拝む

ぱんつ07

拝む満足

あっ!

あそこに白い棒を持ったクラスメイトが歩いてるよ!

白杖って言うんだっけ?

ま、僕は使わないものだから名前なんてどうでもいいけど!

ねぇねぇ!

声は聞こえてるんだよね!

何で目の前真っ暗で夢も希望もないのに生きてるの?

誰かに支えてもらわないと生きていけない身体なのに生きたい理由ってあるの?

何も見えてないんでしょ?

見えないのに必死に生きてて、馬鹿すぎて笑っちゃうよ!

あはは!

変なクラスメイトだなぁ!

見えなくても『演奏家』になりたいって、何も分かっていないなぁ。

テレビの影響受けすぎなんじゃないの?

必死に足掻いているのって、無駄じゃない?

大人しくママにヨシヨシされるか捨てられたらいいんだよ!


あれ?

あっちには耳に何かつけてる人がいるよ!

補聴器だっけ?

なんかイヤホンつけてるみたい、いいなぁ。

ボクもイヤホンつけて授業受けたいな、好きな音楽聞いて授業受けたいな。

ねぇねぇ。

聞こえてるんだよね?

授業受けてるのにイヤホンつけちゃダメなんだよ!

イヤホンじゃない?

聞こえないからつけてるって?

馬鹿だなぁ、ボクの質問に答えている時点で聞こえてるんじゃん!

聞こえるならイヤホン要らないよね?

要らないよね!

そうやって聞こえませんってアピールしてれば優しくされるって思ってるの?

大人になったらそういうのも通用しないんだよ!

手話があるから通じる?

ちょっと!

なんでみんなが手話わかる前提で話してるの!?

聞こえないのがおかしいのに何で手話が世間一般で通ると思ったの?

先生に聞いてみたら?

全部通じなくて話聞かなくなるよ?

まったく!

通じ合えない、分かり合えないのに必死に伝えようとしててかわいそうだね!

しかも声出せるのに変なイントネーションで聞き取りづらいし、ほんっとにどうしようもないね!


ってか、ボクの隣の席の子は声出したことないんだっけなぁ。

緘黙症って言ってた気がしたけど、それってただの人見知りなだけだよね?

この子も仕事でおどおどして怒られてクビになっちゃうんだろうなぁ。

仕事で喋らないとか、仕事する気ないのと同じじゃん!

それなのに今から勉強していい仕事探そうとかしてるの、必死すぎて逆に怖くなってきたよ!

ママから聞いたけど、女なら穴さえあれば稼げるって聞いたよ!

どうかな?

喋らなくても稼げる仕事見つかってよかったね!

え、なになに、字汚いなぁ。

そういうのは好きな人とじゃないとダメ?

何言ってんの?

誰が君みたいなまともに会話する気のない人と結婚してくれると思ってんの?

馬鹿だねぇ、ひどいなぁ。

ボクは君の将来の為に仕事を勧めただけなのに、ひどいなぁ。

ボク、静かな子好きだけど、君みたいなまともじゃないのは好きじゃない!


うっ!

何この匂い…くっさ!

うわぁ、あの子から臭うんだけど…。

ちょっと!

ゴミの匂いきつすぎるって!

なんで洗濯しないの!

え?

してるの?

これで!?

嘘つくなよ!

ゴミの匂いしかしないよ!?

みんなもそう思うよね!?

え、なに、鼻が悪くてわからなかった?

いやいやいや!

レベルを超えてるんだって!

鼻悪くても気付けるレベルなんだよ!?

もう歩くゴミじゃん!

怖い怖い!!

化け物の赤ちゃんになりかけてるっているか、顔も匂いも化け物に近づいてるからもう実質化け物の赤ちゃんだねぇ…。

こんな悪臭野郎がクラスにいるだけで不快だよ、ちゃんと洗濯しないとダメだよ!


ダメだなぁ!

ボクのクラスメイトはこんなのばっかり!

ボクはここで一年間こいつらと一緒に過ごすなんて考えたくない!

はぁ、ボクの学校生活は終わったなぁ。

でもこんな奴らの中でボクが一番すばらしいってことをみんなにわかってもらえるんじゃないかな!

こんな奴らよりもっともっと勉強して頭も運動神経も良くなって、たくさん褒められるように頑張るぞ!

みんなみたいな変な人にならなくて良かった!

ママ!

ありがとう!


















「特別支援学級になってから、うちの子はどうでしょうか。」

「元気ではあります。ただ、こちらも注意をしておりますが…あまりにも小学生にしては相応しくない言葉の数を他の子に投げているんです。大変失礼ですが、お母さまの教育上、子供の教育に悪影響を及ぼす動画や本など、前回の面談からお聞きしていますが、その…見せていませんよね?」

「ええ、最近はテレビも早く消して寝るように促していますし、旦那もそういった動画や漫画などは見ない人なので…一緒に寝てあげてます。」

「そうですか。前回の面談から言葉遣いに気をつけたそうで、お父さまもそこはご協力して頂いている様子ですかね。」

「はい。旦那は特に気にしていました。」

「でも、気を付けているのに悪化してしまうということは、きっと図書室の本や友達の影響が強いかもしれませんね。私の方でも現状変わらず、言葉遣いに気を付けて接していきます。」

「はい、よろしくお願いします。」


「ママ!」

「おまたせ。もう帰るから、ランドセル持って。」

「うん!ねぇママ!帰りにアイス食べたい!」

「ええ、ママもアイス食べたかったわ。アイス、何食べよっか。」

「ソフトクリーム!」

「じゃあ家の近くの駄菓子屋でもいいかしら。」

「やった!駄菓子屋の『ママ』…とってもいい人で好きなんだ!」

「あら、駄菓子屋のおばちゃん好きなのね。」

「うん!大好き!色々教えてくれるし、役に立つこともっと教えてくれるし!ボク、そんな人になりたいな!」

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