逃げろ!覆面をした強い先輩女子に、トンネルの向こうでパンを焼かせられそうです!
冒険者たちのぽかぽか酒場
第1話 フランスパンは、強かった!フランス推しで、クロワッサン推しだ!
パンは、剣よりも強し。
フランスパンは、剣というよりもこん棒に見える。
「こんがりと焼けたニュースを、お伝えいたします。フランス人がゆうかいされ、クロワッ山の奥地につれさられているようです。日本風の、フランス推しでしょうか?」
変わった、ネットニュースだ。
フランスといえば、フランス人男性と結婚したという、高校時代の先輩が思い出される。
フランス推し。
しっかりとしてきびしく、強い女性。
世界ランクトップクラスのフランス人柔道家も、倒してしまいそうなほど。
フランス推し。
「フランスと、縁がありますねー」
先輩を、笑ってしまったことがある。
天罰が当たらないかと、ひやひやものだ。
男女数人の友だちグループの間でも、ネットニュースのクロワッ山話が盛り上がった。
その山は、小学生時代などに良くいった、皆の遊び場だったしね。
「そういえば、あの山…。変な場所が、あったなあ」
「あった」
「あやしい」
その通り。
たしかに、クロワッ山のふもとには、放置されて荒れた闇の覆面トンネルが伸びていた。
「明日、皆で、そこにいってみないか?事件につながる何かが、見つかるかもしれない」
「面白いね」
「ミニ同窓会だ」
「いいね」
翌日、男女数人がクロワッ山のふもとに集まった。
「良し、いこうか」
注意深く、トンネルの中を進む。
と、光が強くなってきた。
「トンネルを出るぞ!」
「やった」
皆の目の前には、えんとつの伸びる、本格的なパン工房が建っていた。
…うわ。
「クロワッサンを、焼きなさい!ほら、あなたも!」
覆面プロレスラーのような女性が、何人ものフランス人を働かせているようだ。
「クロワッサン?」
「クロワッ山で、クロワッサン?」
「フランスのパンだ」
「映えそう」
言いあっていると、覆面が、フランスパンを振りかざして追ってきた。
「気付かれた?」
「あの武器は、何?」
「こん棒?」
「フランスパンだろ」
「逃げろ!」
「あの先輩なのか?」
「剣とか、ないの?」
「ここは、異世界じゃない!」
「いや。ある意味、異世界」
逃げろー!
「本日のこんがりニュースを、お伝えいたします。日本人の男女数名が、フランス推し返しでゆうかいされ…」
たぶん、どこかでフランスパンを焼かされているよ。
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