【短編集】Sinfonietta

泡沫 河童

チューニング

物語は常に"A"から始まる。


そう、どんな物語も。


いや、始まる『前』かもしれない。


だってそうだろう?


まずは世界を調律しなきゃ。


でないとどこからかズレてしまう。


物語がどれほど美しくても、語り部が悪かったら台無しだ。


ほら、


ペグに指をかけ、


弓を引いて、


ペダルを踏んで、


管を抜いて、


息を温めて、


ピストンの注油は済んだかな?


ロータリーはOK?


あとは君のアンブシュアだ


松脂のコンディションも万全かな?



よろしい



「じゃあ、始めようか」

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