第3話 フルフェイスマスク着用の温泉
銭湯みたいな入口の引き扉を開けると、湯気に満ち満ちた空間が現れた。視界は悪い。
― これじゃあ、人の顔も体も(肝心の下半身も)見えないなあ。そもそも海が見えない。波の音はすぐ近くに聞こえるけれど。海辺の温泉って景色見える場所じゃないんか? 意味無いじゃん。
失望と安堵の入り混じった気持ちで、湯船を探して歩を進めると、首まで浸かっている人たちが、湯気の合間から数人漸く見えてきた。確かに皆、規則通り、フェイスマスクをしていた。でもそのマスクは僕が今つけている、口だけを覆う超小型サイズの、いわゆるアベノマスクでは無く、顔全体を覆っていた。確かに、これこそフェイスマスクと呼ぶにふさわしいのかもしれない。
そういえば貼り紙にon your headとあったっけ? しかし、単にマスクと言うよりは、フルフェイスマスク。いいや、いわゆる目だし帽に近い。銀行強盗が愛用しているあれだ。それよりももっと目の孔が小さい。確かにこれなら、飛沫はかなり防げそうだ。暑そうだけど。でも灼熱の国の場合は、頭を布で覆っている場合もよく見るから、逆に快適なのかもしれない。しかし、僕的には不気味かつ、怖い。
でも逆に彼らは僕の超小型マスクを見て、超ビキニのような違和感(非道徳観?)を感じているのかもしれない。実際、視線が冷たい感じがする。しかし、何せ顔の表情が見えないので、実際のところはわからない。
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