第6話 close to…
ー高校校門前ー
高校から帰る人で校門前が混んでいた。
適当に帰りの高校生に声を掛ける。
「君、高校生の行方不明について知ってる?」
「えっ!もちろんですよ。」
「いじめが酷くて、不良なんですよ。」
「最近、その話題で持ち切りだよな」
近くの高校生が喋りかけてきた。
「へぇ〜、ありがとね」
礼を告げ、近くのベンチに腰を掛ける。
煙管に火を付け、風と一緒に流れる会話達を眺め、視界を暗くする。
ー推理開始ー
行方不明の高校生、事故や家出じゃないとすると事件。
犯人の目撃情報が少ないことから殺害は、人目の少ない所、そして人の数名の高校生を一人で殺害は、あり得ない。よって犯人は、複数人。
犯行動機は、「いじめ」だろう。
そして犯人だ。
目撃情報がない。だが海に死体を捨てた。
事件から数日間経っている。バラバラにしてももう見つかっているはずだ。
近くに山は、無い。
このことから海に死体を捨てた。
この地域に詳しく、いじめに関わっており、強い繋がりの仲間がいる。
計画的な殺人でまるで鉄鎚を下した神様のようだな。
…神様?
そうか。そうだ…「強い繋がりの仲間」これは、最強武器であり、最悪の足枷。
いじめられている人にとっては、犯人は、神様だろうな。
いじめから助けている代わりに犯行の手伝いでもしているんだろう。
つまりいじめられっ子の神様が犯人。
ー推理終了ー
視界を明るくし、煙管をしまう。
「close to…」
翌日の早朝だった。
やけに騒がしいと思ったら速報が届いた。
ワトソンが慌てて、喋る。
「高校生の行方不明事件だったみたいです!今朝高校生が捕まったようです!」
「本当か!ワトソン君!」
この時は、まだ気が付かなった。
容疑者がダミーだとは。
数時間後ー喫茶店ー
独りぼっちで珈琲を嗜んでいると扉の鈴が鳴った。
一人の高校生が店に入った。
「すみません。コーヒーにミルク多めと砂糖多めで」
へっ、ミルクと砂糖多めか、ガキだな。
珈琲をスプーンで回していると、声を掛けられた。
「すみません、隣いいですか?」
「あー、どうぞどうぞ。」
さっきの高校生か。隣の席の椅子を下げる。
「君、あの高校の子でしょ。」
質問を投げる。
「はい。今事件があって休校中ですが。」
礼儀正しい言葉が返ってくる。
「君は、神様って信じるかい?」
珈琲スプーンでくるくる回す、一定のスピードで右周り。
少しの沈黙が流れる。
「僕は、神様なんていないと思います。その代わりに誰かが犠牲となって崇められるのだと思います。」
深い回答だ。
「へぇー、いいね。君、名前は?」
「僕の名前は、樋上真斗です。」
「真斗君か、覚えておくよ。」
真斗君が口を開く。
「あなたの名前は?」
「シャーロックホームズとでも言っとこうかな」
二人分のお代を置き、別れを告げて、店を出る。
ワトソン君と合流し、歩いていると、ワトソン君が訪ねた。
「これで事件解決でしょうか?まだ何かある気がして…」
やはり、気づいてたか。
「あぁ、あれは、犯人じゃない。そのうち警察は、痛い目でもみるよ。それに真犯人には、僕じゃ勝てない気がする。せめて傷は、付けたいよね。」
ワトソン君が変な目で見てくる。
「やめてください。不吉な、貴方も一応凄腕の刑事だったんでしょう?頑張ってくださいよ。」
空には、夕暮れと雲が混じってた。
その後、捕まった容疑者は、舌を噛んで自殺してしまったらしい。
警察内は、バタバタしているだろう。
気づくと煙管を咥えて視界を暗くしていた。
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