ってて……」


「そうなのか」


 じゃあ、やはりここで終わりか。


「今までありがとうな」


「ち、違うって言ってるでしょ!」


 日奈子が俺の腕をつかむ。


「違うのか?」


「違うわよ。だから、今の状態で付き合ってないのはおかしいってこと」


「ふむ。だから?」


「だから、付き合ってよ。私と」


「……は!?」


「私と恋人になってって言ってるの。どうなの?」


 日奈子の思わぬ言葉に俺は呆然とした。俺と日奈子が付き合うってことか。クラスのアイドルの日奈子と。

 俺はどうしたらいいんだろうか。俺が黙っていると日奈子が説明しだした。


「べ、別に今までとすごく関係が変わるわけじゃ無いから。今までと同じよ。この関係を続けるにはこれが一番いいと思うの」


「そうか」


「うん。だから、私と付き合ってくれないかな」


「日奈子はそうしたいのか?」


「うん。そうしたい」


「だったら俺もいいが、一つ聞かせてくれ」


 俺はどうしても確認したかった。


「うん、いいよ。何?」


「日奈子は俺のことが……その……好き、なのか?」


 俺は日奈子を見て言った。日奈子は次第に顔が赤くなり出した。


「うん。どうやらそうみたい。だって、付き合いたいんだもん」


 そうだったのか。


「で、陽太は? 私のこと好き?」


「俺は……お前を大事にしたいと思ってる。これが好きってことなのかもしれないな」


「なにそれ。はっきり言ってよ。好きなの?」


「……好きだ」


「そう。じゃあ、付き合う?」


「ああ、付き合おう」


「はぁ、良かったあ」


 日奈子が安心したように言った。


「ダメだったらどうしようって、今日一日ドキドキだったんだから」


「そうだったのか」


「うん。振られたらもう全部終わりだもんね。ほんとよかった。これからもよろしくね?」


「ああ、こちらこそよろしく頼む」


「それで……ちょっとお願いがあるんだけど」


「なんだ?」


「今から教室に来てくれるかな」


「教室?」


「うん。由美と一華と委員長が待ってる」


「はあ?」


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