はぐれ者の俺がクラスのアイドルと同じ電車に乗り合わせたら秘密の関係が始まった

uruu

第1話 はぐれ者

 俺、笹垣陽太は今日もうんざりした気分で学校に登校していた。授業をほとんど聞いていない俺が今更学校に来ても意味は無いと思うが、かといって行くあても無い。惰性で来ただけだ。


 教室では誰にも関わる気は無かった。話しかけてくるやつはもう居ない。当然だ。話しかけられても無視していたら誰も話しかけてこなくなった。俺からも話しかけることは当然無い。


 今日も授業が始まったが俺はそのほとんどを聞き流している。だから成績は悪い。俺は自分が勉強したいものだけを勉強している。それは授業では学べないものも多い。だからネットを見たり、図書館で借りた本を読んだりしている。


 授業が終わり、もう帰ろうとするところで教壇に女子生徒が立った。確かクラス委員長のやつだ。名前は知らない。ほとんどのクラスのやつの名前を俺は知らないから当然だ。


「今日はいよいよ親睦会を行いますので、みなさん残ってください」


 教室は盛り上がっているようだ。俺にはそんな予定は関係ない。何か言っていた気はするがもとより参加するつもりは無いからだ。黙って席を立つ。


「笹垣君、帰るの?」


 委員長が聞いてくる。俺は返事もせずに教室を出た。


 そこを追いかけてきたやつが居る。何かちょっと目つきが悪い男子で、教室で幅をきかせているやつだ。


「おい、笹垣。みんな残れって言ってるだろ!」


 俺が無視して帰ろうとすると、俺の胸ぐらをつかんでくる。

 俺はそいつに言った。


「そんな強制力はお前らには無い。自由にさせてもらう」


 俺はそいつの腕を払うとそのまま帰り出す。さすがに追ってこないようだ。


 ようやく自由になり、俺は学校を出た。


 路面電車に乗り込み、一番後ろの空いている席に座った。電車はしばらく動かない。その間に、人が乗り込んできた。うちの生徒も居るようだ。


 すると、知った顔があった。少し茶髪系の長い髪。背は高め。整った顔立ちで俺も顔を覚えていた。同じクラスでチヤホヤされているやつ。名前は知らないが。


 俺はその女子をつい見てしまっていた。すると、向こうが俺に気がつく。俺は顔をそらした。

 だが、そいつは俺に近づいてきて俺の横に座ってきた。


「笹垣君もこの電車なんだ」


 こいつは俺の名前を覚えているのか。そう思ったが俺は何も答えない。関わりを持ちたくないからだ。


「無視はひどくないかな。クラスメイトが話しかけているのに」


「そうだっけ」


 俺はとぼけた。


「もしかして私の事知らない? ってわけないか。さっき見てたもんね」


 そう言われ、仕方なくそいつの方を向く。


「もちろん、知っている。クラスメイトだからな」


「じゃあ、私の名前は?」


「……」


 俺は黙るしか無かった。


「やっぱり知らないじゃん。石川日奈子いしかわひなこだよ」


「そうだったな」


「……さすがにちょっとへこむな。これでも一応クラスの有名人だと思ってたんだけど」


「へぇー」


 確かにクラスの中心に居るアイドル的存在であることは知っている。

 こういうやつと絡むと面倒なことになりそうだ。


「笹垣君も親睦会行かないんだね」


 『笹垣君も』か。


「石川は何か用事でもあるのか?」


「ううん。行きたくないから行かなかった」


「へぇー、俺と同じか」


「うん」


 電車はいつの間にか走り出していた。


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