第24話 第一種危険物
翌朝、教室に入るまでチリの姿が見えず
また変な世界に飛ばされたのかと心配したが
「えーいなりっ」
とチリが入るなり声をかけてきてホッとする。
「もう調べといたっ」
チリはバラバラと俺の机の上に鉛筆やら、銀紙に包まれたガムやら、学生証やら置いてきた。どうやら全てファイ子の私物らしい。
「朝早く来て、部室と教室探索したんだよっっ」
ニコニコしたチリを見た瞬間、頭の中で
「はああああああ……」
脱力したファイ子のため息がした。チリに伝えると、反応があったことが嬉しかったようで
「この中に、何かエネさんを呼び出せるヒントがないか、反応をみてみよう」
二人で暫く弄ったりしてみるが、全て何の変哲もないものだった。ファイ子の反応もなくなった。
その後、普通に授業を受けて、昼飯時になり屋上でチリと焼きそばパンを食べているとき、ふと思い立って、爺ちゃんがお守りでくれた、例のグリップをポケットから出した。チリが
「振ってみたら?」
パンを飲み込むと、立ち上がって
グリップを両手持ちして、空想の刀身が思いっきり空を斬るように斜めに振ってみた。何も起きずに苦笑いしてベンチに戻る。
チリと並んで座って
「まあ、こんなもんだよな」
恥ずかし過ぎる。
「えいなり、ねえ、もう探すのやめない?私たちじゃ手に負えない感じがする……」
早くも弱気になったチリにうなずきそうになったその瞬間だった。階下から繋がる扉が荒々しく開いて、制服姿のエネが血相を変えて駆け込んできた。
「そ、その剣は何ですかっ!?」
焦りながらベンチまで駆け寄ってきたので
俺はポケットからグリップだけのそれを取り出して、エネに渡そうとするが全力で今度は距離を置かれた。
「あ、あの、それ!我々の基準で第一種危険物です!さっきこの場所に重なった3.5次元が崩落しました!」
俺とチリは口を開けたままポカンとしていた。
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