第2話「教室で一人の不良ちゃん」
どこにでもいる普通の高校生こと俺、名前を――
東にある谷と夏に生きると書いて東谷夏生。
自己紹介の時にこうやって紹介すると一瞬で覚えてくれるほど分かりやすく普通な名前。
そんな名前の俺は普段はここ、札幌郊外にある公立第三高校、2年5組の学級委員長でありながら生徒会書記を兼任し、放課後には週3回ほどでアルバイトしている。
ちょっとだけ忙しくもありつつ、それでもそれなり友達もいて充実した毎日を過ごしている。
「おい、柊木。分からないって言うのは何なんだ、えぇ?」
だからこそ、そんな充実しているなんでもない日の中でのちょっとした刺激として感じるような、気になっている奴いた。
窓際一番後ろ。
俺の隣の席に座る不良ちゃんこと名前を――
そのスラっとした体型と大きな胸は女子高生らしからぬもので、誰が見ても美しいと思ってしまうそんな美少女。
しかし、その眼つきや素行の悪さが目立ち、美少女よりも不良のイメージが強かった。
「分かりません」
現在、数学Ⅱの時間。
複素数の計算問題について先生にあてられてからというもの、彼女は「分からない」の一点張りだった。
誇ることでもないであろう言葉をさも当然かのように述べ、堂々と突き放す。
その行動自体はいつもの柊木そのままではあったが、それは例え相手が先生であっても変わらない。
「お前なぁ……その態度もいい加減にしないと進級できないぞ」
「……はいっ」
先生の脅しには反応せず、ただぶっきらぼうに呟くだけ。
その調子でどうやって一年生から二年生になったのかと問われれば、不思議なことに追試をクリアしてきたから。
どうせなら最初から本気出して勉強すればいいのにとさえ思ってしまう。
しかし、柊木には柊木なりのペースがあるようでブレなかった。
でも、俺からしてみればそのブレない姿はちょっとだけかっこよく映った。
「あ、先生。柊木教科書忘れてるだけみたいなんで、代わりに俺が解きますよ」
「え? んまぁ、東谷が言うなら仕方ないかぁ……それじゃあ前に来て解いてみろ」
「はいっ」
そんな柊木を守りたい――というわけではなかったがこの調子だとこの先生の追及は止まらない気がして、俺は手を挙げて嘘をつく。
席を立ちあがり、黒板まで行こうとするところで彼女からは睨みつけるような視線を感じ、苦笑いがこぼれた。
「(余計なことするなよ……バカ)」
授業が終わると、俺のお隣さんは何も言わず席を立つ。
その後姿を軽く追いかけると彼女と目が合い、睨みだけが返事のように返ってくる。
「おい、
すると、前の方の席から一人の男が声をかけてきた。
「ん、
こげ茶色のやや明るめで長めな髪の毛に、俺よりも少しだけガシッとした体つき。見た目からしてチャラ男。
こいつの名前は
高校一年生の頃に初めてできた友達でもあり、今となっては親友とも言える男友達だ。
「いやどうかしたも何も、夏生は懲りないよなほんと」
「え、何がだよ」
「ほら、柊木だよ柊木」
「ん、あぁ。柊木か」
「あぁってなぁ。だいたい夏生くらいじゃないのか、柊木のこと気にかけてるの」
「別に気にかけてるわけじゃないぞ。困ってたら誰でも助けるし、それに宿題集めたりするときは仕方ないじゃん」
「みんな結構怯えて目も合わせられないのに……」
「まぁあの眼つきの悪さは確かに怖いけどな」
俺自身、最初から今みたいに普通にできていたわけではない。
徐々に話しかけて、慣れて、本人にも認知されて、挙句昨日の屋上での出来事があったからこそだ。
しっかり話せば柊木は悪い奴じゃないことは分かったくらいだ。
あの眼つきの悪さは絶対に直すべきだと思うけど。
「同意できてもしっかり話せてるのはすげえよ。俺なんて門前払いだったし」
そんなことをやれやれと言ってくる五月を見て、何様がだと思わず口に出した。
「だいたい、五月は狙いが違うだろ他の奴と」
「え、そうかなぁ?」
「自覚しろ。この女たらしめ」
「そうかなぁ……ははっ」
ははっ。じゃねえ。
五月は見た目からしてチャラ男だが、中身は最もチャラ男を凝縮したような男だ。
何分イケメンで軽音部部長を務めているせいか後輩から言い寄られてはとっかえひっかえと付き合っては分かれてを繰り返しているほどだ。
そんな五月が美人を前にとる行動なんて一つだけ。
その結果、柊木は本気で怒ったらしく睨んだ後に蹴りを一発食らわせたらしい。
ただ、俺も五月の気持ちが分からないわけではない。
柊木は確かに眼つきが悪いがその性格を知らない他学年で有名になるほど、外見は整っているからだ。
かわいい、なんていうレベルではなく完全無欠の美少女だ。
愛想の悪さ、眼つきの悪ささえなければ確実に天下を取っているほどのレベルで、間違いない。
「んま、夏生も夏生で気をつけろよ」
「あぁ、お前もな。天音がいるんだから」
「
「おう」
そうして幼馴染の姿に逃げるように教室を後にする五月の後姿を目で追うと、丁度戻ってきた柊木が目の前を横切った。
そして同時に、目が合う。
「あ、柊木、お前今日は昼屋上に――」
せっかくだし聞いておこうと口に出すと同時に彼女がバタンっと音を立てて机の上に突っ伏した。
加えて、隣にいる俺にしか聞こえない小さな声で吐き捨てる。
「うるさい。黙れ」
「え、えぇ……」
眼つきも、愛想も、極めつけには扱いまで悪い姿は今日も健在だった。
<あとがき>
今日だけ15時にしました!
明日からは20時です!
どうですかね、面白いですかね?
コメント、☆評価、レビューも待ってます!
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